【ジャズ音楽理論】アッパーストラクチャー(Upper Structure)とは?
- 2024.09.23
- 2024.09.01
- コード進行
今回は、JAZZ TUTORIALが解説する「ジャズピアノのためのアッパーストラクチャーコードボイシング」をまとめました。
ジャズでよく使われる「アッパーストラクチャー」とは一体何か、作曲や演奏ではどのように使っていけば良いのかをじっくり解説していきます。
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アッパーストラクチャー(Upper Structure)とは?
アッパーストラクチャーとは、「ドミナント7th」を弾く時に使われるコードボイシングの一種です。
より噛み砕いて言うと「右手と左手で異なる2つのコードを弾いていても、1つのコードに聞かせることができるテクニック」です。
…と言われてピンと来ない方もいると思いますので、順に説明していきます。
アッパーストラクチャーの例1:C7にDを足す
例えば、C7コード(C,E,G,Bb)をピアノで弾くとします。
このとき、まずC7コードの響きを得るため、左手でルート(C)、3rd(E)、7th(Bb)を弾きます。
(今回の例では、5th=Gの音を省いています)
そして右手ですが、アッパーストラクチャーではどんなメジャー/マイナートライアドを使ってもOK。
多くの場合は、メジャーコードを用いられることが多いです。
それでは試しに、2ndコードであるDメジャーコード(D,F#,A)を右手で弾いてみます。
左手でC7(C,E,Bb)、右手でD(D,F#,A)を弾いている状態です。
下から順に並べると、
となります。
こうすると、C7のコードに、9th(D)、#11th(F#)、13th(A)の音が加わった状態と同じになります。
右手と左手で異なる2つのコードを弾いているように思えますが、実は1つのコード「C7(9,#11,13)」に聞こえるのです。
アッパーストラクチャーの例2:C7にEmを足す
別のアッパーストラクチャーの例を見てみましょう。
まずは、先ほどの例1と同じように、左手でC7のコードを弾きます。
そして右手ではマイナー3rdのコードである「Ebメジャーコード(Eb,G,Bb)」を弾きます。
右手:Eb,G,Bb
両手を合わせると、
となり、C7に#9th(Eb)、5th(G)、マイナー7th(Bb)が重なっているように聞こえ、コードネームにすると「C7(#9)」になります。
アッパーストラクチャーの例3:C7にAを足す
次は、C7にAメジャーコードを足す例です。
これまでの例と同様にC7のコードを左手で弾き、今度は右手でAメジャーコードを弾きます。
右手:A,C#,E
両手を合わせると、
となり、C7に3rd(E)、13rh(A)、b9th(C#)が重なったように聞こえ、コードネームにすると「C7(b9,13)」のようになります。
応用編:アッパーストラクチャーの転回形
アッパーストラクチャーでは、転回形にして弾くこともできます。
「1,3,5」と弾いても良いですし、「3,5,1」「5,1,3」と弾いてもOK。
Dメジャーコードなら、「D,F#,A」「F#,A,D」「A,D,F#」のいずれで弾いても構いません。
この転回形を使うときのポイントは、トップノート(一番高い音)が変わることで、メロディーも変わるという点です。
例えば、C7コードにAメジャーコードを重ねるパターンを見てみましょう。
右手:A,C#,E
ここで、右手を転回形にして「C#,E,A」にしてみます。
すると、下から順に「C,E,Bb,C#,E,A」となり、トップノートがAになります。
これにより、Aがメロディーの音(一番聞こえやすい音)に変わります。
こちらは、ジャズの楽曲「Stompin At The Savoy」の最初の2小節を僕(解説者)がボイシングしたものです。
ピンク色になっている部分は、C7の上にAメジャーコードを転回形にして重ねています。
Aがトップノートになっているので、ここではAをメロディーにすることができています。
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応用編:切断アッパーストラクチャー(Sawn-Off Upper Structure)を使ってみよう
アッパーストラクチャーでは、トップノート(一番高い音)を「切断」することも可能です。
例えば、コードはC7でメロディーが#11(F#)の場合、右手でDメジャーコード(D,F#,A)を弾くとフィットします。
このとき、Dメジャーコードで一番上の音「A」を「切断(弾かない)」ことで、以下のようなコードにすることができます。
※この例では5thのGの音を抜いています
アッパーストラクチャーでは、メロディーとの兼ね合いを考えて、このようなボイシングにしてもOKです。
応用編:オクターブでダブリング
アッパーストラクチャーでは、右手で一番下の音をオクターブで弾くこともできます。
例えば右手でDメジャーコード(D,F#,A)を弾いているとき、3本の指で
と弾いてもOKです。
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よく使えるアッパーストラクチャー:借用和音を使う
僕(解説者)がお気に入りのアッパーストラクチャーは、「異なるメジャートライアドを使う」「転回形を使う」「トップノートを切断」「オクターブでダブリング」を組み合わせたパターンです。
上の画像を見てみましょう。
C7に、メジャー2nd=Dメジャーコードを重ねた例。
左から2番目(オレンジ)
C7に、マイナー3rd=Ebメジャーを重ねた例。
右から2番目(紫)
C7に、マイナー6th=Abメジャーを転回形で重ねた例。
一番右(ピンク)
C7に、メジャー6th==Aメジャーコードを転回形で重ねた例。
この中でも、おすすめのパターンがこちらの2つです。
V7(#11)のサウンドがあり、コード進行や楽曲の終わりに使うのがおすすめ
C7+Aメジャーコード
V7(b9)のサウンドが欲しい時におすすめ
アッパーストラクチャーを練習してみよう
最後に、これまで学んだことを踏まえてアッパーストラクチャーを練習する方法をご紹介します。
1.12個すべての「V7コード」で練習する
「V7コード」には、C7、Db7、D7、Eb7、E7、F7、Gb7、G7、Ab7、A7、Bb7、B7の全部で12種類あります。
そのため、まずはこれら12種類のコードを使ってアッパーストラクチャーを使う練習をしましょう。
言い換えると、「どのスケールでもV7を使ったアッパーストラクチャーを使えるようにする」のがポイントです。
このとき、「C7のコードにA,C#,Eを足す」などの「音名」を使って覚えるのではなく、「V7のコードにマイナー3rdを足す」「V7のコードにマイナー6thのコードを足す」など、ディグリーネームで覚えるようにしましょう。
2.アッパーストラクチャーを使った既存の曲を弾いてみる
次は、アッパーストラクチャーを使った既存の曲を弾いてみましょう。
どのスケールでも、「V7コード」であればアッパーストラクチャーを使っている可能性があります。
このときに、これらの項目をチェックしてみましょう。
・コードの構成音は何か?
・コードのトップノートは何か?
(#11th、5th、b13thなど、いろいろなパターンがあります)
・コードのトップノートのために、転回形がどのように使われているか?
以下、おすすめのジャズ曲を記載しますので、ぜひこれらの楽曲のアッパーストラクチャーに注目してみてください。
Misty
Cry Me A River
Girl From Ipanema
The Taxi Driver Theme
https://www.youtube.com/watch?v=WPxExnUYwZM
Invitation
Satin Doll
Stompin at the Savoy
以上で解説は終了です。
当サイトでは他にもアッパーストラクチャーやコード進行のバリエーションを増やす方法をご紹介していますので、ぜひこちらもご覧ください↓
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