コンプレッサーだけを使ってドラムにパンチを加える方法【MIXのコツ】
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今回は、LifeStyleRiditが解説する「コンプレッサーだけを使ってバスドラムにパンチを加える方法」をまとめました。
「バスドラムにもっとパンチを加えて、ドンッと前に来るようにしたい!」と思うことは多いでしょう。
そんなとき、コンプレッサーを使うだけでも音を劇的に変化させることができます。
この記事では、こちらのシンプルなビートのバスドラムにコンプレッサーをかけて、解説を進めていきます↓
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はじめに:バスドラムの波形を見てみよう
コンプレッサーがどのように動くのかをしっかり理解するため、まずはじめにバスドラムの波形を見てみましょう。
いくつかの山が上に行ったり下に行ったりしています。
このうち、一番大きな山がピーク(Peak)で、これで言うと3つ目の山にあたります。
そしてこのピークが「トランジェント」と呼ばれる、音の立ち上がりの部分(アタックの部分)になります。
この波形では、同じぐらいの大きさの山が全部で6回ほど続き、最後はだんだん小さくなっています。
それではここからは、実際にこのバスドラムの音に対してコンプレッサーを使っていきましょう。
基本的なコンプレッサーの使い方
まずは、コンプレッサーの基本的な使い方からご紹介します。
今回の解説で使うのはWaves社の「Renaissance Compressor」ですが、その他のコンプレッサーでも同じようなパラメーターがありますので、こちらの製品を持っていなくてもOKです。
まずは「Threshold(スレッショルド)」「Attack(アタック)」「Release(リリース)」の3つのパラメーターを見ていきまししょう。
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コンプレッサーのThreshold(スレッショルド)とは?
コンプレッサーのThreshold(スレッショルド)は、「この音量を超えたらコンプレッサーをかけますよ」という基準を決めるパラメーターです。
例えばThresholdを-6dBに設定していて、実際の音が-7dBだった場合は、Thresholdを超えていませんのでコンプレッサーは全く動きません。
しかし音が-5dBになると、-1dB超過していますので、この超過した分の音に対してコンプレッサーがかかります。
コンプレッサーのAttack(アタック)とは?
コンプレッサーのAttack(アタック)とは、音がThresholdを超えたとき、どれだけ速くコンプレッサーをかけるかを決めるパラメーターです。
※製品や説明文によっては「Attack Time」などの名前になっていることもあります
Attackが速いとすぐにコンプレッサーがかかりますので、トランジェントにもコンプレッサーがかかってしまい、あまりパンチのない音になってしまうことがあります。
例えば「ガンッ」という音が「ぽんっ」ぐらいの弱さになってしまうこともあります。
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コンプレッサーのRelease(リリース)とは?
コンプレッサーのRelease(リリース)とは、音がThresholdを下回った後、どれぐらい長くコンプレッサーの効果を持続させるかを決めるパラメーターです。
一度Thresholdを超えると、コンプレッサーがかかり始めます。
この後、Thresholdを下回ってもなおコンプレッサーをできるだけ長くかけ続けたいという場合は、Releaseを長くします。
逆に「すぐにコンプレッサーをかけるのを止めたい」という場合は、Releaseを短くします。
バスドラムの場合は、Releaseが長すぎると「ボンッ」という音というよりは「ボー」という長い音になってしまうことがあるので、Releaseはあまり長すぎない方がよいでしょう。
バスドラムにコンプレッサーを使うときのコツ「Slow Attack & Fast Release」
音にパンチを出すときにキーポイントになるのは、「トランジェント」と「コンプレッサーのAttackのパラメーター」です。
これを行うためにわかりやすいキーワードが「Slow Attack & Fast Release」です。
※AttackとReleaseに関しては、「速い・遅い」ではなく「短い・長い」という表現をする場合もあります
つまり「アタックは遅めで、リリースを速めにする」ということです。
バスドラムにパンチを出すため、まずトランジェントにまでコンプレッサーをかけないためにはAttackを遅くする必要があります。
また、Releaseを長くしすぎると非常に不自然な音になってしまい、逆に速過ぎるとトランジェントよりも後ろの音にコンプレッサーが全くかからなくなってしまうので、音量が大きい部分が少なくなり、音に重みがなく、薄っぺらい音になってしまいます。
そのため、Releaseは適度に速くします。
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コンプレッサーだけを使ってバスドラムにパンチを加える方法(実例)
それでは実際に、コンプレッサーだけを使ってバスドラムにパンチを加えていきます。
パラメーターを徐々に動かしていきますので、音がどのように変化するのかに注目してみてください↓(3:26~4:05)
Attackを長くした方が(右にズラした方が)、バスドラムの音にパンチがあるように聞こえます。
Releaseは短い方が(左にズラした方が)「ドンッ」という短い音に聞こえ、長い方が(右にズラした方が)「ドーン」とほんの少しだけ長く、重い音に聞こえます。
「Fast Attack & Slow Release」にするとどうなる?
ちなみに、「Slow Attack & Fast Release」の真逆で「Fast Attack & Slow Release」にすると、どうなるでしょうか?
試しにやってみると、このような音になります↓
※AttackとReleaseに関しては、「速い・遅い」ではなく「短い・長い」という表現をする場合もあります
コンプレッサーをかけた後の音を波形を比較してみよう
それでは、パンチのある「Slow Attack & Fast Release」の例と、その真逆の「Fast Attack & Slow Release」の例の波形を比べてみましょう。
左の波形が「Fast Attack & Slow Release」で、右の波形が「Slow Attack & Fast Release」です。
先ほどまでの解説で音を聞いて頂いた通り、右の波形の「Slow Attack & Fast Release」の方が、パンチのある音に聞こえる例です。
波形を見てみると、左の方は最初の6個ぐらいの山で同じぐらいの大きさの音が続いていますが、右の方が最も大きい山が最初の2つ程度しかなく、すぐに音がフェードアウトしています。
逆に言えば、右の波形の方がトランジェント(パンチ)がはっきりしており、左の波形の方が音が持続するような音になります。
「Slow Attack & Fast Release」も「Fast Attack & Slow Release」も、どちらも使える
今回のテーマは「パンチのあるバスドラムを作る」なので、コンプレッサーの設定としておすすめなのは「Slow Attack & Fast Release」です。
繰り返しになりますが、これはコンプレッサーでトランジェント(アタック部分)を潰さないためです。
パンチがあった方が、他の音と一緒に聞いた時もしっかり音が前に出てきてくれるので、音抜けがよくなります。
しかし、逆にパンチよりも「重さ」「長さ」「大きさ」を重視したい場合は、その逆の「Slow Attack & Fast Release」の設定も使えます。
この設定にすると「ボーン」「ブーン」という音になるので、これはこれでカッコイイ音になるのです。
それでは、これを踏まえてもう一度2種類の設定の音を聞き比べてみましょう。
左側の波形が「重みがある設定」、右側の波形が「パンチがある設定」です。
このように比較して聞いてみると、やはり「パンチがある設定」の方が「バチッ」と音がクリアに前に出てきているように聞こえますが、トランジェントが多少潰れても重厚感のある「重みがある設定」のバスドラムも魅力的です。
コンプレッサーだけで、音量が一緒でも印象が全く違う音にできる
ここで、もう一度先ほどの波形を見てみましょう。
この2つの波形は、どちらも音量設定は全く一緒です。
それなのに、コンプレッサーの設定だけでこれだけの違いが出ました。
つまり「パンチがある」というのは、音量だけの問題ではなく、このような「トランジェント」「Attack」「Release」などのさまざまな要素が組み合わさって生まれる要素なのです。
「パンチが欲しいな」「重厚感が欲しいな」と思ったときは、音量だけではなく、このような時間軸上の要素にも目を向けてみることが大切です。
バスドラム以外にも使えるテクニック
今回ご紹介したコンプレッサーのテクニックは、別の楽器に対しても使えます。
例えばスネアの音にパンチを加えたいとき、「ドスン」という重みが欲しいときも、このAttackとReleaseの調整で理想の音に仕上げることができます。
ぜひお試しください!
当サイトでは他にもドラムにパンチを加えるためのコツをご紹介していますので、ぜひこちらもご覧ください↓
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