MIX師におすすめのボーカルエフェクトの設定【83%はコレで解決】
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今回は、アメリカのプロデューサーNathan James Larsenが解説する「僕のお気に入りのボーカルチェイン」をまとめました。
「どんな曲であっても、ミックスの83%はこのボーカルチェインを使っている」というぐらい汎用性が高い内容ですので、ぜひお試しください。
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はじめに
ボーカルエフェクトは、もちろん曲によって異なります。
今回ご紹介するのは、曲のテイストを左右するような部分ではなく、ごく一般的な、基本的な部分で使える方法です。
質の良いレコーディングができていることが大前提
ボーカルエフェクトはもちろん大切ですが、そもそものレコーディングがよくできていなければ始まりません。
具体的に数字を挙げると、まずはフェーダーを見て音量が-6dB以上にならないようにレコーディングしましょう。
ヘッドルーム(+-0dBの天井の部分までの間)にゆとりを持つことが大切です。
レコーディング環境もしっかり整えよう
また、レコーディング環境もしっかり整えましょう。
部屋の反響音がひどいところではレコーディングせず、しっかり吸音材を使った部屋を使いましょう。
このような環境が整えられない場合は、反響音やノイズを拾いにくいダイナミックマイク を使うなどの工夫をしましょう。
ダイナミックマイクの中では、LS-208(Lauten Audio)やSHURE SM7Bなどがおすすめです。
もちろん、ボーカリストの実際のパフォーマンスや、適切なピッチ・タイミング調整なども重要です。
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おすすめのボーカルエフェクトチェイン1.EQ(第1段階)
はじめに、ボーカルに何もエフェクトをかけていない状態を聞いてみましょう。
そして、まずは適切なEQをかけるところから始めます。
いい環境でレコーディングされていれば、ほとんど何もしなくても最初から良い状態であることもあります。
そうでない場合は、どこかの周波数帯域で何かしらの問題がありますので、これらをEQで見つけ、解決してきます。
YouTube動画の中には、このようにものすごく狭いQ幅で極端にブーストし、問題のある帯域を見つけましょうと解説している動画もあります。
しかし実際にやってみると、このようなやり方ではなかなか問題点を見つけることができません。
そのため、まずしっかりボーカルを聞き、問題点を探していきましょう。
例えば今回は女性ボーカルなので、200hz以下はほぼ必要なくなります。
これらの帯域は低音域の楽器とぶつかる可能性があり、またボーカルには必要ない音域ですので、カットしていきます。
そして、少し耳が痛くなるような音も聞こえますので、こちらを削ります。
およそ1~3khzぐらいだと思いますので、この周辺を少しブーストしてゆっくりポイントを動かしていきます。
この辺りを探ってみると、母音が伸びたときに音が割れるような、耳が痛くなるような部分がありました。
そのため、この周辺を少しだけ削ります。
同じ部分をON/OFFで比較してみると、EQをしている時には耳の痛くなる音が減り、とても聞きやすくなっていることがわかります。
この他にも、レコーディング環境によっては不要な音があったり、逆に足りない音域があることがあります。
これらの問題を、最初にEQで解決していきましょう。
このSTEP1では、レコーディングで解決できなかった部分をEQで解決するフェーズと言えるでしょう。
おすすめのボーカルエフェクトチェイン2.コンプレッション(第1段階)
次は、第一段階のコンプレッションを行います。
ここではあくまでピークの部分を抑え、音量全体をフラットにしていくためのコンプレッションですので、強いコンプレッションは避けます。
具体的な数字で言うと、3~5dBぐらいのリダクションがよいでしょう。
今回はLogic Pro付属のコンプレッサーのうちVintage Optoを使います。
レシオは、ボーカルコンプレッションでは一般的な数値である4:1に設定します。
そしてスレッショルドを調整し、ボーカルのトランジェントが潰れすぎず、クリッピングもせず、程よく音量をならすようにします。
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おすすめのボーカルエフェクトチェイン3.ディエッサー
次はディエッサーで、高音がキツくなっている部分(子音のSやChの部分など)を調整します。
今回はLogic Pro付属のディエッサーで、女性ボーカル用のプリセットを使います。
ディエッサーは強くかけすぎると他の子音や母音にも影響が出てしまうため、SやChの発音部分にのみ程よくかかるように調整します。
おすすめのボーカルエフェクトチェイン4.EQ(第2段階)
ここまでで基本的な部分はある程度終わったため、ここからはより曲のカラーに合った調整をしていきます。
まずはEQです。
EQもプラグインによってはカラーが異なるため、自分の理想のボーカルのカラーに仕上げられるプラグインを選びましょう。
今回はLogic Pro付属のVintage Tube EQを使い、高音域をブーストします。
バイバス時と比較すると、よりエッジがあって切り込んでいく感じがありつつ、音が持ち上がっているような印象になります。
さて、このVintage Tube EQでは切り込んでいくようなサウンドが得られました。
よりきらめくようなサウンドも試したいので、Black Salt AudioのOXYGENを使ってみます。
Vintage Tube EQを使っている時と比較してみましょう。
本当に小さな違いで、この程度なら気にしない人もいるかもしれませんが、個人的にはVintage Tube EQの切り込み感や強さが好みなので、そちらを採用することにします。
ちなみに、個人的にはSoundtoysのSie-Qも好きで、こちらを使うこともあります。
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おすすめのボーカルエフェクトチェイン5.コンプレッション(第2段階)
最後に、第2段階目のコンプレッションを行います。
ここまで来ると次は空間系エフェクトやディストーションを使う段階になると思いますが、その前にこのコンプレッションを行います。
これは多くのプロも実践しており、「シリアルコンプレッション」とも呼ばれています。
第1段階では音量をならすために使いましたが、この段階では、よりカラーを付け足すためにコンプレッションを行います。
今回は、基本的な設定は第1段階の時と変えずに、Logic Pro付属のコンプレッサーを使います。
この段階ではコンプレッションによりカラーを足すことが大切なので、のちほど使うコンプレッサーの種類を変えてみます。
レシオは4:1、リダクションが3~5dBぐらいになるようにします。
このままだと少し音量が小さい部分が出てきてしまったので、MAKE UP GAINで全体の音量が同じぐらいになるように調整します。
それでは、使うコンプレッサーの種類を変えてみましょう。
比較して聞いてみると、Vintage VCA(白と青)の方が高音域が通りやすく、エッジやパンチが効いた音に聞こえます。
対してStudio FET(黒)は、より暗いカラーのサウンドになりました。
今回はVintage VCAの方のサウンドが好きなので、こちらを採用します。
完成!
ここまで5つのステップをご紹介しました。
一つ一つのプラグインは本当にささいな違いしか出していないように感じたかもしれませんが、それを積み重ねると、大きな違いを生み出します。
それでは最後に、完全にバイパスの状態と、5つのステップを完了した後の音を比較して聞いてみましょう。
音量は変えていないのに、プラグインだけでこれだけ大きく、強く聞こえるようになりました。
これはコンプレッションのおかげで、同じ音量でも音がより太く聞こえるようになったからです。
あとは、ここからリバーブやディストーションなどのプラグインを使い、ボーカルを完成させていくだけです。
以上で解説は終了です。
ボーカルミックスは人によって手順がさまざまですので、ぜひいろいろなやり方を知り、自分に合ったボーカルチェインを見つけてみてください↓
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