スピーカーは縦置きと横置き、どちらがいいのか?【DTM・オーディオ】
- 2024.12.05
- 2024.12.14
- オーディオ
今回はAdam Audio社とIn The Mixが解説する「スピーカーは縦置き or 横置きのどちらがいいのか?」をまとめました。
多くのスピーカーは正方形ではなく長方形であることが多いですが、縦置きにするべきか、横置きにするべきか悩む方も多いでしょう。
この記事では、スピーカーの横置き・縦置きを決めるポイントやそれぞれのメリットについて解説していきます。
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スピーカーは「縦置き」「横置き」どちらがいい?
スピーカーを縦置きにするべきか横置きにするべきかは、スピーカーそのものの特性やご自身が使う環境によって異なります。
縦置きと横置きを決めるポイントは、こちらの3つです。
・ツイーターとウーファーの位相の関係
・スピーカーの置き場所
それでは、1つずつ解説していきます。
縦置き・横置きを決めるポイント1.ツイーターのウェーブガイドの形
縦置き・横置きを決めるポイント1つ目は「ツイーターのウェーブガイドの形」です。
通常、スピーカーには1~3個の円形のパーツ「ドライバー」があり、そのうち高音域を鳴らすのが「ツイーター」です。
スピーカーを縦置きにしたときに、一番上に設置されている円形のパーツであることが多いです。
このツイーターから出す音をどれぐらいの広さで分散させるかを決めるのが「ウェーブガイド」で、例えばツイーターの周りが少し凹んだ部分がそれにあたります。
ウェーブガイドの形は製品によってさまざまで、四角形の製品もあれば、なめらかな円形・曲線状の製品もあります。
縦方向よりも横方向への分散が大切
ウェーブガイドは「音をどれだけ分散させるか」を決めるパーツですが、基本的には縦にも横にも音が広がるように設計されています。
例えば上記画像では「横方向に向かってどれだけ音を分散させるか」を示しています。
適切に音を聞くことができる範囲(SWEET SPOT)をできるだけ広げるため、横方向への分散は非常に重要な要素です。
SWEET SPOTの範囲が広ければ、聞く場所を多少移動しても問題なく音を聞くことができます。
上記画像のように「縦方向に向かってどれだけ音を分散させるか」も考慮して設計されています。
ただし一般的な建物では床や天井、机までの距離が比較的短く、リスナー自身は基本的にイスに座って聞くことが多いため、縦方向に動くことは少ないでしょう。
そのため、どちらかと言うと縦方向への分散よりも横方向への分散の方が重要です。
音域によって音が分散する方向が違う
実は、音域によって音が分散する方向が異なります。
例えば上記画像を見てみると、低音域は360度全体に向かって音が出やすい特性があることがわかります。
中音域は主に前方向に向かって音が出ますが、左右・上下にある程度広がっていきます。
しかし、高音域は一方向にしか向かっていかないので、ある程度分散させないと「この位置でしか音が聞こえない」という問題が起こります。
そのため、ウェーブガイドがあればリスナーが多少動いても音がそこまで変化せずに聞くことができます。
ウェーブガイドが「左右」に分散するタイプの場合
例えば、もしそのスピーカーが「縦置きにしたときに音を左右に分散させるタイプ」であった場合は、横置きにしたときに注意が必要です。
上記画像のように横置きにすると、分散する方向が縦方向になってしまうためです。
この状態でリスナーが左右に動くと、音を正しく聞き取れない可能性があります。
イスの高さをある程度変えても問題ない点はメリットですが、少しでも左右に動くと聞こえ方に影響が出るでしょう。
そのため、横置きにするときは「できるだけリスニングポイントを固定すること」「左右に動かないこと」が大切です。
ウェーブガイドの形はスピーカーによってさまざま
ウェーブガイドの形=分散の方向や距離は、スピーカーによって異なります。
そのため、説明書などを確認してウェーブガイドの形を理解し、適切に音を聞くためにはどの位置で聞くのがいいのか、どの程度動いても大丈夫なのかを確認しましょう。
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縦置き・横置きを決めるポイント2.ツイーターとウーファーの位相の関係
縦置き・横置きを決めるポイント2つ目は「ツイーターとウーファーの位相の関係」です。
スピーカーは高音域を出す「ツイーター」、中音域を出す「ミッドレンジドライバー」、低音域を出す「ウーファー」の3つに分かれていることが多いです。
3Wayスピーカーの場合は、以下の画像のように3つに分かれています。
2Wayスピーカーの場合は、ミッドレンジドライバーがなく「ツイーターとウーファー」の2つが使われていることがあります。
例えば2Wayスピーカーの場合は、このように「ウーファーが鳴らす音」と「ツイーターが鳴らす音」が分かれています↓(3:46~4:05)
パソコンやテレビから「これから流す音の情報」を受け取った後、スピーカーは「どのドライバーからどの音を鳴らすか」を分けて音を鳴らしています。
例えば「200Hz以下の音はウーファーが鳴らす」「200Hz以上の音はツイーターが鳴らす」などを決めています。
高品質のスピーカーであれば、両者の境目にあたる音域に不具合がないように調整したり、音を鳴らすタイミングをピッタリ同時にしてズレをなくすなどの調整が施されています。
「ウーファーから鳴らす音だけ遅れて聞こえる」のようなことがあってはいけないからです。
例えば上記画像のようにピッタリ中央にいる場合は、もちろん正確に音を聞くことができます。
そして、リスナーが多少左右に動いても、少なくとも同じスピーカーにおけるツイーターとウーファーの距離は常に同じになります。
横置きにするときの注意点
多くのスピーカーでは、縦置きにしたときに各ドライバーから出る音が同時に聞こえるように設定されています。
しかし、横置きにすると各ドライバーからリスナーの耳までの距離が数cmズレてしまうことがあります。
すると、各ドライバーから出た音の位相が合わず、音を正確に聞くことができない可能性があります。
上記画像の場合、よりリスナーに近い方のドライバー(ツイーター)の距離は短く(緑線)、遠い方のドライバー(ウーファー)の距離は長くなります(赤線)。
横置きにすると、このような距離のズレができてしまいます。
さらに、聞こえる音の位相にも問題が発生します。
例えばADAM AUDIO社のスピーカー「T7V」の場合、ツイーターとウーファーのクロスオーバー周波数は2.6kHzに設定されています。
※ツイーターからは2.6kHz以上の音を、ウーファーからはそれ以下の音を鳴らす
そしてリスナーから30cm以上離れた場所に置くことを想定し、縦置きにした場合にツイーターとウーファーから出た音の位相がピッタリ合うようにしています。
しかし、横置きにするとツイーターから耳までの距離とウーファーから耳までの距離に差が出てしまうため、位相がズレてしまいます。
例えばスピーカーから1m離れた場所で、30cm横にズレると、位相が25°ズレます。
さらにツイーターとウーファーに4cm以上の距離があり、波長が30cmある場合は、最終的に位相が120°ズレます。
位相は180°ズレると音が完全に打ち消し合いますので、120°のズレはかなり深刻な問題になります。
そのため、どうしても横置きにしたい場合は横置き対応のスピーカーを使用するのがおすすめです。
例えば多くのプロの音楽家に愛されているGenelec社のスピーカーは、スピーカー本体もスピーカースタンドも横置きに対応しています。
※「8X3X」「8X4X」「8X5X」シリーズは縦横両方対応、「8010」と「8X20」シリーズは縦置き専用
GENELEC ( ジェネレック ) / 8331AM(サウンドハウス)
GENELEC ( ジェネレック ) / 8000-333B L型テーブル・スピーカースタンド
(サウンドハウス)
大きめの3Wayスピーカーではウーファーが左右にある理由
よくある2Wayスピーカーと3Wayスピーカーは、上記画像のようなドライバーの配置になっています。
・ツイーターが上
・ウーファーが下
・ウーファーが左右に1つずつ
※低い方の「ローウーファー」と高い方の「ミッドウーファー」で分かれている場合もあります
・ツイーターが中央上
・ミッドレンジドライバーが中央下
このように見ると、3Wayスピーカーのウーファーは左右に付いており、両者に距離があります。
そして、いずれもツイーターとミッドレンジドライバーは上下に並べられていることが多いです。
なぜウーファー同士は横方向に距離が離れていてもよいのでしょうか?
これは、ミッドレンジドライバーとウーファーのクロスオーバー周波数(両者が鳴らす音域の境目)の波長が、これら2つの物理的な距離よりも長いからです。
より具体的には「低音域ではコームフィルタリングの影響を受けにくいから」と言えますが、このコームフィルタリングについてはこちらの記事で解説しています↓
縦置き・横置きを決めるポイント3.スピーカーの置き場所
縦置き・横置きを決めるポイント3つ目は「スピーカーの置き場所」です。
スピーカーを置く場所の「高さ」によって、スピーカーを適切な位置に設置できるかどうかが変わります。
多くの場合、スピーカーを使うときは机の上に置くか、スピーカースタンドの上に置くかのいずれかになるでしょう。
このとき、スピーカースタンドや机が高いと、スピーカーを縦置きにしたときにツイーターが自分の耳の位置よりも上になってしまうことがあります。
一般的には「ツイーターが自分の耳の高さになること」が理想とされていますので、両者の高さが合わないと正確にモニタリングできない可能性があります。
ツイーターはスピーカーを縦置きにしたとき一番上に設置されていることが多いので、特にこの問題は起こりやすいでしょう。
そのため、ツイーターが自分の耳よりも高いときは、スピーカーを横置きにするとちょうどいい場合があります。
ツイーターの位置を自然に下げることができるからです。
スピーカーを少しだけ下に傾けるのもアリ
スピーカーを横置きにできない場合は、スピーカーを少しだけ下に傾けるのもよいでしょう。
ただし下に傾けすぎるとスピーカーが落ちてしまうことがあるので、ほんの少しだけ傾けてバランスを保つことが大切です。
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スピーカーの「縦置きと横置き」どちらがおすすめ?
これらの内容を踏まえると、横置き専用のスピーカーでない限りは「縦置き」であれば基本的に問題がないと言えるでしょう。
もし横置きで使う場合は、「横置き専用のスピーカーである」「横置き対応のスピーカーである」「横置きにした方が位相の問題も高さの問題も解決できる」のいずれかが当てはまっていることが大切です。
またメーカー側で「横置きには対応していません」と公式サイトや取扱説明書に記載している場合がありますので、事前にこちらをチェックしておきましょう。
縦置き・横置き両対応のスピーカー
製品によっては、縦置き・横置きの両方に対応しているスピーカーもあります。
GENELEC ( ジェネレック ) / 8331AM(サウンドハウス)
※Genelec社のスピーカーの場合、「8X3X」「8X4X」「8X5X」シリーズは縦横両方対応、「8010」と「8X20」シリーズは縦置き専用
FOCAL ( フォーカル ) / ST : TRIO 6(サウンドハウス)
また、ADAM AUDIO社のように縦置き版と横置き版で製品を分けていることもあります。
例えば「S5H」の「H」は「Horizontal(横向き)」の意味で、横置き専用のスピーカーです。
ADAM AUDIO ( アダムオーディオ ) / S5H(サウンドハウス)
「S5V」の「V」は「Vertical(縦向き)」の意味で、縦置き専用のスピーカーです。
ADAM AUDIO ( アダムオーディオ ) / S5V(サウンドハウス)
※横置き版はウーファーが一つ多く、値段も少し高いです
同社の他製品も「H」や「V」の文字が名前に入っていますので、ご自身に合った環境で利用するとよいでしょう。
以上で「スピーカーは縦置きと横置き、どちらがいいのか?」の解説は終了です。
当サイトでは他にもスピーカーのセッティングやそれに関わる知識についてまとめていますので、ぜひこちらもご覧ください↓
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