【音楽理論】アッパーストラクチャーとハーフホールディミニッシュスケールを使ったジャズコード進行の作り方

【音楽理論】アッパーストラクチャーとハーフホールディミニッシュスケールを使ったジャズコード進行の作り方

今回は、Jens Larsenが解説する「ディミニッシュスケールを使ったアッパーストラクチャートライアド-よく使えるドミナント7thコード-」をまとめました。

ハーフホールディミニッシュスケール(Half-Whole Diminished Scale)を使って、アッパーストラクチャートライアドを作る方法について解説します。

とても難しそうに聞こえるかもしれませんが、

・アッパーストラクチャー」とは何か?
・「ハーフホールディミニッシュスケール」とは何か?
・「ドミナント7thコード」とは何か?

など、基礎的な部分からじっくり解説しますので、初心者の方も安心してご覧ください。

Upper-structure Triads from the Diminished scale – Great Dom7th material

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はじめに:「ドミナント7thコード」「ハーフホールディミニッシュスケール」「アッパーストラクチャー」とは?

はじめに、ドミナント7thコードとディミニッシュスケールのおさらいをしましょう。

ドミナント7thコードとは?

ドミナント7thコードとは、「スケール上の5番目の音を使った7thコード」です。

例えばCメジャースケールのドミナンント7thコードは「G7」、Gメジャースケールのドミナント7thは「D」になります。

ドミナント7thコードは「トニックに行きたくなる=解決したくなる・終わりたくなる」という響きを持っていることが一般的です。

ハーフホールディミニッシュスケールとは?

ハーフホールディミニッシュスケール(Half-Whole Diminished Scale)とは、半音と全音を交互に配置したスケールのことです。

特にジャズの即興でよく使われます。

https://pwj-wordpress-content.s3.amazonaws.com/pda-media/pianowithjonny.com/wp-content/uploads/2022/04/C-Half-Whole-Diminished-Scale-1200×377.png

上の画像を見てみましょう。

Cハーフホールディミニッシュスケールは「C,Db,Eb,E,F,G,A,Bb」の8音でできていることがわかります。

そして、それぞれの音の感覚が、Half(半音)間隔、Whole(全音)間隔と、交互に並んでいることがわかります。

一般的によく使われるスケールは7音階であることが多いため、このスケールは「オクタトニックスケール(Octatonic Scale)」、日本語だと「八音音階」とも呼ばれます。

アッパーストラクチャーとは?

アッパーストラクチャーとは、2つのコードを組み合わせて1つのコード(響き)に聞かせることができるテクニックです。

例えばピアノなら、右手と左手で異なるコードを弾いて、一つのコードに聞かせることができます。

左手でC7コード(C,E,G,Bb)、右手でDメジャーコード(D,F#,A)を弾くと、C7(#11)コードのように聞こえます。

ジャズでよく使われるテクニックですが、特にトライトーン(不協和音になる音)を使うと「ドミナント7thコード」のような響きにすることができるのが特徴です。
※前述のC7+Dの例では、CとF#がトライトーンになりますが、この不協和音のおかげでドミナント7thコードとして良い響きを得られます

言い換えると、トニックの前にアッパーストラクチャーを使ったコードを取り入れることで、一味違った「ドミナント7thコード」を取り入れることができる&一味違った解決感を作ることができます。

アッパーストラクチャーとハーフホールディミニッシュスケールを使ったジャズコード進行の作り方

それでは、これらを踏まえて「アッパーストラクチャーとハーフホールディミニッシュスケールを使ったコード進行の作り方」を解説していきます。

今回は、Fメジャーキーの曲で、ハーフホールディミニッシュスケールを使いながらどのようにドミナント7thコードを作っていくかをご紹介します。

これらはあくまで一例で、コードや音、ボイシングの組み合わせは無限大にありますので、ぜひご自身でも応用しながら使ってみてください。

Fメジャーキーの場合、ドミナント7th=Vのコードは「C7(C,E,G,Bb)」になります。

そのため、トニック(Fメジャーコード)に解決するときは「C7 – F」のようなコード進行になります。

ここで、ハーフホールディミニッシュスケールを使ってみましょう。

https://www.youtube.com/watch?v=Cp4n6yADouY

このとき、まずはじめに「ドミナント7thコードのルート音を使ったハーフホールディミニッシュスケール」を考えてみましょう。

今回の場合、ドミナント7thコードは「C7」ですので、「Cハーフホールディミニッシュスケール」となります。

C,Db,Eb,E,Gb(F#),G,A,Bb

次に、ここからアッパーストラクチャーを作るため、「C7に乗せるトライアド」を作っていきます。

https://www.youtube.com/watch?v=Cp4n6yADouY

今回は、Aメジャーコード(A,C#,E)、F#/Gbメジャーコード(F#,Bb,Db)、Ebメジャーコード(Eb,G,Bb)を使いたいと思います。

C7コードはとてもシンプルなので、味気ないと感じる時があります。

そのため、彩りを加えるためにこれらのコードを足していきます。

アッパーストラクチャーコードの例1:C7+Aメジャーコード

はじめにご紹介するのは、「C7+Aメジャーコード」の例です。

C7:C,E,G,Bb
A:A,C#,E

これらを重ねると、以下のように考えることができます。

https://www.youtube.com/watch?v=Cp4n6yADouY
Db = C7のb9th
E = C7の3rd
A = C7の13th

つまりC7+A = C7(13,b9)のように聞かせることができます。

https://www.youtube.com/watch?v=Cp4n6yADouY

このコードは、このようなサウンドになります↓

Upper-structure Triads from the Diminished scale – Great Dom7th material

アッパーストラクチャーを使った即興・ソロの例①

このアッパーストラクチャーを作ったあとは、このコードを使って即興やソロを弾いてみましょう。

例えばこのように、コードの構成音をバラして弾いてみることもできます。

Upper-structure Triads from the Diminished scale – Great Dom7th material

アッパーストラクチャーのおかげで、シンプルにC7を弾くよりも、よりジャジーな響きを使ったドミナント7thコードを作ることができます。

そのため、最後にトニック=Fmaj7を弾いたときも、しっかり解決感が出せます。

https://www.youtube.com/watch?v=Cp4n6yADouY

それでは、このソロも細かく見てみましょう。

https://www.youtube.com/watch?v=Cp4n6yADouY

最初の4音は「Db,E,A,Db」で、Aメジャーコードの第1転回形です。

次の4音は「Db,Bb,A,G」で、スケールに沿って1音ずつ下がっています。

https://www.youtube.com/watch?v=Cp4n6yADouY

次の4音は「A,Bb,E,A」でアルペジオになっていますが、これは「C7+Aメジャーコード」のうち、主にC7(13)の上の方にある音をベースとしています(E,A,Bb)。

そして最後の4音は、「Db,A,E,Db」と、Aメジャーコードの第1転回形をそのまま降りてきています。

https://www.youtube.com/watch?v=Cp4n6yADouY

ここでポイントなのは、アルペジオの最後の音「Db」が、フレーズの最後の音=Cと半音違いであるという点です。

Fmaj7コードはトニックで、解決感が生まれる場所です。

ここに、さらにメロディーでも半音移動をすることによって、さらに解決感を出すことができます。

もちろん、このような別のパターンを作ることも可能です。

https://www.youtube.com/watch?v=Cp4n6yADouY
Upper-structure Triads from the Diminished scale – Great Dom7th material

アッパーストラクチャーコードの例2:C7+Gbメジャーコード

はじめにご紹介するのは、「C7+Gbメジャーコード」の例です。

C7:C,E,G,Bb
Gb:Fb,Bb,Db

これらを重ねると、以下のように考えることができます。

https://www.youtube.com/watch?v=Cp4n6yADouY
Db = C7のb9th
Gb = C7のb5
Bb = C7のb7

つまりC7+Gb = C7(b9,b5)のように聞かせることができます。

https://www.youtube.com/watch?v=Cp4n6yADouY

このコードは、このようなサウンドになります↓

Upper-structure Triads from the Diminished scale – Great Dom7th material

アッパーストラクチャーを使った即興・ソロの例②

それでは先ほどと同様に、このアッパーストラクチャーを作ったあとは、このコードを使って即興やソロを弾いてみましょう。

Upper-structure Triads from the Diminished scale – Great Dom7th material
https://www.youtube.com/watch?v=Cp4n6yADouY

こちらでも、コードをベースにしてアルペジオにしながら演奏してみます。

https://www.youtube.com/watch?v=Cp4n6yADouY

最初の4音は「Gb,Bb,Db,Gb」で、Gbメジャーコードを単純にバラバラにして弾いています。

次の3音は「A,E,Db」で、Aメジャーコードを弾きます。

https://www.youtube.com/watch?v=Cp4n6yADouY

次は小節線の少し前から始まり、「Bb,Db,Gb,Bb」と、Gbメジャーコードの第1転回形で弾きます。

次の3音は「E,Db,A」で、Aメジャーコードを降りるようにしています。

https://www.youtube.com/watch?v=Cp4n6yADouY

最後は「Bb,Db」の2音を付け足し、最後の小節のトニックにつながりやすいよう、最後の音はDbにしています。

今回はC7+Gbメジャーコードのアッパーストラクチャーを使いましたが、例①でもご紹介した通り、C7+Aメジャーコードも合いますので、途中でAメジャーコードをベースにしたアルペジオも入れています。

このように、そのときに使っているコードに縛られる必要はありませんので、ぜひいろいろな音やコードを取り入れてみてください。

アッパーストラクチャーコードの例3:C7+Ebメジャーコード

最後に紹介するのは、「C7+Ebメジャーコード」の例です。

C7:C,E,G,Bb
Eb:Eb,G,Bb

これらを重ねると、以下のように考えることができます。

https://www.youtube.com/watch?v=Cp4n6yADouY
Bb = C7のb7
Eb = C7の#9
G = C7の5

つまりC7+Gb = C7(#9)のように聞かせることができます。

https://www.youtube.com/watch?v=Cp4n6yADouY

このコードは、このようなサウンドになります↓

Upper-structure Triads from the Diminished scale – Great Dom7th material

アッパーストラクチャーを使った即興・ソロの例③

それでは、このコードを使った即興・ソロを弾いてみましょう。

Upper-structure Triads from the Diminished scale – Great Dom7th material
https://www.youtube.com/watch?v=Cp4n6yADouY
https://www.youtube.com/watch?v=Cp4n6yADouY

はじめは、ブルースのようなフレーズです。

「Eb→E」の部分のうち、Ebが「C7における3rdの音」のように聞こえ、この半音移動が良い味を出しています。

次の4音は「B,G,Eb」と、Eメジャーコードを降りるようなフレーズです。

https://www.youtube.com/watch?v=Cp4n6yADouY

次は小節線をまたぎながら、「A,E,Db」と、Aメジャーコードの第1転回形のようなフレーズです。

最後は「Db,A,E」と、Aメジャーコードの第1転回形です。

https://www.youtube.com/watch?v=Cp4n6yADouY

そして最後の音は、Fmaj7の9thの音であるGで終わっています。

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アッパーストラクチャーとハーフホールディミニッシュスケールを使ったコード進行の作り方まとめ

今回は、アッパーストラクチャーとハーフホールディミニッシュスケールを使ったコード進行、そしてこれを使ったフレーズの作り方をご紹介しました。

一見複雑そうに見える内容ですが、このように構造を分解して考えることで、即興やソロにも活かしやすくなります。

ぜひお試しください。

当サイトでは、他にもジャズやコード進行に関する記事を多数ご紹介していますので、ぜひこちらもご覧ください↓

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