用語解説

【DTM用語】インターサンプルピークとは?

「インターサンプルピーク」って何?DTMをやってるときは気にする必要あるの?

このような疑問にお答えする内容で「インターサンプルピーク」についてまとめました。

特にマスタリングにおいて重要なパラメータとなるのですが、これはいったい何なのでしょうか?

インターサンプルピーク(ISP)とは?

インターサンプルピークを簡単に説明すると、このようになります。

・デジタルオーディオをアナログオーディオに変換するときに生じる歪み
・DAW上ではクリッピングしていないのに、データを四捨五入したときの誤差で、アナログオーディオ変換後にクリッピングしまうことがある
・インターサンプルピークを避けるには、マスター(Stereo Out)に0.3~1dB程度のヘッドルームを設けるのがよい

それでは、具体的に解説していきます。

マスタリングで起こる、ある1つの問題

マスタリングでは、リミッターをかけてトラックの音量がが0dBを超えないように処理することが多いでしょう。

しかし、DAW側で0.0dBFSを上回らず「クリッピングしていません」と判断しても、メーター上でそのように表示していても、楽曲をmp3にバウンスしてアナログオーディオに変換したときに音が歪んでしまうことがあります。

これが「インターサンプルピーク」です。

今回は、ISP(インターサンプルピーク)と呼ばれるこの問題の解決方法をご紹介します。

DAW上ではクリッピングしていないのにバウンスするとしている!?

Stereo Out(マスター)の音量メーターのPeakが0dBになるようにマスタリングしている人も多いでしょう。

つまりリミッターを最大限使って、音圧を上げながらも音量が0.0dBFSを超えないようにしている状態です。

しかし、そのトラックをアナライザーにかけるとクリッピングしていることがあります。

"DAW上ではクリッピングしていないのにも関わらず"です。

インターサンプルピークはなぜ起こる?

DAWで作った楽曲をmp3へ変換するとき、「復元フィルター」と呼ばれるフィルターが使われ、ステップ状(階段状)のデジタルオーディオ信号へと四捨五入します。

曲線の方が情報量が多いので音楽のデータ量も多くなりますが、階段上にカクカクにすれば情報量が省けるので、音楽のデータ量も少なくなります。

この四捨五入によりオーディオファイルのサイズが小さくなる恩恵を受けますが、一方でオーディオレベルにし変化が起こってしまいます。

実際の例を見て見ましょう。こちらがアナログ信号における変換の様子です。


画像:記事より

グレーの箱がデジタル化されたステップ状のサンプルで、緑・赤の曲線が元のアナログ信号です。

DAWで音を聞いているとき、僕らはデジタルオーディオを聞いています。

表を見ると、デジタルオーディオ(グレーの箱)は0dB以下で収まっていることがわかります。

デジタルからアナログへ変換処理をしているときは、オーディオ信号はステップ状のサンプルから、なめらかな波形へと変換されます。

なめらかな波形のTrue Peakは赤線の通りクリッピングしてしまっていますが、残念ながらあなたが使うリミッターや音量メーターはこれを検知しないのです。

そしてオーディオの曲線は0dBを上回ってしまい、音が歪みます。
(上の図の赤い部分)

つまり通常通りDAWで楽曲を作っている限り、自分の曲がmp3に変換されたときにインターサンプルピークが起こるかどうかはわからないのです。

なぜ「インターサンプルピーク」という名前になっている?


画像:記事より

上記の画像を見ると、クリッピングが起こっているインターサンプルピークの部分は、2箇所のデジタルサンプル(箱2つ分)の間で発生しています。

このクリッピング=超過したピーク部分がデジタルサンプルの間で作られるため、これをインターサンプルピーク(Inter-Sample-Peak)と呼びます。

ストリーミングサービスで配信するときも注意が必要

みなさんが楽曲をインターネット上に公開するときは、ストリーミングサービス(YouTube、Apple Music、Spotifyなど)にトラックを提出するでしょう。

このとき、出来る限り高音質で楽曲を配信するためにwavやaiffなどで提出することが一般的ですが、ストリーミングサービス側はデータ量削減のため、配信時はmp3など、よりデータ量の小さいフォーマットに変換します。

つまり、wavやaiffで書き出した後にクリッピングしていなかったとしても、ストリーミングサービス側がmp3などに変換したときにインターサンプルピークが発生してしまう可能性があります。

そのため、「自分で楽曲をmp3に変換するかどうか」だけでなく、「自分の楽曲が最終的にmp3に変換される可能性があるかどうか」について考える必要があります。

関連記事

インターサンプルピークを避けるには?

インターサンプルピークを避ける最も簡単な方法は、ヘッドルーム(余白)を設けることです。

ヘッドルームとは、トラックの音量からクリッピングする音量までの間(余白)のことです。
※トラックの最大音量が-5dBFSだった場合、ヘッドルームは5dBとなります

例えばマスター(Stereo Out)の一番最後に使っているリミッターの音量(Output)を下げたり、Masterの音量フェーダーを少しだけ下げたりする、などです。

多くのマスタリングエンジニアは、0.3~1dBのヘッドルームを設けているため、これを基準にするとよいでしょう。

インターサンプルピークにおけるトラブルはかろうじて聞こえる程度のものであり、あまり気にする必要はありません。

しかし、0dBまで=限界値までリミッティングすることで歪みが起こってしまっては、最高の状態で楽曲を聞いてもらうことができません。

自分のトラックを歪ませたくないのであれば、シンプルにヘッドルームを設けましょう。

特にボーカルやピアノなど、歪ませたくないパートにおいては非常に重要になります。

関連記事

インターサンプルピークをチェックするのにおすすめのツール

インターサンプルピークをチェックするのにおすすめのツールはTrue Peak Meteringと呼ばれ、これらのプラグインがあります。

Waves WLM Plus Loudness Meterについては、単体で買うよりもバンドルで買った方がお得です。

他にもプロ御用達のプラグインがたくさん入っていますので、「Waves Platinum」か「Waves Diamond」を買うことをおすすめします。

Waves社「Platinum」を購入する(サウンドハウス) Waves社「Diamond」を購入する(サウンドハウス)

iZotope社「Ozone」もマスタリングに最適のツールがそろっているため、これ1つあればマスタリングの準備は問題ありません!
(初心者の方には「Elements」、中級者の方には「Standard」、上級者の方には「Advanced」がおすすめです。)

関連記事

以上で解説は終了です。

当サイトでは他にも音楽用語の解説をしていますので、ぜひこちらもご覧ください↓

ストリーミングサービスに特化したマスタリング方法はこちらで解説しています↓

参考:https://www.productionmusiclive.com/blogs/news/mastering-tip-what-are-inter-sample-peaks-why-they-matter


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