【DTM初心者】「減算方式」を理解して全てのシンセを使いこなす方法
- 2023.06.17
- 2024.11.18
- シンセ
今回は、Underdog Electronic Music Schoolが解説する「はじめてのSubtractive Synthesis(減算方式)」をまとめました。
SerumやNexusなどDTMでは非常にたくさんのシンセサイザーが使われますが、実は多くのシンセには「減算方式(Subtractive Synthesis)」が使われています。
この減算方式を理解し、シンセへの理解を深め、より多くのシンセを使いこなせるようになるための内容がたっぷり詰まっていますので、ぜひ最後までご覧ください。
スポンサードサーチ
はじめに:シンセは「音が作れるボックス」
かんたんに言うと、シンセは「音が作れるボックス」のようなものです。
実は世の中にあるシンセのうち99%は、ハードウェアシンセやソフトウェアシンセのいずれであっても、どれも同じようなコントローラーや機能が付いています。
今後新しい製品が発売されたとしても、大きく困ることはなく、すぐに使い方をマスターできるようになるでしょう。
「減算方式」で検索すると出てくる説明文はわかりにくい?
もしかしたらすでにこの減算方式について調べた方もいるかもしれませんが、一般的に使われる「減算方式」の説明図は、以下のようなイメージです。
正直、これではわかりにくく、見ていてもつまらないですよね。
そのため、今回はこれとは違う形で説明します。
ボックスの中の小人
次のシチュエーションをイメージしてみてください。
この小人は、常に「アーッ!」と叫んでいます。
この叫び声は、チューブを通してあなたの耳に届いています。
小人は「オシレーター」
このシチュエーションのうち、「小人」はシンセの「オシレーター」にあたります(上記図・左)。
そのため、オシレーター(小人)は常にボックスの中でひたすら音を鳴らし続けて(叫び続けて)います。
叫び声を「アンプ」で調整
チューブを通してみなさんの耳にこの叫び声が聞こえているので、とてもうるさく、音楽的に美しいとは言えない音になっているでしょう。
そのため、音量を下げたり、叫び声を完全にストップさせる機能が必要になります。
そこでオシレーター(小人)とみなさんの間に出てくるのが、「アンプ(Amplitude)」です。
アンプはチューブの上にあるので、チューブを通ってきた音の音量を調整することができます。
これなら、ずっと叫び声を聞き続ける心配もありません。
シンセでは、「Amp」「Amplitude」「Amplifier」という名前で搭載されている機能です。
「A Knob」など、「A」だけで表現されていることもあります。
「減算方式」という名前の理由
毎回アンプで音量を上げたり下げたりするのは疲れてしまいますので、シンセでは「鍵盤が押されたら音量を上げる(音が出る)」「鍵盤が押されていない間は音量を下げる(音を消す)」ということができるようになっています。
しかし、これは「鍵盤を押したら音が作られる」のではなく、先ほどのボックスの中の小人の例のように、「最初から音が鳴っていて、必要に応じて音量を減らして音を止めている」のです。
最初からあるものを「減らして」音を鳴らしたり止めているように聞かせているので、「減算方式」という名前が付いています。
スポンサードサーチ
音の始まり方や終わり方を調整する「エンベロープ」
さて、アンプのおかげで叫び声のボリュームは下げることができるようになりました。
しかし、このままでは「鍵盤を押した瞬間に音が鳴り、鍵盤から指を離した瞬間に音が止まる」という状態です。
音楽的に美しい音にするためには、もう少し音の始まり方や終わり方を工夫できるようにしたいですね。
ここで使われるのが、エンベロープ(Envelope)です。
エンベロープは「音量のカーブ」を描くことができる機能です。
鍵盤を押した時にどれぐらいの速さでどれぐらいの音量にたどり着き、鍵盤を離した時はどれぐらいの速さで音が減衰していくかなどを決めることができます。
ADSR(Attack, Decay, Sustain, Release)
エンベロープで覚えておくべき単語は「アタック(Attack)」「ディケイ(Decay)」「サステイン(Sustain)」「リリース(Release)」の4つで、「ADSR」とまとめて呼ばれることもあります。
アタックとリリース
簡単に覚えやすいのは「アタック」と「リリース」です。
例えばアタックが長いと、鍵盤を押してから音量がMAXになるまでの時間が長くなるので、音量がゆっくりと上がっていくような音になります。
リリースが長いと、鍵盤を離した後も長く余韻が残り、少しずつ音量が小さくなっていきます。
リリースを短く設定すれば、音に余韻が残らず鍵盤から指を離した瞬間に音がなくなります。
サステインとディケイ
サステインとディケイは、少し複雑に思われるかもしれません。
逆に、サステインが小さいとどんなに長く鍵盤を押し続けていたとしても、音量がすぐゼロになります。
ピアノがわかりやすい例の一つです。
鍵盤をずっと押し続けたとしても、弾いた瞬間の最初だけ音量が大きく、その後徐々に減衰しますので、「サステインが中ぐらいの楽器」と言えるでしょう。
よくあるエンベロープの形
よくあるエンベロープの形には2つあります。
一つは「サステインがMAXで、鍵盤を押している間はずっと音量がMAXで鳴り続ける」というものです。
※シンセサイザー「Serum」で再現した例
もう一つは「サステインがゼロで、鍵盤を押した瞬間に音が消える」というものです。
この場合はサステインがゼロなので、リリースも必然的にゼロになります。
(リリースに入る時には、すでに音量がゼロになっている)
アタックとディケイが適度に短くサステインがゼロだと、パーカッシブなアタック感のある音(プラック系の音)になります。
※シンセサイザー「Serum」で再現した例
ADSRのうちサステインだけは「音量」をコントロールする
ADSRのうち、アタック・ディケイ・リリースの単位は「ミリセカンド(ms)」で、時間をコントロールするパラメーターです。
しかしサステインだけは「MAX音量に対するパーセンテージ(%)」になりますので、音量をコントロールするパラメーターです。
単位が違う点は注意しましょう。
音楽として美しい音にするための「フィルター」
さて、先ほどの図に戻りましょう。
これまでの説明で、オシレーターの音量はアンプで調整でき、その音量もさらにエンベロープ(ADSR)で調整できることが分かりました。
しかし、今のままでは音量が調節できるというだけで、叫び声であることには変わりません。
このフィルターを使うと、光と同じように明るくしたり暗くしたり、赤っぽくしたり青っぽくしたりなど、音色を変えることができます。
多くのシンセではフィルターを使うと音が暗くなる傾向にあり、これは「ローパスフィルター(Low Pass Filter)」とも呼ばれます。
シンセによって他にもさまざまなフィルターが搭載されていますが、ほとんどのシンセにはこのローパスフィルターが搭載されています。
白い光を使っている時、赤い光を残すために青い光の成分を抜いたりするのと同じで、シンセでも不要な成分を取り除いていくのです。
不要な音を取り除いた音はアンプを通り、エンベロープを含めた音量調整を経て、私たちの耳に届きます。
フィルターは声を出す時と同じように音色を変えられる
フィルターは、口から声を出す時と同じようなイメージです。
例えば、少し口をすぼめて「ウォー」と言うと、暗くてこもったような音が出ます。
しかし口を開けて「アー」と言うと、明るくてストレートな音が出ます。
このような音色の変化を、シンセにおけるフィルターも行っているのです。
口の形と発音の速さを変えてユニークな音に
さらに言うと、口をすぼめて「ウォー」と言った後に「あ」の口に変えると、「ウォーアー」と、音色が変わります。
そしてこれを繰り返すと「ウォーアーウォーアーウォーアー」となり、さらに切り替えのスピードを速くすると「ワオワオワオ」と聞こえるようになります。
口で実演した例↓
フィルターにもエンベロープを使う
シンセも人間の声と同じように、フィルターを使ってさまざまな音色を出すことができます。
これを非常に助けているのが、フィルターに対してかかっているエンベロープです。
多くのシンセではエンベロープが複数あり、アンプだけではなくフィルターにもエンベロープを使えるようになっています。
アンプに対してエンベロープを使う時は音量を調整するために使っていましたが、フィルターに対してエンベロープを使うと、フィルターのかかる速さや量を調整することができます。
例えば、音を「ウォーアーウォーアーウォーアー」のようにすることもできれば、「ワオワオワオ」のようにすることもできます。
スポンサードサーチ
LFOを理解しよう
さて、ここまでで学んだことを一通り整理すると、このようになります。
オシレーターが音を作り、フィルターとアンプを通って音量や音色を変更し、エンベロープを使ってさらに細かい調整を行いながら、鍵盤を押して音を鳴らし、私たちの耳に届きます。
ここまで理解できているだけでも十分なのですが、あと一つだけ覚えていてほしいことがあります。
それが「LFO」です。
ハイフリークエンシーオシレーターとローフリークエンシーオシレーター
ハイフリークエンシーオシレーター(High Frequency Oscillator)は高速で振動するので、基本的には人間の耳にもしっかり音が聞こえます。
「ボックスの中にいる小人(オシレーター)」の音はまさにこれに当てはまります。
対してローフリークエンシーオシレーター(High Frequency Oscillator)はものすごくゆっくり振動するのですが、1秒間に1回動くほどの遅さなので、もはや人間の耳では認知できないほどの音です。
LFOとは?
ではこのローフリークエンシーオシレーター(LFO)をどのように活用するかと言うと、これをフィルターやアンプに使います。
例えばフィルターに使った場合、「赤色から徐々に青色にしていき、また赤色に戻っていく」のような変化をつけることができます。
もちろん、「微妙に青色っぽくしてからまた純粋な赤色にしていく」などの小さな変化をつけることも可能です。
よく使われるLFO
LFOがよく使われるのは、フィルターにある「Cutoff」のパラメーターです。
前述の通り、フィルターに対してエンベロープを使うことができますが、LFOも使うことができます。
LFOの場合、特定の動きを繰り返し行うことができるので、鍵盤を押し続けている間はずっとLFOの効果をつけることができます。
声で実演した例↓
SerumでLFOをCutoffに適用した例がこちら。
MIDIでは全音符(4拍分)を打ち込んでいますが、LFOが16分音符刻みなので、自動で16分音符を連打したような音になります。
明らかに人工的に作った音は時につまらなく感じてしまうこともありますが、LFOを使ってほんの少し変化を加える程度であれば、とてもおもしろい音にすることも可能です。
シンセの「減算方式」まとめ
ここまで理解したあなたは、もう「減算方式のエキスパート」です!
どのハードウェアでもソフトウェアでも、今回学んだ名前や機能がたくさん出てきますので、ぜひ一つ一つのパラメーターを活かして音作りをしてみてください。
当サイトでは「どんなシンセも使いこなせるようになるためのチュートリアル」をご紹介していますので、次はぜひこちらにお進みください↓
-
前の記事
「アーティストのメンタルヘルス問題」~人気音楽プロデューサーが音楽を辞めた理由~ 2023.06.13
-
次の記事
【DTM】全てのシンセを使いこなすための「シンセの使い方講座 -基礎編-」 2023.06.17