【DTM】マスタリングエンジニアって何をする仕事?
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今回は、Sound On Soundが解説する「マスタリングエンジニアは実際に何をしているのか?」をまとめました。
「マスタリングエンジニア」という言葉は聞いたことがあるものの、
「マスタリングエンジニアにマスタリングをお願いするのがなぜ大切なのか、わからない…」
という方には必見の内容です!
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マスタリングエンジニアは何をする仕事?
マスタリングエンジニアの仕事を簡単にまとめると、これら5つが挙げられます。
・1曲単位、1作品単位で全体像を整える
・プロ仕様の環境で音源をチェックする
・作り手が気づかなかった問題に対処する「セーフティーネット」的な役割
・AIやプリセットにはできない「その曲に本当に必要な処理」を判断する
それではここからは、マスタリングエンジニアの仕事についてじっくり解説していきます。
昔のマスタリングエンジニアは何をしていた?
まずは「マスタリングエンジニア」という仕事の歴史をさかのぼってみましょう。
一昔前はレコード(Vinyl)やカセットテープの時代だったので、まずは2インチテープに音を録音し、その内容を1/4インチカートリッジや1/2インチ・カートリッジにミックスし、最終的にはレコードやカセット、CDに収録してリリースしていました。
この時代のマスタリングエンジニアの主な仕事は、レコーディングしたデータをリリース用のフォーマットに変換することでした。
前述のように、1つのテープにレコーディングされたデータを別の種類のテープや再生媒体に移行しながら制作する必要があったため、専門知識と専門技術、専門の機材が必要だったのです。
そのため、マスタリングの知識・技術・機材によってサウンドが大きく変わり、マスタリングが物を言う時代となりました。
たくさんの「処理」をしているマスタリングエンジニア
この時代のマスタリングエンジニアは、たくさんの処理(Processing)をしていました。
低音域が多すぎたり、ボーカルの子音が強すぎたり、位相の問題があったりすると、レコードに焼いて正しく再生されるのが難しくなるからです。
そのため、レコードなどの再生媒体にデータを焼く前に、マスタリングエンジニアがそのような問題を処理し、整えていました。
マスタリングエンジニアのスタジオにコンプレッサーやEQなどの機材やたくさんあったのは、このためです。
これらの事情から、一昔前のマスタリングエンジニアの主な仕事は「今よりももっとキレイなサウンドにする」というよりも、「いかにクオリティを下げずに別のテープ・再生媒体に移行できるか」というものでした。
今ではパソコンの中で作ったデータをCDなどにサッと移行して販売・配信することができますが、昔はそうできなかったのです。
レコードの時代が終わっても「マスタリングエンジニア」は活躍する
21世紀(2000年代)に入ると、パソコンを使って全てデジタルデータとして扱える時代になりました。
音楽を聞く手段も、レコードやCDコンポからパソコン・携帯電話に変化していきます。
リスナーも音楽を手軽に再生できるようになり、高価な機材や音楽を聞くための特別な環境も必要なくなりました。
しかし、それでもまだマスタリングエンジニアというプロフェッショナルを必要としています。
それは一体なぜなのでしょうか?
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なぜマスタリングエンジニアは必要なのか?3つの理由
レコードの時代が終わってもマスタリングエンジニアが必要な理由は、主に3つあります。
2.ミキシングの「翻訳」を手伝えるから
3.一貫した1つのサウンドにまとめることができるから
理由1.リリースの準備が必要だから
現代には、さまざまな「再生環境」「再生媒体」があります。
例えばYouTubeやApple Music、Spotifyなどのストリーミングサービスで音楽を聞く人もいれば、CDで音楽を聞く人もいます。
また根強いレコードファンもおり、レコード盤を買って楽しむ人も数多くいます。
すると、それぞれの再生環境に適したフォーマットを用意する必要があります。
例えばストリーミングサービスでは、そのサービスに適したフォーマットに音楽データが変換されるため、その際に「インターサンプルピーク」という音に歪みが出てしまう問題があります。
このインターサンプルピークを見越したマスタリングを、マスタリングエンジニアは行っています。
もちろん、自分で勉強しようと思えばできることでもありますが、やはり最高の作品に仕上げるには、プロの手を借りた方がよい結果になるでしょう。
理由2.ミキシングの「翻訳」を手伝えるから
今では、自宅で音楽制作をしている人も多いでしょう。
しかし自宅では音楽を視聴するモニター環境が適切でなく、ヘッドホンでしか作業できなかったり、吸音や反響に対処できていなかったりなど、やはりプロ用の音楽スタジオに劣ってしまうことがあります。
このような環境でミキシングをすると、仮にその場所(自宅)ではキレイに聞こえても、別の場所(リスナーの再生環境)ではバランス悪く聞こえてしまうことがあります。
例えば、自宅で使っている小さなスピーカーでは低音域がきちんとモニタリングできなくても、マスタリングエンジニアのスタジオではしっかり確認できるため、余分な低音域をキレイに整えてくれます。
理由3.一貫した1つのサウンドにまとめることができるから
アルバムなど複数の楽曲を1枚の作品にまとめているとき、よくあるのが「1つ1つの楽曲はいいが、全体で聞くとまとまりがなく聞こえる」という問題です。
1つ1つの楽曲を完成度高く作れても、1枚のアルバムとして聞いたときにバラバラに聞こえてしまうと、一貫性がないように思えてしまいます。
このような問題も、プロのマスタリングエンジニアは対処できます。
1曲目から2曲目をつなげて聞くとどう聞こえるのかなど、1つ1つをチェックし、適切な処理を行います。
マスタリングエンジニアは「セーフティーネット」
マスタリングエンジニアは、みなさんが作った音楽を最高の作品に仕上げるための「セーフティーネット」のような役割を持っています。
マスタリングエンジニアが作業を行うスタジオは非常によいモニター環境であるため、音のバランスや聞こえ方について客観的に判断・処理することができます。
またマスタリングエンジニアが第三者として、楽曲制作の一番最後の段階でチェックするため、みなさん(作り手)が自分一人では気づけなかった問題にも気づくことができます。
そして、各ストリーミングサービスや再生媒体におけるサウンドの傾向や問題についても知識があるため、どのような環境でもその曲のポテンシャルを最大限引き出せるようにマスタリングすることができます。
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マスタリングプラグインを使うのはどう?
マスタリングエンジニアを雇うお金がなくても、今ではさまざまなメーカーから「マスタリングプラグイン」が販売されています。
AIがマスタリングをしてくれるプラグインもあり、自分が作った曲を数秒聞かせるだけで自動的にマスタリングをしてくれる便利なツールもあります。
しかし、人間のマスタリングエンジニアが絶対に使わないようなマルチバンドコンプレッサー、サチュレーション、ステレオワイドイメージャーなどを使うマスタリングプラグインもあります。
さらに、人間のマスタリングエンジニアが絶対に行わないような極端な設定でEQを行ったりすることもあるため、自動マスタリングプラグインが必ず「いい」とは言えません。
もちろん「いい音」になるのであればマスタリングプラグインを使うのもよいですが、どちらかというとそれは「ミキシング」の段階だと考えて、本当のマスタリングはやはり人間のマスタリングエンジニアに依頼するのがよいでしょう。
本当にいいサウンドだと「マスタリングエンジニアは何もしない」
もしその曲のミキシングが素晴らしく、最初から本当に何もする必要がないようなサウンドであった場合、マスタリングエンジニアは何もしません。
「このままであることがベストだ」と判断するため、文字通り本当に何の手も加えません。
しかし自分でマスタリングツールを使ってしまうと、自動解析ツールのAIが勝手にいろいろな処理を加えてしまったり、プリセットが自分の曲には合わないような設定になってしまっていたりして、せっかくいいサウンドに余分な手が加えられてしまいます。
「そもそも手をつける必要があるのかどうか」についても、人間のマスタリングエンジニアは判断しているのです。
マスタリングエンジニアは何をする仕事?まとめ
以上が「マスタリングエンジニアの仕事」の解説でした。
・1曲単位、1作品単位で全体像を整える
・プロ仕様の環境で音源をチェックする
・作り手が気づかなかった問題に対処する「セーフティーネット」的な役割
・AIやプリセットにはできない「その曲に本当に必要な処理」を判断する
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