【映画音楽】ジョン・ウィリアムズの作曲方法「転調のコツ3つ」
- 2025.01.11
- コード進行
今回は、Ryan Leachが解説する「ジョン・ウィリアムズのような転調をする方法」をまとめました。
映画音楽の巨匠ジョン・ウィリアムズは、ハリーポッターやスターウォーズなど、世界的ヒット作品の音楽を手がけている作曲家です。
この記事では、そんな彼が作曲で使っている転調の方法を3つご紹介します。
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映画音楽で使えるジョン・ウィリアムズの転調方法3つ
今回ご紹介する転調方法は、こちらの3つです。
2.メロディックウォーク
3.借用コードと偽終止のコンビネーション
1から順にカンタンでシンプルな方法になりますので、初心者の方は1から始めてみてください。
それでは、1つずつ解説していきます。
ジョン・ウィリアムズの転調方法1.ダイレクトパス
ジョン・ウィリアムズの転調方法1つ目は「ダイレクトパス(Direct Path)」です。
通常、転調では「転調前と転調後のキーに共通しているコードを見つけ、ピボットコードとして転調直前に使う」などをして、自然に転調したように聞かせることが多いでしょう。
しかし、彼は意外にもそのような「型」は無視して、転調前と転調後で使いたいコードをそのままダイレクトにつなげていることがあります。
例えば「ハリーポッターと賢者の石」より「ハリーの不思議な世界」では、DbメジャーキーからCメジャーキーに転調する場面があります。
この曲では「ダイレクトパス」が使われていて、予兆もなく突然転調します。
この楽曲では、転調に加えてテンポや演奏のニュアンスも変わっているため、一気に場面転換したような印象になっています。
「気づかないうちに転調していた」という自然な転調ではなく、突然転調しているのがポイントです。
楽曲のフルバージョンはこちら↓
「スター・ウォーズ / フォースの覚醒」の「レイのテーマ」では、BbマイナーキーからBマイナーキーに転調する場面があります。
楽曲のフルバージョンはこちら↓
転調方法「ダイレクトパス」のメリット
前後の自然なつながりを意識せずに転調する「ダイレクトパス」は、シンプルに「楽に転調できる」というのが大きなメリットです。
また、リスナーにとっては予兆もなく急に場面が大きく変わったように聞こえるので、驚きを与えやすいのもメリットになります。
そのため、映画音楽では急に場面転換したり、驚きの出来事が起こったときなどに使えます。
転調初心者は「ダイレクトパス+マイナー3rd上」がおすすめ
「音楽理論はあまり分からないけど転調はやってみたい」という方は、このダイレクトパスを使い、元のキーよりマイナー3rd上(半音3個上)のキーに転調してみるのがおすすめです。
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ジョン・ウィリアムズの転調方法2.メロディックウォーク
ジョン・ウィリアムズの転調方法2つ目は「メロディックウォーク(Melodic Walk)」です。
メロディックウォークは、スケールに沿ってメロディーを演奏し、最後は新しいキーのコードを演奏するというテクニックです。
※スケールではなくアルペジオで演奏することもあります
例えばAマイナーキーからCマイナーキーへ転調するときは、「A→B→C」とスケールに沿ってメロディーを演奏します。
※一歩ずつ歩くようにスケールに沿って演奏するため「メロディックウォーク」と呼んでいます
「転調」という言葉を聞くと「コードをスムーズに変える・つなげる」というイメージが浮かぶ人が多いでしょう。
しかし、ジョン・ウィリアムズは「コード」ではなく「メロディー」をスムーズにつなげて転調することが多いです。
※試しに彼の楽曲を3曲分析すると、メロディックウォークを8つ発見できるぐらい、彼はこのテクニックを多用しています。
先ほどご紹介した「ハリーポッターと賢者の石」より「ハリーの不思議な世界」では、AマイナーキーからCマイナーキーに転調します。
このとき、メロディーは「A→B→C」と演奏することで、自然にCマイナーキーのトニック(C)に着地します。
コードだけ聞くと少し大胆な転調に聞こえますが、メロディーのつながりが自然なので、自然に転調させることができるのです。
メロディックウォークにはオクタトニックスケールを使うのも効果的
メロディックウォークを使うときは、通常のスケールではなく、少し変わったスケールにしてみてもよいでしょう。
※上記画像の「W」は全音(半音2つ分)、Hは半音(半音1つ分)の間隔が空いていることを示しています
例えば7音ではなく8音で構成される「オクタトニックスケール」や「ディミニッシュスケール」にすることで、転調前に一味違ったサウンドを作ることができます。
特にオクタトニックスケールは不安定な印象を与えるので、場面転換前に緊張感や不安感を出したい場合は効果的です。
「スター・ウォーズ / フォースの覚醒」より「レイのテーマ」では、BマイナーキーからDマイナーキーに転調する場面があり、ここでオクタトニックスケールを使ったメロディックウォークが使われています。
この例でおもしろいのは、本来BオクタトニックスケールにはDが含まれていないのにも関わらず、最後はDでキレイに着地している点です。
「ただスケールを駆け上がっている」というイメージではなく、Dがしっかりと「目的地」として感じられるようになっています。
4小節かけてメロディックウォーク+転調するパターン
「ハリー・ポッターと秘密の部屋」より「不死鳥フォークス」では、4小節かけてメロディックウォークが行われ、AメジャーキーからCメジャーキーに転調しています。
オクタトニックスケールにCは入っていませんが、最後は次の小節の1拍目でスッキリとCに着地しています。
ジョン・ウィリアムズの転調方法3.借用コードと偽終止のコンビネーション
ジョン・ウィリアムズの転調方法3つ目は「借用コードと偽終止のコンビネーション」です。
借用コードと偽終止を組み合わせて使い、自然でありながらダイナミックな転調をする方法です。
例えば「ハリーポッターと賢者の石」より「ハリーの不思議な世界」では、CメジャーキーからFメジャーキーに転調します。
この譜面をピアノで演奏してみると、最後のコード進行が「B→F→E」になっており、とても不思議な響きになっていることがわかりやすくなります。
CメジャーキーからFメジャーキーへの転調ですので、CメジャーコードとFメジャーコードは自然に聞こえます。
しかし、BメジャーコードやE7コードなどCメジャーキーのダイアトニックコードにはないコードが使われているため、とてもファンタジーなサウンドになっています。
このファンタジーなサウンドと楽曲展開(転調)を両立させる方法として、ここでは借用コードと偽終止が両方使われています。
「借用コード」で驚きの展開を作る
最後のE7コードは、Cメジャーコードのレラティブマイナーキー(=Aマイナーキー)からの借用コードです。
借用コードとは「別のキーから借りてきたコード」のことで、元のキーのダイアトニックコードにはないコードを一時的に使うテクニックです。
Aマイナーキーのベーシックなコード進行「I-IV-V-I」は、このような楽譜になります。
「ハリーの不思議な世界」では、CメジャーキーのダイアトニックコードにはないV=E7を「レラティブマイナーキーからの借用コード」として使っています。
ダイアトニックコードにないコードを使うので、それまでとは一味違う雰囲気にすることができます。
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「偽終止」で驚きの展開を作る
この楽曲では、偽終止(Deceptive Cadence)が使われています。
偽終止とは、コードの最後はトニック( I )に行きたくなるところを、あえてドミナント(V)やIの代理コードである「vi」に行くなど、トニック以外のコードで終わるコード進行です。
「終わると思ったら終わらなかった…この先いったいどうなるんだろう?」という裏切りや期待を持たせることができます。
I – V – vi
C – G7 – Am
i – V – VI
Am – E7 – F
「ハリーの不思議な世界」では、レラティブマイナーキー(Aマイナーキー)のVコードである「E7」を借用コードとして使っています。
レラティブマイナーキーではありますが、Vコード(ドミナントコード)ですので、このコードが使われると「トニックに行きたい」という気持ちにさせることができます。
※例えば「E7 – Am」など
しかし、この曲ではE7の次はFに行きますので、Aマイナーキー視点で考えると偽終止になります(Iではなくviで終止)。
加えて「E7 – F」という流れは半音移動で、とても自然なつながりに聞こえます。
さらに、Fコードは転調後のFメジャーキーのトニック(I)ですので、新しい場面のスタートにはピッタリです。
そしてさらに、CメジャーキーではFメジャーコードはダイアトニックコードにありますので(IV)、自然に使うことができます。

つまり「ハリーの不思議な世界」では偽終止と借用コードを両方使い、あらゆる要素を用いて自然かつダイナミックな転調をしているのです。
偽終止で予想もしないコードを使うコツ
偽終止で予想もしないコードを使うコツの1つとしてレラティブキーのドミナントコード(V)を使う方法があります。
例えばCメジャーキーの楽曲の場合、レラティブキーはAマイナーキーになりますので、Aマイナーキーのドミナントコード=E7をコード進行の最後に使います。
普通は「C – F – G7 – C」などトニック(C)で着地したくなりますが、「C – F – G7 – E7」とすることで、この先の展開が見えないようなコード進行になります。
転調のついでにセカンダリードミナントも使う
「転調のついでにセカンダリードミナントも使う」というのも、転調テクニックの1つです。
例えばCメジャーキーからFメジャーキーに転調するとき、転調の直前にセカンダリードミナントのC7を使って「C7→F」と進行し、Fメジャーキーに転調するのもよいでしょう。
つまり、「転調のついでにセカンダリードミナントも使う」もしくは「セカンダリードミナントを使って転調する」ということができます。
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「ハリーの不思議な世界」で使われている作曲テクニックまとめ
それでは、「ハリーの不思議な世界」で使われている作曲テクニックと楽曲の流れをまとめてみましょう。
CやFなどを使ってスムーズに進行
↓
Cメジャーキーのダイアトニックコードにはない「B」を混ぜる
「F-B-F」の進行でファンタジーな雰囲気が増す
↓
CメジャーキーのレラティブマイナーキーであるAマイナーキーからV=E7を借用
この借用コードのおかげで、不思議な雰囲気が作れる
E7は次のFと半音違いなので、つながりがスムーズ
E7はレラティブマイナーキーのV=ドミナントなので、次はトニック(I)に行きたくなる
↓
Fに着地、Fメジャーキーへ転調
FはCメジャーキーのダイアトニックコードにあるので、違和感が少ない
レラティブマイナーキー(Aマイナーキー)においてFはviにあたるので「E7→F」は「V-vi」となり偽終止にも聞こえる
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映画音楽で使えるジョン・ウィリアムズの転調方法3つ
以上が「映画音楽で使えるジョン・ウィリアムズの転調方法3つ」でした。
何も考えず、行きたいコードに直接進行する
テンポも同時に変更すると、一気に場面転換できる
コードではなくメロディーを自然につなげて転調する
オクタトニックスケールなど普段と違うスケールの活用も◎
レラティブキーからの借用コードを使い、予想できない進行にする
とあるキーにとっては偽終止、とあるキーにとってはドミナント(V)にする
転調のついでにセカンダリードミナントを使用するのも◎
当サイトでは他にもコード進行や作曲のバリエーションを増やすテクニックについてまとめていますので、ぜひこちらもご覧ください↓
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