世界一ヒットしたデュア・リパの「Levitating」を楽曲分析!
- 2025.03.31
- 2025.04.01
- 楽曲分析

今回は、音楽プロデューサー・オーディオエンジニアのJustin Collettiが解説する「デュア・リパ”Levitating”のミックス解説」をまとめました。
Justinは長年音楽業界でプロとして活躍しており、音楽プロデュース、ミキシングエンジニア、マスタリングエンジニア、音楽大学の講師など、幅広い分野で活躍しています。
そんな彼によると、デュア・リパの「Levitating」はミックスやマスタリングのリファレンス曲として選ばれることが非常に多いそうです。
まさに音楽制作のお手本となるこの曲にはいったいどんなミックステクニックが使われているのか、その特徴を4つご紹介します。
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ヒット曲は「何度も聞くほど新しい発見ができる工夫」がされている
この曲はミックスやマスタリングのリファレンス曲として選ばれることが多く、僕がミックスやマスタリングをしていても「この曲のようにミックス・マスタリングしてください」とお願いされることがたくさんあります。
なぜこれほどたくさんの人がこの曲をお手本にしたいのか、その理由の1つは「何度も聞くほど新しい要素を発見できるから」だと思います。
この曲を聴いたはじめの1〜2回は、メインの要素に注目しながら聴くでしょう。
しかし何度も聴いてるとだんだん他の要素に気づくようになり、「後ろではこんな音が鳴っていたのか!」という新しい発見がどんどん出てきます。
それではここからは、具体的に「Levitating」の楽曲分析をしていきます。
ヒット曲の分析1.ずっと鳴らすがずっと目立たせない戦略
「何度も聞くほど新しい発見がある楽曲」にする方法の1つに「ずっと鳴らすがずっと目立たせない」があります。
例えばこの曲のイントロは、「ファンファン」というボーカルのような不思議なシンセサイザーの音から始まります。
この不思議なシンセサイザーの音はAメロでも続けて鳴っているのですが、Aメロで最も目立っているのはボーカルやドラムなどの別の楽器です。
同様に、Aメロで目立つ要素はサビで目立っていなかったりもします。
そのため、何度も聴いていると「イントロにあったあの音は、Aメロでも鳴っていたんだ!気づかなかった!」と新しい発見をすることができます。
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ヒット曲の分析2.同時に鳴らす音の中で優先順位を決める
前述の「ずっと鳴らすがずっと目立たせない戦略」を実践するときのコツは、「最も目立つ2つの要素をセクションごとに変えること」です。
つまり、同時に鳴らしている音の中で優先順位をつけます。
例えば、この曲を聴きながら「イントロで最も目立つ楽器を2つ挙げるとしたら何か?」と「Aメロで最も目立つ要素を2つ挙げるとしたら何か?」を考えてみましょう。
鳴っている要素が少なければ、1つだけ挙げても構いません
まずイントロでは、よく聞くと「不思議なシンセサイザー」「ふわっとしたシンセサイザーの音」「ノイズ」の3つの音が鳴っています。
一番目立つのは「不思議なシンセサイザーの音」でしょう。
Aメロに入ると、この不思議なシンセサイザーの音も鳴っているのですが、それ以上にボーカルとベースの音が目立つようになります。
基本的にボーカルとベースが目立つフレーズが続く中で、ときどきクラップの音も目立ちます。
クラップは常に鳴っているわけではないのですが、クラップが入った瞬間はボーカルとベースよりも目立っており、音量がかなり大きいです。
さらに、クラップは2小節でひとまとまりのフレーズになっており、偶数小節目の最後は「パンパン」と2回連続で鳴らしています。
この2回連続でクラップが鳴る部分は曲のグルーヴで大切なリズムになるので、クラップが目立つとグルーヴがさらに際立ちます。
カバー曲やリミックスで最も目立つ要素を変えて失敗する例
僕が以前出会った人の中で、とある楽曲のリミックスを依頼されている人がいました。
原曲ではボーカルとバリトンサックスが最も目立つ要素でしたが、その人は「ボーカルとバリトンサックスは目立つけど、バスドラムもベースもギターもちゃんと聞こえない」と感じていました。
そこで、リミックス版では原曲で目立っていなかったバスドラムやベース、ギターも目立つようにしたのですが、今度はそのせいでボーカルとバリトンサックスが以前ほど目立たなくなっていました。
それどころか、ボーカルとバリトンサックスが埋もれてしまうほどのミックスバランスになってしまったのです。
そして結局、そのリミックス版は依頼人から気に入られませんでした。
「ボーカルとバリトンサックスが目立つ」というのが最大の魅力でありアイデンティティであったのに、それを完全に変えてしまったからです。
原曲における優先順位をよく考えよう
この例からわかるのは、リミックスやカバー曲を作るとき、原曲で最も優先順位の高かった要素を変えてしまうと、その曲がその曲でなくなってしまう可能性があることです。
原曲で特定の要素があまり目立って聞こえないとき、それはミックスが下手だったからではなく、意図的に聞こえなくしている(優先順位を下げている)からかもしれません。
このように優先順位を大幅に変えてしまうと、リスナーやリミックスを依頼してくれたクライアントがガッカリしてしまう可能性があります。
「何を最も目立たせたい楽曲なのか」をよく考えてから制作することが大切です。
ヒット曲の分析3.要素の組み合わせでアクセントとグルーヴをコントロールする
次は、1番Bメロと1番サビの分析です。
先ほどお伝えした「何が最も目立っているのか?」に注目してお聞きください。
実はここでは、要素の組み合わせによって曲中のアクセントとグルーヴを巧みにコントロールしています。
アクセントが1・3拍目だと「前進」2・4拍目だと「ゆったり」
Bメロでは、グルーヴのアクセントの位置がAメロと変わっています。
Aメロは2・4拍目にアクセントがついていましたが、Bメロからは1・3拍目にアクセントがついています。
ダンスミュージックでは2・4拍目にスネアドラムやクラップが鳴ることが多いのですが、EDMやディスコなどはマーチ(行進曲)のようなグルーヴを持つことがあるので、1・3拍目にアクセントが来ることもたくさんあります。
どちらかと言うと、2・4拍目の方がグルーヴがゆったりしている感じ、1・3拍目の方がどんどん前に強く進んでいく感じがします。
この曲では、Aメロは2・4拍目にアクセントを置くことで余裕を持って踊るようなグルーヴになり、Bメロとサビは1・3拍目にアクセントを置くことで思いっきり踊るようなグルーヴになります。
1・3拍目にアクセントを置くととても強烈なビートに聞こえるようになるので、特にサビでは効果を発揮します。
このようにアクセントの位置を偶数拍から奇数拍に変えることで、グルーヴにコントラストがつくのです。
横に広がる派手なシンセでアクセントを強調する
この曲のサビでは、シンセサイザーとストリングスの音が1・3拍目に入ります。
そしてディスコ系のバスドラムは4つ打ちで「ドン・ドン・ドン・ドン」と鳴っており、2・4拍目にはスネアドラムやクラップの音も入っています。
しかし、サビに入っているシンセサイザーやストリングスは1・3拍目に入っているので、1・3拍目に強くアクセントが入っているような印象になります。
特にシンセサイザーは横に大きく広がるようなサウンドになっています。
そのため、サビはとても壮大で派手に聞こえ、1・3拍目のアクセントがより強調されます。
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同じ音量でも全体における相対的な音量で印象が変わる
Aメロから目立っているクラップは、Bメロでもサビでも続けて鳴っています。
しかしBメロやサビでは他の楽器が入ってくるので、AメロよりもBメロ・サビの方がクラップは目立たなくなっています。
このように、同じ音量でも全体における相対的な音量で印象が大きく変わります。
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ヒット曲の分析4.1番と2番の違いを巧みにつける
1番と2番の違いを巧みにつけているのも、この曲の魅力の1つです。
次は2番Aメロを聴いて、1番Aメロとどう変わっているのか、その違いに注目してみましょう。
クラップは3拍目裏と4拍目に「パンパン」と2連続で鳴っていますが、2番ではこれと同時にタムも鳴っています。
「ポーンポーン」と、電子ドラムのような音がします
また、ボーカルにはハモリパートが加わっています。
逆に、1番では「フッ」という人の笑い声のようなボーカルがさりげなく入っています。
2番にも似たような音が入っていますが、タイミングや聞こえてくる場所(Pan)は1番と異なります。
特に注目してほしいのは、2番Aメロにおける不思議なシンセサイザーの音です。
2番Aメロではフィルターがかかっており、2番Bメロに向かっていくような形でフィルターが開いていきます。
はじめはフィルターがかかっていて音が少しこもっているように聞こえますが、曲が進むにつれてどんどん聞こえやすくなり、まるで新しい要素がセクションの最後に向かって追加されているような印象になります。
同じセクション間でも今までとは違うフレーズを一瞬だけ入れる
この曲でも特に耳を惹くのが、ボーカルで「I’m levitating」と歌っている部分です。
音が階段状にどんどん下がるようなフレーズなのですが、このようなフレーズはそれまでに登場していなかったので、サビの最後の最後でとても耳を引かれます。
このように、同じセクション間でも思わず「おっ?」となるフレーズを入れてみると魅力的な楽曲になります。
以上で世界一ヒットしたデュア・リパの「Levitating」の楽曲分析は終了です。
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