【音楽ジャンル】R&B(リズムアンドブルース)とは?どんな音楽?【アフロキューバンの要素】
R&Bにはどんな特徴があるの?
このような疑問にお答えする内容です。
今回はPart2として、R&Bと非常に関係が深い「アフロキューバン」のリズムについて解説していきます。
ポピュラー音楽の一つとして当たり前になったR&Bですが、その歴史や音楽的な特徴を言葉で説明できる人はなかなかいないのではないでしょうか?
歴史や特徴を知ることで音楽制作にも活きていきますので、この機会にぜひ理解を深めてください!
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アフロキューバンのリズムとR&B
アフリカ系アメリカ人の音楽は、「キューバン・コントラダンサ」が人気となった1800年代に、アフロキューバンリズムのモチーフを取り入れ始めます。
キューバン・コントラダンサは、キューバ以外では「ハバネラ(Habanera)」という名前で知られています。
厳密にいうと、ハバネラは「トレシーロ(Tresillo)」とバックビートを組み合わせたリズムとも考えられます。
(トレシーロについては後述)
画像:Wikipediaより
トレシーロ(Tresillo)とは?
トレシーロはハバネラと同じくラテンアメリカの音楽でよく使われるリズムですが、ハバネラよりもベーシックなリズム形態なのが特徴です。
※「トレシロ」とも呼ばれます
ポップスのヒット曲でもよく使われています。
ケークウォークやラグタイム、プロトジャズが発展した25年以上もの間、キューバ系音楽のハバネラはアフリカ系アメリカ人のポピュラーミュージックとして常に存在感を発揮していました。
ジャズのパイオニアであるJelly Roll Mortonは、トレシーロやハバネラのリズムを「ジャズの必須要素」としてとらえています。
アフリカ系アメリカ人のフォークミュージックには、トレシーロっぽいリズムが使われることもあります。
たとえば、リングシャウト(下記動画参照)におけるハンドクラップやストンプ(足踏み)、市民戦争後のドラムやファイフミュージック(fife、軍隊における横笛やドラムを使った音楽)
ニューオリンズ・セカンドライン・ミュージック(パレード音楽)などに見られます。
1940年にBob Zurkeがリリースした「Rhumboogie」は、ブギウギにトレシーロのベースラインを合わせた楽曲で、歌詞はキューバのリズムに関する内容でした。
ニューオリンズブルースはミシシッピ川河口の都市を起源としていますが、こういったアフロ・カリビアンのリズムを取り入れているため、ミシシッピのデルタブルースとはまた違ったサウンドになっています。
1940年後半になると、R&Bが最初に形成されたころ、ニューオリンズのミュージシャンたちはキューバの影響を非常によく受けていました。
R&Bで最初にトレシーロを取り入れたのは、ニューオリンズです。
ニューオリンズのプロデューサー・バンドリーダーのDave Bartholomewは、1949年の楽曲「Country Boy」で、このリズムを採用しています。
Fats Dominoの楽曲「Blue Monday」はBartholomewによって作曲され、こちらは古典的なR&Bにトレシーロを使った例です。
Bartholomewが1949年に発表した「Oh Cubanas」は、アフリカ系アメリカの音楽とアフロキューバンをブレンドさせた楽曲です。
彼の楽曲「Misery」ではニューオリンズのピアニストProfessor Longhairがピアノを担当していますが、左手ではハバネラっぽいフレーズで、3連符を巧みに使っているのが特徴です。
画像:ハバネラのリズム(下段)(https://en.wikipedia.org/wiki/Tresillo_(rhythm))
1940年になると、ブルースに2セル構成(2小節でひとまとまりのリズムパターン)が取り入れられます。
前述のBartholomewやLonghairなどのニューオリンズのアーティストは、クラーベ(Clave)のパターンと同様、この2セル構成をキューバ楽器に使い始めます。
これらは、「Carnival Day」や「Mardi Gras In New Orleans」などの楽曲で聞くことができます。
Longhairの楽曲「Longhair Blues Rhumba」では、ストレートなブルースの要素とクラーベのリズムが重ねられています。
Longhairのスタイルは「ルンバ・ブギ」として知られ、前述の彼の楽曲「Mardi Gras In New Orleans」では、ピアニストが2-3クラーベのオンビート・オフビートのパターンを用いています。
クラーベのリズム「2-3」と「3-2」
画像: wikipediaより
この頃はまだ実験段階だったので変な組み合わせだと思われることもありましたが、この頃からアフロキューバンの要素はニューオリンズの音楽に統合されていくようになります。
この時期、ニューオリンズのR&Bでは、「シンコペーションしているけどストレートなキューバ音楽」が定着しました。
(「ストレート」とは対照的に、スイングしているものもありました)
1951年にJohnny OtisがリリースしたR&Bマンボ「Mambo Boogie」では、コンガ、マラカス、クラベス、サックスのグァヘオ(Guajeos)をブルースに取り入れて使われました。
グァヘオ(Guajeos)とは?
グァヘオは、キューバ音楽において繰り返し使われるメロディーパターンのことです。
シンコペーションのリズムに沿って、コードをアルペジオを使って演奏するのが特徴です。
トレス(Tres)ピアノ、バイオリン系楽器やサックスで演奏されることが多く、今ではサルサでよく使われます。
ピアノのグァヘオは、北アメリカでは「Montuno」、現代のキューバダンスミュージックであるTimbaにおいては「Tumbao」という名前で知られています。
トレス(Tres)とは?
トレス(Tres)はキューバ音楽で使われるギターのような弦楽器です。
「トレス」はスペイン語で「3」を意味し、弦は複弦で3本、全部で6本の弦から成り立っています。
画像:https://i.pinimg.com/564x/9c/85/c1/9c85c1e2b10def862949177ddcc17630.jpg
他ジャンルとの融合
1954年にリリースされたIke Turnerによる楽曲「Cubano Jump」ではエレキギターが使われており、2-3クラベスのパターンと、マンボの要素を使った楽曲になっています。
R&Bにおけるクラベスの使用は、バックビート(2・4拍目)の優位性の高まりやアメリカにおけるキューバ音楽の人気と共に起きました。
1955年のBo Diddleyによる楽曲「Bo Diddley beat」は、おそらく3-2クラーベのパターンとロックンロール・R&Bが融合した最初の例でしょう。
1958年にリリースされたJohnny Otisの楽曲「Willie and the Hand Jive」もまた、3-2クラーベのパターンとR&Bを融合させた成功例といえます。
Otisはこの楽曲で、キューバ楽器であるクラーベとマラカスを使っています。
アフロキューバンが与えたR&Bへの影響
アフロキューバンは、アフリカ系アメリカ音楽がクラーベなどの「2セル構成」や、コンガ、ボンゴ、マラカス、クラーベなどのキューバ楽器を使うことで「再アフリカ化」するためのパイプとなる音楽でした。
民族音楽学者のJohn Storm Robertsは、「R&Bはキューバ音楽の要素を大衆ポピュラーミュージックへと復活させた足がかりとなった」と話しています。
Atlantic Records社のプロデューサーAhmet Ertegunは、「アフロキューバンのリズムは、R&Bに彩りと刺激を与えた」と話しています。
↓つづき「Part3」はこちら!
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