インド音楽の特徴と曲の作り方【ターラ・リズム編】
今回はこのような疑問にお答えする内容です。
今回は、インド音楽におけるリズムと「ターラ」について解説していきます。
Part2: インド音楽のスケールの基本「ラーガ(Raga)」
Part3: インド音楽のリズムの基本「ターラ(Tala)」
Part4: インド音楽のポリリズムテクニック「ティハイ(Tihai)」
Part5: インド音楽で多用される「装飾音」
Part6: インド音楽で使われる楽器、奏法、楽曲構成、特徴的な奏法「ドローン(Drone)」
このシリーズを読めば「インドっぽい!」と思わせられる音楽を作る方法が学べますので、ぜひ最後までご覧ください!
※インドは地域によって言葉のスペルが異なることがあります。
たとえば「ラーガ」は「Raag」「Raga」「Raaga」など、複数の書き方があります。
スポンサードサーチ
ターラ(Tala)とは?
ターラは、インド音楽におけるリズムの基本パターン・フレーズのことです。
ターラは、サンスクリット語で「拍手(Clap)」という意味があります。
ターラは非常にさまざまな種類がありますが、それぞれのターラには名前があり、1サイクルの中にいくつ音が入っているかで違いが出てきます。
ティーンターラ(Teen Tala)は16個
ジャープタール(Jhap Tala)は10個
ケルバターラ(Kehrva Tala)は8個
それぞれのターラは独自の「形」を持っており、どこに音を入れているか・入れていないかで特徴が変わっています。
また、どこにアクセントを入れるか、どこを弱めに演奏するかなども指定されており、これが独自のフレーズを生み出しています。
ケルバターラ(Kehrva Tala)の例
まず、とてもよく知られているケルバターラの例を見てみましょう。
ケルバターラでは1サイクルに音が8つ入っていて、このようなフレージングになります↓(1:22~1:37)
「1,2,3,4,5,6,7,8」と数えられるので、日本人でも比較的ノリやすいフレーズです。
ルーパクターラ(Rupak Tala)の例
次はルーパクターラの例です。
こちらは1サイクルに7つ音を入れるパターンなので、カウントは「1,2,3,4,5,6,7」となります↓(2:23~2:42)
「7拍子」のような感じがしてノリづらいと思いきや、しっかりアクセントとそうでないところがはっきりしているので、どのようなフレージングなのかをすぐ飲み込むことができます。
コンサートなどでは演奏者があらかじめリスナーに「何のターラを使うのか」を伝えるので、その効果もあり、リスナーはさらに音楽を飲み込みやすくなります。
よくある疑問「なんでインドの音楽のリズムってそんなに複雑なの?」
Keda Music Ltdの解説者曰く、「インド音楽ではなぜそんなに複雑なリズムパターンを使うのか?」と疑問に思っている方が多いそうです。
しかしこれは実は間違いで、インド音楽に比べたら、ジャズの方がよっぽど複雑なリズムパターンを使っているでしょう。
まず、インド音楽のターラは「どこがスタートの拍なのか」を明確にして、シンプルなリズムのサイクルを演奏し続けます。
そして、演奏者は独自にそのリズムを複雑化させているので、実はジャズほど複雑ではないのです。
スポンサードサーチ
ティハイとダウンビート
インド音楽の曲の最後は、クライマックスに向けてより複雑なリズムを使っていきます。
おそらく、これを聞いて「インドの音楽って何だか複雑だな」と思ってしまうのでしょう。
これは「ティハイ(Tihai)」と言い、楽曲を盛り上げるために最初のターラのリズムから抜け出して演奏する部分のことです(ティハイについては次回詳しく解説します)。
ティハイを演奏している間は、一時はシンプルなターラから脱したリズムになりますが、また元のパターンのダウンビート部分に戻るので、グルーヴ感はある程度保てます。
そのため、ダウンビートはインド音楽ではとても重要なのです。
ちなみにKeda Music Ltdの解説者は、インド音楽のコンサート中で、プレイヤーのティハイがあまりにも複雑でダウンビートを見失ったら、他のリスナーを見て、その人たちがリズムを刻んでいるのを見て、ダウンビートを確認することもあるそうです。
ターラを学ぶ難しさ
タブラ(インドの打楽器)を練習したい人などは、ターラを学ぶ必要が出てくるでしょう。
しかし、実はターラは口伝で学ぶことが多く、独自の「記憶術」で覚えるのが一般的なのです。
この「ターラを覚えるための記憶術」ではリズムを言葉にして覚えるのですが、これがかなり外国語っぽいので、覚えるのが大変です。
インド人でない場合は、発音するのすら難しいこともあります。
ターラの覚え方の例:ルーパクターラの場合(5:40~5:45)
さて、みなさんはこれを言葉でどう書きますか?
ご自身の母国語によっては、なかなか書き起こすのが難しいかもしれません。
ターラを覚えるために使われる「ボール(Bol)」
そこで使えるのが、ターラを文字で書きやすくしたシステム「ボール(Bol)です。
Bolはヒンディー語で「語彙」という意味があり、ボールそれぞれにどんな音かを表す意味が含まれています。
画像:https://en.wikipedia.org/wiki/Tala_(music)
例えば上の画像にある「Ka」は、バヤン(Bayan、インドの打楽器)を叩いた時に出る乾いた音を表しており、「Ga」はバヤンの中央のリングを叩いた時に出る響く音を表しています。
このようにしてボールを使いながら、ターラを覚えていきます。
次はインド音楽のポリリズムテクニック「ティハイ(Tihai)」について詳しく解説↓
-
前の記事
インド音楽の特徴と曲の作り方【ラーガ・タート・スケール編】 2020.10.31
-
次の記事
インド音楽の特徴と曲の作り方【ティハイ編】 2020.11.02