モノラルでミックスするメリット4つと注意点3つ【DTM・MIX】
- 2025.03.30
- 2025.04.01
- ミキシングのコツ

今回は、In The MixのMichaelが解説する「モノラルでミックスをする ~秘密の武器か?時間のムダか?」をまとめました。
ミックスのコツについて調べていると「モノラルでチェックするべき」というアドバイスをよく目にしますが、一方で「モノラルでミックスしても意味がない」という意見もあります。
このようにモノラルミックスについては賛否両論ありますが、ここではMichael自身がプロのエンジニアとして活動してわかった「モノラルミックスの意味」と「モノラルミックスをするときのコツ」をご紹介します。
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そもそも「ステレオ」と「モノラル」の違いは何か?
はじめに「ステレオ」と「モノラル」の違いを解説します。
すでにご存知の方は「モノラルでミックスする5つのメリット」までスキップしてOKです
ステレオ(Stereo)とは?
ステレオ(Stereo)は、いわゆるみなさんが日常生活で音楽を聞いているときに使っている方法で、「右と左」の概念があります。
例えばスピーカーを使うときは、2本用意して右から出てくる音と左から出てくる音を混ぜ合わせた音を聞いています。
イヤホンやヘッドホンも、右から聞こえてくる音と左から聞こえてくる音を同時に聞いているでしょう。
右の方から聞こえてくる音があったり、左から聞こえてくる音があるのは、ステレオの状態で聞いているからです。
真ん中にスピーカーを置いてないのに真ん中から音が聞こえるのは、右と左から全く同じ音が出てくると、人間の耳には真ん中から音が聞こえているように聞こえるからです。
イヤホンやヘッドホンでも同じで、左右の耳を覆っているのに音が真ん中から聞こえているのは、左右から全く同じ音が出ているからです。
このように、右から聞こえてくる音(右チャンネル)と左から聞こえてくる音(左チャンネル)を上手に使うことで、左右に広がりのある音も体験することができます。
モノラル(Mono)とは?
モノラル(Mono)は、右から聞こえてくる音(右チャンネル)と左から聞こえてくる音(左チャンネル)を1つにまとめ、そのまとめた音を半分の大きさにした音声のことです。
なぜ1つにまとめた音を半分にするかと言うと、右の音と左の音をただ合体させただけでは、音量が本来の2倍の大きさになってしまうからです。
右と左で同じ音が同じ音量で鳴っていると、真ん中にまとめたときに音が2倍の音量になります。
こうすると、本来の音量の2倍で聞こえてしまうので、音量は半分にします。
モノラルでは、音がとても細く、真ん中からしか聞こえなくなります。
モノラルでミックスする4つのメリット
それではここからは、モノラルでミックスをするメリットを4つご紹介します。
モノラルでミックスするメリット1.音量バランスを確認しやすい
モノラルでミックスをすると、すべての音が中心に集まるため、何の音がどれだけ大きいかを確認しやすくなります。
音が左右に広がっていると、音が散らばっているように聞こえるので「実はスネアの音が大きすぎる」ということにも気付きにくくなります。
すべての音を1ヶ所に集めることで、音量バランスを確認しやすくなるのです。
モノラルでミックスするメリット2.マスキング問題を見つけやすい
モノラルにすると、すべての音が中心に集まります。
そのため、「どの音が一番聞こえるか」「どの音が聞こえにくいか」がわかりやすくなります。
つまり、周波数帯域ごとのマスキング問題も見つけやすくなります。
例えば左右で異なる種類のシンセサイザーを使っているとき、ステレオで聞いていると左右別々に聞こえますが、モノラルにすると片方だけ聞こえにくくなったり、両方聞こえにくくなっていることがあります。
このようにモノラルで聞いてマスキング問題を発見した場合は、両者の周波数バランスを調整してみると、ステレオで聞いたときによりクリアに聞こえるようになります。
モノラルだけではなく「右だけ」「左だけ」でも確認しよう
モノラルミックスも大切ですが、「右チャンネルだけ聞く」「左チャンネルだけ聞く」という確認方法も大切です。
例えば右側で鳴っているギターやシンセサイザーが、バッキングボーカルの音をマスキングしていないか、などが確認できます。
「右チャンネルと左チャンネルがお互いをマスキングしていないか」を確認するにはモノラルミックスが有効ですが、「右チャンネルで鳴っている音同士がマスキングしていないか」を確認するには、右だけor左だけで聞いてみるのもおすすめです。
いろいろなフォーマットでも聞いてみよう
ちなみに僕は、楽曲をいろいろなフォーマットで書き出してチェックするようにしています。
例えばwavだけではなくmp3、さらにビット深度やエンコーディング方法も変えて書き出し、とても音質が悪いmp3でも、どんな状態のフォーマットでも自分の理想に近いフォーマットになっているように注意します。
iZotope社の「Ozone」ではプラグイン内でフォーマットを変えてシミュレーションできるので、いちいち書き出さなくてもいいのがとても便利です。
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モノラルでミックスするメリット3. 位相の問題を解決できる
例えばバスドラムとベースが中央で鳴っているとき、位相が反対になっていると(逆位相)、バスドラムだけが前に出て聞こえて、ベースが後ろに下がって聞こえるようになることがあります。
場合によっては、両方とも聞こえにくくなることもあります。
また、スネアドラムで2本のマイクを使って録音したとき(トップマイクとボトムマイク)、両者の位相がズレていると、音が打ち消されて小さく聞こえてしまうことがあります。
位相の問題は波形を見て目視で確認することもできますが、やはり音楽の場合は「耳で聞いて正しく聞こえるかどうか」が大切です。
そのためこのような位相の問題をチェックするには、すべての音を中心で鳴らして、位相の打ち消しが起こっていないかを確認するとよいでしょう。
ステレオで聞いているときよりも、モノラルで聞いた方が位相の問題をチェックしやすくなります。
モノラルでミックスするメリット4. 耳がよくなる(リスニングスキルが伸びる)
モノラルでミックスをすると、すべての音が中心に集まるので、何か1つの音・状態にフォーカスして音を聞くことになります。
これは「200Hz以下の低音域だけを聞く」「横で鳴っている音だけを聞く」「ソロで聞く」「コンプレッサーを使った音と使ってない音を比較して聞く」というのと同様に、特定の状態やルールに従って音を聞くのと同じなので、より多角的な視点・聞き方で音を聞く練習になります。
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モノラルミックスをするときの注意点3つ
ここからは、モノラルミックスをするときの注意点を3つご紹介します。
モノラルミックスをするときの注意点1
先ほど、モノラルにすると「左右の音を足して2で割る」というお話しをしました。
左右で全く同じ音が鳴っていると、合体させたときに本来の2倍の音量になってしまうからです。
音量を半分にすることで調整します。
逆に言うと、左右で違う音が鳴っていたとしてもモノラルでは音量は半分になります。
例えば右からギターが10dBの音量で鳴っており、左にはギターがいなかったら、モノラルにするとギターの音が5dBで聞こえるようになります。
左右で全く同じ音が10dBで鳴っている:モノラルにすると(10+10)÷2 = 10dB
右からだけ10dBで鳴っている:モノラルにすると(10+0)÷2 = 5dB
「モノラルで聞いたときにギターが小さくなる」と感じたとき、モノラルで聞いたときにちょうどいい音量で聞こえるレベルまで上げてしまうと、ステレオに戻したときにギターが大きすぎることになります。
そのため、「モノラルでは音が小さく聞こえる可能性がある」ということを理解した上で、ステレオでもモノラルでも音量が適切になるように調節する必要があります。
モノラルミックスをするときの注意点2
モノラルでミックスをすると、ステレオを前提とした処理の効果が薄れるもしくはなくなります。
例えばリバーブやステレオディレイ(ピンポンディレイ)などは、左右の広がりを生かしたエフェクトです。
そのため、モノラルで聞くとその効果を実感しにくくなるどころか、ごちゃごちゃして聞こえてしまうこともあります。
ステレオ系のエフェクトを使っているときモノラルだとどう聞こえるのが適切なのかは、市販の楽曲をモノラルで聞いてみると参考になりますので、ぜひお試しください。
モノラルミックスをするときの注意点3
モノラルで聞いた後にステレオで聞くと、ステレオにした瞬間に音がバッと広がってとてもいい音に聞こえます。
特に、モノラルで聞いている時間が長ければ長いほど、ステレオで聞いたときに「いいサウンドだ」と思いやすくなります。
つまり、モノラルミックスをしているからこそ、ステレオに戻したときに「いいステレオミックスができている」と勘違いしやすくなるのです。
例えばローパスフィルターを使って高音域を完全にカットし、その音を長時間聞いたあとにフィルターをOFFにすると、ものすごく高音域が充実していて明るい曲だと感じるでしょう。
他の曲と比べると全然高音域に輝きがないミックスになっていても、そう勘違いしてしまうのです。
モノラルとステレオの切り替えでも同じようなことが起こりますので「自分のステレオミックスがしっかりできているかどうか」はモノラルにした状態と比較せず、他の市販の楽曲と比べるようにしましょう。
モノラルミックスをするのはモノラルで聞いている人のためだけではない
「モノラルでミックスをするのは、モノラルで聞く人もいるからだ」と思う人もいるでしょう。
確かにそのような環境で自分の曲が聞かれることもあるのですが、現代ではほとんどの人がステレオで音楽を聞くでしょう。
ではなぜモノラルでミックスをするのが大切なのかと言うと、モノラルで聞いたときに起こっている問題を解消すると、ステレオで聞いたときによりよいミックスに聞こえるようになることがあるからです。
つまり、モノラルでミックスをするのはモノラルで聞く人のためだけではなく、ステレオで聞く人も含めて、すべての人のためによりよいミックスで聞いてもらうためです。
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モノラル・ステレオミックス共通のコツとは?
モノラルミックスでもステレオミックスでも、ミックスをするときは「ステレオスピーカーで聞くときは音を小さくする」「イヤホン・ヘッドホンを使うときは耳から外して音量を大きくする」という方法がおすすめです。
ステレオスピーカーで聞くときは、誰かが話しかけたら音が聞こえなくなるぐらい小さな音量に設定しておきます。
イヤホン・ヘッドホンを使うときは耳に装着せず、耳から外して机に置いた状態でそのまま音量を大きくしましょう。
イヤホン・ヘッドホンから音漏れした音を聞くことになります。
このようにすると、「左右」を感じにくいほぼモノラルの状態で聞くことができます。
ただし、DAW上でモノラルに設定しているわけではないので、特定の音の音量が半分になることはありません。
そのため、より適切な状態で音量バランスをチェックすることができます。
これは僕のメンターであり友達から教わった方法なのですが、僕自身はこの方法を使ってとてもいいミックスができるようになりました。
ぜひお試しください。
モノラルミックスやサウンドチェックにおすすめのプラグイン
モノラルミックスをはじめ、ミックスやマスタリングで音を最終チェックするときはiZotope社の「Ozone」がおすすめです。
簡単にモノラルでチェックできるだけでなく、ラウドネス(音圧)や自動マスタリングアシストツールも使えます。
初心者の方には「Elements」、中級者の方には「Standard」、上級者の方には「Advanced」がおすすめです。
iZotope社「Ozone Elements」を購入する(サウンドハウス)
iZotope社「Ozone Standard」を購入する(サウンドハウス)
iZotope社「Ozone Advanced」を購入する(サウンドハウス)
iZotope社「Ozone Elements」を購入する(Plugin Boutique)
iZotope社「Ozone Standard」を購入する(Plugin Boutique)
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以上で解説は終了です。
当サイトでは他にもミックスのコツについてまとめていますので、ぜひこちらもご覧ください↓
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