【DTM】1176コンプレッサーはなぜおすすめ?魅力と使い方を解説!
- 2024.11.21
- 2024.11.06
- ソフト・プラグイン・機材
今回はChris Selimが解説する「1176コンプレッサーの使い方」をまとめました。
「有名なコンプレッサー」としてよく名前が挙げられる製品の1つが「1176コンプレッサー」です。
この記事では、なぜこのコンプレッサーは世界中のDTMerに愛されているのか、その魅力と使い方を解説していきます。
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1176コンプレッサーとは?
1176コンプレッサーとは、UREI社が開発し、1967年に発売されてから現在まで多くのミュージシャンに愛されてきたFETタイプのコンプレッサーです。
多くのプロ用音楽スタジオでも使われていたため、世界中の数々の名曲でこの1176コンプレッサーが使われてきました。
「伝説のコンプレッサー」と言われるほどの人気であり、実機(ハードウェア)だけでなく、この1176コンプレッサーをエミュレートしたプラグインもたくさん販売されています。
※おすすめの1176系プラグインはこの記事の最後にご紹介します
例えば、ドラムに使うとこのようなサウンドになります↓(0:03~0:15)
1176コンプレッサーの魅力5つ
1176コンプレッサーの魅力は、大きく分けて5つあります。
2.アタックがとても速い
3.RATIOを変えるだけでリミッティングもできる
4.強いコンプレッションがかかってもナチュラル
5.さまざまなバージョンの使い分けができる
それではここからは、1176コンプレッサーの特徴や使い方について詳しく解説していきます。
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FETタイプのコンプレッサーの特徴とは?
1176コンプレッサーをはじめ、FETタイプのコンプレッサーは「速く動く」「強く動く」というのが特徴です。
そのため、「とてもアグレッシブで」「カリっとした」「パンチのある」サウンドにすることができます。
具体的な数字を挙げると、1176コンプレッサーのアタックは20~800μs(マイクロ秒)です。
他のコンプレッサーではミリ秒(ms)単位であることが多いので、マイクロ秒単位で動作するのは非常に速いと言えます。
※1マイクロ秒= 0.000001秒
リリースは50~1100ms(ミリ秒)で、こちらは他のコンプレッサーと大きな差はありません。
1176コンプレッサーのパラメーター
1176コンプレッサーで使われるパラメーターは、主に5つあります。
・OUTPUT(出力レベル)
・ATTACK(アタック)
・RELEASE(リリース)
・RATIO(レシオ)
他のコンプレッサーに見慣れている人は、「スレッショルドがない」「INPUTがある」という2つの点を不思議だと感じるかもしれません。
実は、この2つのポイントが1176コンプレッサーを特徴づけているのです。
1176コンプレッサーにはスレッショルドがない
コンプレッサーは「出過ぎた音を抑える」というのが基本的な動きなので、多くのコンプレッサーにはスレッショルド(THRESHOLD)と呼ばれるパラメーターがあります。
スレッショルドは「これよりも大きい音が出たら音量を抑えてください」という基準になります。
しかし、1176コンプレッサーにはこのスレッショルドがありません。
これは、1176コンプレッサーではすでにスレッショルドが決まっている=固定されているからです。
そのため、1176コンプレッサーでは「スレッショルドを下げて出過ぎた音かどうかを決める」のではなく、「INPUTレベルを上げることで出過ぎた音かどうかを決めている」というになります。
INPUTレベル(入力レベル)を上げることで最初から決まっているスレッショルドに到達・超過させ、INPUTレベルをあげたことでスレッショルドを超えた音にコンプレッションをしていきます。
1176コンプレッサーはアタックとリリースの数字が逆転する
多くのコンプレッサーには「アタック(ATTACK)」「リリース(RELEASE)と呼ばれるパラメーターがあります。
アタックは、スレッショルドを超えた音を検知した後に、どれだけ速くコンプレッサーをかけ始めるかを決める数字です。
リリースは、スレッショルドを超えた音がスレッショルドを下回り始めた後に、どれだけ長くコンプレッサーをかけつづけるかを決める数字です。
多くのコンプレッサーでは数字が小さいほど=ツマミを左に回すほど「アタックが速い」「リリースが速い」という設定になりますが、1176コンプレッサーでは逆に「遅い」という設定になります。
上の画像は左に振り切っているので「アタックが遅い」設定です。
上の画像は右に振り切っているので「アタックが速い」設定です。
リリースも同じで、左に回すほど「リリースが遅い」、右に回すほど「リリースが速い」という設定になります。
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RATIO(レシオ)は4段階+2つのモード
1176コンプレッサーは、4段階のRATIO(レシオ)を選択できます。
このうち比率の低い方は「コンプレッション」が、比率の高い方は「リミッティング」が行われます。
・4:1
・8:1
・12:1
・20:1
なぜ「コンプレッション」と「リミッティング」が分かれている?
それで、なぜRATIOの値によって「コンプレッション」と「リミッティング」が分かれているのでしょうか?
そもそも、このRATIOの値は「スレッショルドを超えた音を、何分の1の音量に抑えるか」を決める値です。
例えばRATIOが「2:1」であれば「出過ぎた音を半分にする」ということになります。
※スレッショルドを1dB超えていたら、0.5dBになるまで抑えます
12:1や20:1だと、スレッショルドに限りなく近い音量まで抑えることになります。
これだと、もはや「スレッショルド以上の音は出させない」ぐらいの強いコンプレッションになります。
つまり、リミッティング(絶対にこの音量以上は出させない)と同じ程度になるので、高い比率のRATIOは「リミッティング」されるようになっています。
そのため、12:1や20:1のときは「リミッティングモード」になり、4:1や8:1のときよりもスレッショルドが高い位置(より大きい音量)まで引き上げられます。
リミッティングモードにすると、クリッピング(音割れ)しないと程度まで音量を抑えることができます。
メーター表示の変更(METER)とバイパス切り替え
「METER」の欄では、メーターの表示切り替えをすることができます。
+4:メーターの0 = +4dB相当
+8:メーターの0 = +8dB相当
OFF:プラグインをOFFにする(バイパスにする)
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UAD社バージョンではHRとMIXの調整もできる
UAD社が開発したプラグインバージョンの1176コンプレッサーでは、これに加えて「HR」と「MIX」の設定があります。
ヘッドルームの量を調整する
マイナスにするとヘッドルームの量が減り、INPUTレベルが低くてもコンプレッションがかかり始める
プラスにするとヘッドルームの量が増え、INPUTレベルをある程度大きくしないとコンプレッションがかからなくなる
DryとWetの割合を調整する
(コンプレッションがかかった音とかかっていない音の割合)
ボーカルに1176コンプレッサーを使ってみよう
それでは、ボーカルに1176コンプレッサーを使った音を聞いてみましょう。
今回はUAD社の1176系コンプレッサープラグイン「UA 1176」を使います。
画面に「BYPASSED」と表示されている間は、コンプレッサーをOFFにしている状態です↓(4:00~4:41)
アタックが速いおかげで、出過ぎた音がしっかり抑えられ、ボーカル全体が前に出てくるようなサウンドになりました。
それでは、今度はアタックのパラメーターを調整しながら聞いてみましょう↓(5:10~5:24)
アタックを非常に速くして(ツマミを右に動かして)も、音量が出過ぎている部分だけがしっかり抑えられ、いかにも「コンプレッサーをかけました」という人工的な違和感はありません。
メーターは「GR」に設定しているので、メーターにはゲインリダクションが表示されるようになっています。
このメーターを見ると、ゲインリダクションの量がとても多い=とても強くコンプレッションがかかっていることがわかりますが、コンプレッサーがかかりすぎている音のようには聞こえません。
とてもナチュラルにトランジェント(音の立ち上がりの部分)だけが取れています。
それでは、今度はStam Audio Engineering社の1176系コンプレッサー「SA-76D+」を使ってみます。
こちらは実機(ハードウェア)版です↓(5:43~6:35)
ボーカルにおすすめの設定
1176コンプレッサーをボーカルに使うとき、個人的には(解説者・Chris Slim)以下のような設定で使い始めるのがおすすめです
大きくすると、スレッショルドを大きく超えてコンプレッサーがかかりすぎてしまうため
次の音にもコンプレッサーがかかってしまわないように、リリースは速めにする
出過ぎた音を整える程度にしたいときは、小さめの比率にする
1176コンプレッサーの場合、「アタックが遅め」と言っても他のコンプレッサーよりは圧倒的に速いマイクロ秒単位の動作になりますので、アタックが遅めでも十分「速い」設定になります。
1176コンプレッサーのおすすめの使い方
楽器を問わず、1176コンプレッサーにおすすめの使い方はこちらです。
キツいトランジェント(ピーク)を最初に抑え、聞きやすい音量に整える
2.2つ目のコンプレッサーで、音量全体を持ち上げる
音がより前に出てくるような印象になる
このとき、2つ目のコンプレッサーとして1176コンプレッサーを使うのもよいでしょう。
この場合は、以下のような設定がおすすめです。
・アタックとリリースは最速
・RATIOは大きめ(20:1)
こうすると、RATIOを20:1にしているのでリミッティングモードになり、大きすぎる音がしっかり抑えられ、小さい音と大きな音の差が縮まり、結果的に音全体が持ち上がったような印象になります
さまざまな1176のバージョンを使い分けよう
1176コンプレッサーには全部で5種類があり、特に人気なのはこちらの3バージョンです。
Rev E “Blackface”
・クリーンでナチュラル
・今回の解説で使ったバージョン
Rev A “Bluestripe”
・明るい+アグレッシブ
・サチュレーションで中音域が目立つ
・強めのボーカルにしたいときにおすすめ
AE”Anniversary Edition”
・UAD社が2008年にリリースしたバージョン
・RATIOで「2:1」が使える
(やさしく音量を整えたいときにおすすめ)
・アタックで「SLO」を設定できる
(アタックが10msになる)
AEをドラムに使った例↓(9:08~9:39)
アタックが速すぎるとトランジェントがすべてなくなってしまいますが、SLOにすることでパンチも重みもUPすることができます。
AEでアタックとリリースを最速+RATIOを8:1にした例↓(10:02~10:25)
特にハイハットの演奏のニュアンスが細かに伝わるようになりました。
UAD社のプラグインバージョンのAEではRATIOのスイッチを全てONにできる
ちなみにUADのプラグインバージョンのAEでは、Shiftキーを押しながらクリックするとRATIOのスイッチを全てONにすることができます↓(11:17~12:19)
とても強いコンプレッションがかかり、サチュレーションもより多く得ることができるので、独特の歪みを得ることができます。
さらにMIXのパラメーターがあるので、この強く歪んだ音と元の音をブレンドすることで、程よくパンチの効いた音にすることもできます。
UAD社のプラグインバージョンのRev AではアタックをOFFにできる
UAD社のプラグインバージョンのRev Aでは、アタックをOFFにすることができます。
OFFにするとコンプレッションがかからなくなるので、「1176コンプレッサーを使ったときの独特のサチュレーションだけが欲しい」というときにおすすめです。
この場合は、アタックをOFFにした上でINPUTとOUTPUTのレベルを調整します。
INPUTを多め、OUTPUTを少なめにするとこのように音を歪ませることができます↓(12:55~13:13)
おすすめの1176系コンプレッサープラグイン
最後に、おすすめの1176系コンプレッサープラグインをご紹介します。
UAD社「1176 Limiter Collection」
1176系プラグインの中でも最も有名な製品の1つです。
単体でも購入できますが、よりお得に購入したい方はPlugin Boutiqueの「Producer Edition」をおすすめします。
※同じく伝説の名機とされるLA-2AやPultec EQのプラグイン版も収録されています
関連記事
Wave社「CLA Classic Compressors」
エンジニアの巨匠・Chris Lord-Algeが開発に携わったプラグインバンドルです。
このバンドルに収録されている「CLA-76 Compressor / Limiter」が、1176をモデルとしたコンプレッサーです。
別記事で紹介している「LA-2A」をモデルにしたコンプレッサーも収録されていますので、単体で購入するよりもこちらのバンドルを購入した方がお得です。
Waves社「CLA Classic Compressors」の購入はコチラ(サウンドハウス)
Waves社「CLA Classic Compressors」の購入はコチラ(Rock Online)
IK Multimedia社「Black 76 Limiting Amplifier」
単体購入と、お得なバンドル購入があります。
ARTURIA社「FET-76」
Softube社「FET Compressor MK II」
PSP Audioware社「PSP FETpressor」
1176コンプレッサーはなぜおすすめ?魅力と使い方を解説まとめ
以上が1176コンプレッサーをおすすめする理由・魅力・使い方でした。
すべての楽器に使えるオールラウンダー
2.アタックがとても速い
20~800μs(マイクロ秒)まで対応
3.RATIOを変えるだけでリミッティングもできる
音を抑えることも、全体を持ち上げることもできる
4.強いコンプレッションがかかってもナチュラル
自然に音量を整えられる
5.さまざまなバージョンの使い分けができる
「Blackfabe」「Bluestripe」「AE」など全部で5種類
AEではコンプレッサーをかけずサチュレーションを強くかけることも可能
当サイトでは他にも音楽制作における名機についてまとめていますので、ぜひこちらもご覧ください↓
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