【DTM】音圧を上げるカギになる「ミックスでマスキングを解消するコツ」
- 2023.01.09
- 2024.10.20
- ミキシングのコツ
今回は、Sage Audioによる「マスキングを解消する方法」をまとめました。
「そもそもマスキングって何?」という方、ミックスがうまくできなくて悩んでいる方、バランスのいい曲を作って音圧をアップさせたい方には必見の内容です!
※記事内の画像は全て動画内から引用しています
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マスキングとは?
マスキングとは、「ある音が、別の音をカバーしてしまうこと」です。
例えば500Hzの音をピーッと鳴らすと、この音によって他の音が聞こえにくくなります↓
どの音域が一番マスキングを引き起こしやすい?
こちらのグラフをご覧ください。
横軸は音の高さを表し(左が低く、右が高い)、縦軸は音の大きさを表しています(下が小さく、上が大きい)。
例えばサイン波で250Hzの音を40dBの音量で鳴らすと、500Hzの音を30dBほどマスキングすることがわかります。
同様に、サイン波で250Hzの音を70dBの音量で鳴らすと、2kHzの音を30dBほどマスキングします。
このグラフを見る通り、他の周波数の音もまた別の周波数の音をマスキングしますが、250Hzの音が最も大きくマスキングをするということがわかります。
言い換えると、マスキング問題においては250Hzの音域が最も気を付けなければいけない音域だと言えるでしょう。
それではここで、先ほどは500Hzの音でお聞きいただきましたが、今度は250Hzの音でマスキングの効果を聞いていただきましょう。
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選択する情報・選択されない情報
心理学で有名な「カクテルパーティー効果(現象)」からわかる通り、人間の脳はさまざまな情報を選択的に処理しています。
(パーティーなどの人混みの中にいても、自分に興味のある会話や自分の名前はしっかり聞き取れる)
これは音楽におけるマスキングにも似ていて、楽器(音)の数が多いほど、私たちがしっかり知覚できる情報は少なくなります(ある情報を選択する分、選択しない・できない情報も出てくる)。
逆に使う楽器(音)の数が少なければ、楽器同士がぶつかり合わないので、マスキングも回避することができます。
それでは試しに、楽器を1種類だけ鳴らした時と、4種類鳴らした時で聞こえ方がどのように変わるかをチェックしてみましょう。
EQを使ってマスキングを回避する方法
このマスキングは、EQを使ってかんたんに回避することができます。
例えば250Hz付近の音を3dB(あるいはそれ以上)減らしてみる、などです。
これに加えて、高音域を増やしてみるのもよいでしょう。
それでは、このEQを使ったときの音を聞いてみましょう。
高音域の聞こえ方にも注目してみてください。
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サチュレーションはマスキングを解決するor悪化させる?
サチュレーションは、マスキングを解消することもできれば、悪化させることもできるツールです。
Fabfilter社「Saturn2」を使って、サチュレーションの例を見てみましょう。
上記の画像のうち、左側に最も大きく音が出ている部分(低音域)があります。
このとなり(マウスポインタがある部分)に、小さい山ができています。
これは、最も大きな山の音域(基音)の倍音成分で、第二倍音と呼ばれる音です。
この倍音成分は、基音を強化することもできますが、同時に高音域(画面右側にある音)に対してマスキングを起こす原因にもなります。
しかし高音域にサチュレーションをかければ、マスキングを悪化させることなく、むしろクリアなサウンドを作ることができます。
それでは、低音域にサチュレーションをかけた時と、高音域にサチュレーションをかけた時を比較してみましょう。
コンプレッサーを使ってマスキングを回避する方法

コンプレッサーは、音の大きな部分を抑えることで、音が小さい部分との落差を縮める効果があります。
しかし低音域だけにコンプレッサーをかけると、出過ぎた低音域が抑えられるため、EQと同じようにマスキングを解消することができます。
それではiZotope社「Ozone」に搭載されているマルチバンドコンプレッサーを使い、比較して聞いてみましょう。
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リニアフェーズを使ってマスキングを回避する方法
上記画像のようにパラレルプロセスを行っている場合は、「リニアフェーズ(Linear Phase)」の設定を使うとマスキングを解消できることがあります。
パラレルプロセス:エフェクトをかけた音と、エフェクトをかけていない音を混ぜる手法。「パラレルコンプ」など。
例えばFabfilter社「Pro-Q3」の画面下には、「Linear Phase」の設定ボタンがあります。
例えば、パラレルEQを使ってEQを使った音と使っていない音を混ぜた時、この2つの音の間で一時的にマスキングが起こることがあります。
これはEQを使ったことで位相のズレが発生し、そのズレによって2つの音の間で「位相の打ち消し(Phase Cancellation)」が発生し、音が小さくなってしまう(なくなってしまう)現象です。
ここでLinear Phaseを使うと、この位相の打ち消しが起こらないようにディレイをかけることができます。
試しに、Linear Phaseを使ったときの音とOFFにした時の音を比較して聞いてみましょう。
アップワードコンプレッサーを使ってマスキングを回避する方法
アップワードコンプレッサー(Upward Compressor)と呼ばれるコンプレッサーを使ったマスキング解消方法もあります。
通常のコンプレッサーが「設定した基準よりも音が大きくなった音を抑えて、音が小さいところと大きいところの差を縮める」のに対して、このタイプのコンプレッサーは「設定した基準よりも音が小さい音の音量を上げて、音が小さいところと大きいところの差を縮める」という機能があります。
有名な製品では、Waves社「MV2」があります。
※購入する場合は、MV2を含めて多数のプラグインが同梱されている「Waves Gold」や「Waves Platinum」をおすすめします
通常のコンプレッサーのように音が大きいところを抑える「HIGH LEVEL」と、アップワードコンプレッサーとして小さい音を持ち上げる「LOW LEVEL」のパラメーターがあります。
上記の画像のように、LOW LEVELの数値を上げると音が小さい部分の音量だけを上げることができます。
先ほどのように高音域だけを残したパラレルEQを使うとき、EQの後にMV2を使ってこのような処理を行うと高音域だけにこの処理が行えるため、マスキングしにくくなります。
それでは、実際に音を聞いてみましょう。
オーバーサンプリングが引き起こすマスキング問題
オーバーサンプリングは、本来必要なサンプリングレートよりも高いサンプリングレートでオーディオを処理することです。
処理する情報量が増えるため音質の向上が期待できますが、この過程でエイリアスディストーション(折り返しノイズ)が発生することがあります。
特に高音域にノイズが発生しますが、このノイズによって高音域にマスキングが起こってしまうことがあります。
それでは、Fabfilter社「Saturn2」を使ってエイリアスディストーションを起こした音を聞いてみましょう(キツい高音域の音が出るので注意)。
GULLFOSS EQを使ってマスキングを回避する方法
前述でEQを使ったマスキングをご紹介しましたが、GULLFOSS EQを使うのが最も簡単なEQによるマスキング回避方法でしょう。
このEQでは、マスキングを回避するために自動でEQが動いてくれます。
主に設定するのは「RECOVER」と「TAME」の2つのパラメーターだけで、どれぐらい音をならす(抑える)かを決めれば設定完了です。
それでは実際に、GULLFOSS EQを使った音を聞いてみましょう。
その他マスキングを解消するコツ
今回の”音圧を上げるカギになる「ミックスでマスキングを解消するコツ」はこれで終了です。
当サイトでは他にもマスキングを解消する方法やミックスのテクニックを多数ご紹介していますので、ぜひこちらもご覧ください↓
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