楽器解説

【音楽史】ドラムの歴史 Part15(最終回)【ビートルズとマッチドグリップの誕生】

History of the Drumset - Part 15, 1964 - The Beatles

今回は、ドラムスティック・マレットを開発している世界的なメーカーVic Firthが解説する「ドラムの歴史」をまとめました。

この記事ではPart15として、ビートルズとマッチドグリップの誕生を中心に振り返ります。

1964年からはイギリスのロックバンドが大活躍

1964年は、ロックンロールが誕生してから10年経っている年です。

ドラムセットも今のように「バスドラム・スネア・ハイハット・タム・クラッシュシンバル・ライドシンバル」で構成され、今とほとんど同じに叩き方になっていきました。

この1964年頃になると、イギリスのロックバンドによるアメリカ進出が始まります。

The Beatles、The Rolling Stones、The Yardbirds、The WHO、QUEEN、Deep Purpleなど、日本人にもなじみのある多くの人気バンドが1960年代に誕生します。

アメリカのロックンロールやブルース、ロカビリー、ソウルアーティストたちの後ろにいた彼らですが、彼ら自身の新しいロックンロールのスタイルを築き、アメリカに進出したのです。

The Beatles - Hey Jude
The Rolling Stones - Paint It, Black (Official Lyric Video)
The Yardbirds - For Your Love (1965) (Full version)
The Who - I Can't Explain
Queen – Bohemian Rhapsody (Official Video Remastered)
Deep Purple's Smoke On The Water (Film Clip)

The Beatlesの活躍

この時代に起こった大きな出来事といえば、The Beatlesが「The Ed Sullivan Show」に出演したことでしょう。

The Beatles - I Want To Hold Your Hand - Performed Live On The Ed Sullivan Show 2/9/64

このテレビ番組は、あらゆる「才能」を発掘するショーケースで有名で、歌だけでなく、ジャグリングや動物とのショーなども繰り広げられました。
(ちなみにこの頃には家庭にテレビが普及していました)

第二次世界大戦後に生まれた「ベビーブーム世代」と呼ばれる多くのティーンエイジャーたちがこの番組を見ており、The Beatlesは一躍人気になりました。

「ビートルマニア」と呼ばれる社会現象も起きたほどです。

当時はまだテレビのチャンネル数が少なかったので、そのおかげもあり、このショーを多くの人が見ていました。

マッチドグリップの誕生

この時、多くの人々がThe Beatlesのドラマーであるリンゴ・スターのドラミングを目にします。

ここで衝撃的だったのは、彼は「マッチドグリップ」でドラムを叩いていたことです。

マッチドグリップは、今では多くの人がドラムレッスンで最初に習うスティックの持ち方で、両方の手の甲を上に向けて構える持ち方です。

左が「トラディショナルグリップ」、右が「マッチドグリップ」https://www.drumeo.com/beat/traditional-grip-vs-matched-grip/

1960年代より前は、トラディショナルグリップで叩くのが一般的でした。

トラディショナルグリップはもともとマーチングで使われていた方法で、少し傾いたスネアドラムに適した持ち方でした。
※昔は現代のようにスネアを水平に保てるキャリングホルダーがなく、ベルトで肩から吊り下げているとどうしても楽器が傾いてしまいました

そのため、ドラムセットにおいてもマーチングと同じようにスネアドラムを前に傾けてセッティングしていることがほとんどでした。

マーチングにおけるトラディショナルグリップの例。スネアドラムが右足側に傾いているので、左手の手のひらを上に向けるようにしてスティックを持つと叩きやすい:https://drummagazine.com/how-to-play-a-traditional-grip/

スネアドラムを少し傾けてセッティングした例

best drum solo ever

ビートルズがマッチドグリップでドラムを叩いた理由

The Beatlesは、世界で初めてスタジアムで演奏したバンドです。

初めてのコンサートは、1965年のShea Stadium、55,000人の前での演奏でした。

当時はこれだけ多くのスタジアムで演奏するということは考えられず、加えて今のようにPAシステムもまだ進化していませんでした。

楽器自体も小さく、リンゴ・スターも20インチのバスドラムを使っていました。

55,000人もの観客がいて、女の子たちの黄色い歓声を大量に浴び、今ほどPAシステムにパワーがないことを考えると、楽器の音がかき消されてしまうことは容易に想像できるでしょう。

The Beatles - Eight Days A Week

そこでドラマーのリンゴ・スターが考えたのが、マッチドグリップを使うという方法です。

マッチドグリップの方がトラディショナルグリップよりもハードに叩くことができ、見た目もよかったのです。

そして多くのドラマーたちは「彼みたいになりたい!」と憧れるようになりました。

また彼はLudwigのドラムを使っていたので、Ludwingはまたしても最も有名なドラムメーカーに名乗り上げました。
(ちなみにLudwigのドラムペダルについてはPart3で詳しく解説しています)

そしてここから、マッチドグリップがドラマーにとっての「デフォルト」となっていったのです。


さて、長かったドラムの歴史シリーズも今回で最後です。

全15回に渡ってご覧いただきました。

全てを覚えておく必要はありませんが、頭の片隅に入れておくと当時の時代背景を思い浮かべながら音楽を楽しんだり、「何年代っぽい曲」「ビーバップスタイルのドラムを叩こう」のように、より細かい部分を考えながら作曲できるようになります。

みなさんの音楽制作やドラムの演奏に役立てていただけたら幸いです。


人気記事

1

今回は、キラキラ系エフェクトプラグイン「Bismuth」の魅力と使い方について解説します。Bismuth(蒼鉛)という名前の通り、金属や宝石を思い起こさせるようなサウンドを作ることができるプラグインです。特にダンスミュージックで使えるサウンドが手軽に使えます!

2

世界的にヒットしている曲の構成はどうなってる?ヒット曲の公式はある?今回はこのような疑問にお答えします。「曲を作るときはこれを使え!」と言うほど、多くの世界的ヒット曲に使われている楽曲構成をご紹介します。主に洋楽に使われている構成ですので、特に「世界中で自分の曲を聞いてもらいたい」という方はぜひ実践してみてください。

3

今回は、ヒップホップ・トラップを作る人におすすめのスピーカーを5つご紹介します。世界で活躍する超人気音楽プロデューサー&ラッパーが実際に使用している機材のみをご紹介していますので、どれを買っても間違いではありません。スピーカー購入を検討している方は、ぜひご予算や設置スペースに合わせてチェックしてみてください。

4

今回は、Waves社のリミッタープラグイン「L4 Ultramaximizer」の新機能と基本的な使い方をまとめました。最新作「L4 Ultramaximizer」は、これまでLシリーズを使ってきた方にもそうでない方にも非常におすすめできるプラグインですので、ぜひチェックしてみてください。

5

今回は、コード進行を学びたいときやバリエーションを増やしたいときに使えるおすすめのコード作成プラグインを3つご紹介します。「いつも同じコード進行ばかり使ってしまい、新しいコードのアイデアが思い浮かばない」という方、必見です!

6

今回は、世界中のプロに愛用されているoeksound社「soothe3」の使い方をまとめました。とても使いやすく、初心者でもプロ並みのミックスができるようになるこのプラグインについて、その魅力や使い方を解説していきます。

7

今回は、音響関連の商品を開発しているGIK Acousticsが解説する「ステレオスピーカーの置き方」をまとめました。特にDTMなどの音楽制作では、正しく音を聞くためにスピーカーの置く位置が非常に重要になります。この記事では、ステレオモニタースピーカーとサブウーファーの正しい置き方を図を用いて解説します。

8

ミキシングをするときは、スピーカーorヘッドホン(イヤホン)、どっちでやればいいの?今回はこの疑問にお答えします!海外プロが教える「DTMでMIXするときはスピーカーとヘッドホン(イヤホン)のどちらを使った方がいいのか?を解説!今回はスピーカーを使うことによるメリットをじっくりご説明します。

9

今回は、IK Multimedia社「ReSing Japanese Pack」の使い方と実際のサウンドをご紹介します。ReSingはAIによって音をさまざまな声や楽器に変換できるツールですが、ついに日本語対応ボイスモデルを収録した「ReSing Japanese Pack」がリリースされました。今回はこちらをレビューしていきます。

10

今回は、Chambersが解説する「音楽プロデューサーは音楽大学に行くべきか?」をまとめました。ChambersはビルボードチャートでNo.1も獲得したプロの音楽プロデューサーですが、音楽大学や専門学校には行っていません。現在はプロとして活躍している彼が作曲家(ボカロP)になるなら音楽学校に行くべきかどうかを解説します。

-楽器解説