【作曲】長くても飽きない&繰り返し感のない曲の作り方 -5つのコツ-

【作曲】長くても飽きない&繰り返し感のない曲の作り方 -5つのコツ-

今回は、Abstrakt Music Labが解説する「Keinemusikがヒットした5つの理由 -長尺でも飽きない楽曲を作る方法-」をまとめました。

Keinemusik(カイネムジーク)は、アフロハウスで人気の「Ramba」「&ME」「Adam Port」などから結成されている音楽グループです。

彼らの楽曲は5~8分間と少し長めの尺で作られていることが多いのですが、どれもずっと聞いていて心地よく、長時間でも飽きない楽曲ばかりです。

そこで今回は、なぜ彼らの楽曲は長尺なのに飽きずに楽しめる音楽なのか、楽興を分析しながら作曲テクニックをご紹介していきます。

FIVE reasons why KEINEMUSIK became so HUGE

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Keinemusikの楽曲を聞いてみよう

はじめに、Keinemusik(カイネムジーク)に所属しているアーティストの楽曲をご紹介します。
※ジャンルで言うと「アフロハウス」になります

Thandaza
Keinemusik (Rampa, Adam Port, &ME) – Muyè
&ME, Black Coffee – The Rapture Pt.III

どれも5分以上で比較的尺の長い楽曲ですが、その時間を忘れるほど没頭できる音楽です。

それではここからは、彼らが使っている作曲テクニックについて具体的な解説をしていきます。

長くても飽きない&繰り返し感のない曲の作り方 -5つのコツ-

今回ご紹介する「長くても飽きない&繰り返し感のない曲を作るコツ」は、こちらの5つです。

1.グルーヴを最重要視する
2.複雑な楽曲にしない
3.ベースでグルーヴの強度をコントロールする
4.いいフック(Hook)を作る
5.複数の「耳に残る要素」を作る

それでは、1つずつ解説していきます。

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長尺&飽きない曲の作り方1.グルーヴを最重要視する

長尺&飽きない曲の作り方1つ目は「グルーヴを最重要視する」です。

尺が長いのに飽きない曲に必要なのは、アグレッシブでドラマティックな音楽でもなく、複雑なフレーズでもなく、「いいグルーヴ」です。

街中でふと楽曲が耳に入ったときに、思わず足を止めて耳を傾けるようなグルーヴが必要なのです。

例えば、&MEによるリミックス「IMPOSSIBLE」をお聞きください↓(0:43~0:51)

FIVE reasons why KEINEMUSIK became so HUGE

このセクションでは、基本的にはキック(バスドラム)とパーカッションが目立ち、あとは後ろに少しサポート系楽器がいる構成です。

それでは、この曲のドロップ(一番盛り上がる部分)を聞いてみましょう↓(0:59~1:06)

FIVE reasons why KEINEMUSIK became so HUGE

先ほどのセクションにはなかったボーカルやアルペジオの楽器が増えているので、先ほどと比べてとても盛り上がっています。

次は、別のリミックス楽曲「MORE LOVE」を聞いてみましょう↓(1:18~1:25)

FIVE reasons why KEINEMUSIK became so HUGE

こちらも、「キック+パーカッション」がメインで、ピアノなどのサポート系楽器は後ろで微かに鳴っているような構成です。

しかし、2回目のドロップはこれぐらい発展していきます↓(1:33~1:40)

FIVE reasons why KEINEMUSIK became so HUGE

メロディーを担当するボーカルに加えて、「フゥッ!」というボーカルも入り、非常に盛り上がっています。

しかし、基本の「キック+パーカッション」のグルーヴは変わっていません。

グルーヴを発展させるコツは「キープ」と「エンハンス」

このようにKeinemusikの楽曲を分析してみると、長尺でも飽きさせないコツは「キープ」と「エンハンス」がキーポイントであることがわかります。

キープ:基本のグルーヴ
エンハンス:基本のグルーヴを補強する要素

楽曲を通して基本のグルーヴは変えずに、エンハンスの要素を織り交ぜながら基本のグルーヴを増強していきます。

例えば、アフロハウスであれば「キック」「シェイカー」「グラスなどのオーガニックなパーカッション」「16分音符を刻むハイハット」「アクセントをつけるためのシェイカー」などを重ねて、基本グルーヴを作ります↓(1:58~2:13)

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ここに、メロディーなどを加えると同じグルーヴの繰り返しでもしっかり楽曲が発展しているように聞こえます。

いいグルーヴには「複雑」と「忙しい」は大敵

尺の長い曲を作ろうとしたり、楽曲を発展させよう・盛り上げようとすると、ついたくさんの要素を付け足そうとしてしまいがちです。

しかし、むやみに音を足してしまうと、リスナーが理解しづらくなるほど楽曲が複雑になったり、ただただ「忙しい」楽曲になってしまいます。

そのため、曲作りの時は「複雑になっていないか」「ただただ忙しい曲になっていないか」を確認しましょう。

長尺&飽きない曲の作り方2.複雑な楽曲にしない

長尺&飽きない曲の作り方2つ目は「複雑な楽曲にしない」です。

6〜7分を超える楽曲になると、何か新しい要素を付け足すことで楽曲に変化を加えようとしてしまいがちです。

すると、長尺であるほど付け足す要素が増えてしまったり、流れに合わない要素を付け加えてしまい、楽曲が複雑になってしまうことが多いです。

しかし、何かを変えないと単なる繰り返しに聞こえてしまいます。

このような時に重要なのは、「1つのループ(8小節)ごとに新しい要素を足す/引く」ことです。

上手な「足し引き」の例

それでは、Keinemusikの楽曲「Champion」のうち、全部で4回あるドロップを聞いてみましょう↓(2:56~3:10)

FIVE reasons why KEINEMUSIK became so HUGE
1回目:基本のグルーヴ
2回目:基本のグルーヴ、パーカッションIN、ギターIN
3回目:基本のグルーヴ、パーカッションOUT、ギターOUT+ボーカルIN
4回目:基本のグルーヴ、パーカッションIN、ギターIN+ボーカル

このように、追加要素としてパーカッション・ギター・ボーカルを使い、それぞれの足すタイミングと引くタイミングを巧みに分けながら、4回の「異なるドロップ」を作っています。

「パーカッシブなブレイク」も有効

楽曲を複雑にしないまま変化を加えたいときに使えるのは、パーカッシブなブレイクを使うことです。

パーカッシブな音は足すと盛り上がることが多いので、グルーヴをさらに強めたいときに使うことが多いでしょう。

しかし「パーカッシブな音だけ」にすると、静かでポッカリ穴が開いたような雰囲気を作り出すこともできます。

例えば、Keinemusikの「Muyè」のセクションをいくつか聞いてみましょう↓(3:31~3:53)

FIVE reasons why KEINEMUSIK became so HUGE

「ポンポン」としたプラック系のパーカッシブが曲を通してずっと続いていることがわかります。

はじめはそのパーカッシブな音が一番目立っており、どこか静かな雰囲気になっています。

しかし楽曲が進むにつれて他の音が入ってくると、「グルーヴ全体の一部」となって他の楽器とブレンドし、楽曲が盛り上がっていきます。

キックやシンセサイザーなどが入っているときはそこまで目立ちませんが、それらの楽器がなくなるとまた存在感が際立ち、静かでミステリアスな雰囲気が戻ってきます。

このようなパーカッシブな音は、単体で使うと存在感が際立ち、静かな雰囲気も作ることができますので、楽曲展開に有効です。

楽曲をフルで聞きたい方はこちら↓

Keinemusik (Rampa, Adam Port, &ME) – Muyè

「パーカッションを抜いて戻す」も有効

「Champion」では、一度パーカッションを抜いて静かな雰囲気にした後、再度パーカッションを足してグルーヴを取り戻すような構成になっています↓(4:07~4:11)

FIVE reasons why KEINEMUSIK became so HUGE

はじめはギターしかありませんでしたが、パーカッションが登場した途端にグルーヴが戻ってきました。

グルーヴを「キープ」するためにずっと鳴らしておくのもよいですし、このように「抜いて戻す」というやり方でもよいでしょう。

ブリッジ(Bridge)を作ってシンプル&曲に新しい展開を加える

ブリッジ(Bridge)を作ることで、楽曲をシンプルにしながらも新しい展開を加えることができます。

ブリッジ(Bridge)は日本語で言うと「Cメロ」にあたる部分で、Aメロ・Bメロ・サビとはまた違う雰囲気になるセクションです。

それでは、Rampaの「Les Gout」を聞いてみましょう↓(4:29~4:46)

FIVE reasons why KEINEMUSIK became so HUGE

ブリッジに入る前、ブリッジの最中、ブリッジの後で使っている要素が異なっていることがわかります。

ブリッジ前:キック、パーカッション、ベース、ボーカル、ギター
ブリッジ中:パーカッション、ベース、ボーカル、ギター(キックOUT)
ブリッジ後:キック、パーカッション、ベース、ギター(キックIN、ボーカルOUT)

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長尺&飽きない曲の作り方3.ベースでグルーヴの強度をコントロールする

長尺&飽きない曲の作り方3つ目は「ベースでグルーヴの強度をコントロールする」です。

楽曲のグルーヴに動き・変化を付けたいときは、「音の強度」も重要です。

特にベースはこの「グルーヴの強度」をコントロールする力が強いので、ベースがどんな動きをしているのかでグルーヴを大きく変えることができます。

例えば、Keinemusikの「Confusion」をお聞きください↓(5:27~5:35)

FIVE reasons why KEINEMUSIK became so HUGE

パーカッションが目立ち、ピアノの低音が少しある程度で、ベースはほとんど聞こえません。

よく耳を澄まして聞くと、「ボーン…ボーン…」と単音が続き、非常に暗く聞こえます。

Keinemusikの「Muyè」でも同様のセクションが見受けられます↓(5:42~5:50)

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しかし、いずれの楽曲もベースが全くないというわけではありません。

ここで、「Champion」を聞いてみましょう↓(5:57~6:03)

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先ほどの2曲よりも、はっきりとベースラインが聞こえ、ウキウキしているように聞こえます。

「Les Gout」でも、同じようなベースラインを聞くことができます↓(6:16~6:23)

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このように、ベースがどのような動きをしていて、どれぐらい前に出てくるかで「グルーヴの密度・強度」が大きく変わっていることがわかります。

やはりベースが目立って楽しい動きである方が、グルーヴを強く感じるでしょう。

逆に言えば、静かで落ち着いた雰囲気にしたいときは、ベースがあまり目立たないようなフレーズにした方がよいでしょう。

ベースは音色(サウンドデザイン)・リズム・音程のバランスを考えよう

しかし、ベースが単音で「ボーン」と鳴っているだけが悪い、ということではありません。

例えば、こちらのAdam Portのリミックス「Your Voice」をお聞きください↓(6:42~6:49)

FIVE reasons why KEINEMUSIK became so HUGE

ベースはコード進行に沿った単音ですが、しっかり耳に入る存在感のあるサウンドです。

音程やリズムの変化は少ないですが、このようにサウンドデザイン=音色によってベースの存在感やグルーヴをコントロールすることができます。

つまり、「単音だからダメ」「リズムが単調だからダメ」ということではなく、音色(サウンドデザイン)・リズム・音程のバランスを考えることが大切です。

長尺&飽きない曲の作り方4.いいフック(Hook)を作る

長尺&飽きない曲の作り方4つ目は「いいフック(Hook)を作る」です。

フック(Hook)とは、一般的には「楽曲で最もキャッチーで盛り上がる部分を指します。

「フックがなければ楽曲はつまらない」と言えるほど、フックは楽曲のメインとなるセクションです。

例えば「Champion」を聞いてみましょう↓(7:34~8:09)

FIVE reasons why KEINEMUSIK became so HUGE

いいグルーヴとノレるベースラインが特徴的ですが、フックが毎回これを繰り返しているだけでは、単調になってしまいます。

そこで、この楽曲ではフックに毎回動きをつけています。

例えば、ドラム&パーカッションの基本グルーヴに対抗するようなギターや、「Champion」と楽曲のタイトルを連呼しているボーカルなどです。

ときどき基本のグルーヴに対抗するような楽器が出てきますが、その楽器のフレーズ自体はシンプルなので、基本のグルーヴを邪魔せず、グルーヴ感を強めるような役割をしています。

例えば「The Day I Met You」という楽曲では2つのシンセサイザーが使われており、1つはベースラインと全く同じ動きを、もう1つは16分音符で細かく刻むことにより、グルーヴがよりリズミカルに聞こえます↓(8:27~8:34)

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「Rapture Pt.III」と「Muyè」では、ピアノがグルーヴ感を強めるはたらきをしています↓(8:48~9:06)

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このように、フックにあるキャッチーで最も重要な要素を崩すことなく、むしろそれらを強めるような動きをする楽器やフレーズを入れることで、フックがより一層魅力的になります。

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長尺&飽きない曲の作り方5.複数の「耳に残る要素」を作る

長尺&飽きない曲の作り方5つ目は「複数の耳に残る要素を作る」です。

英語で「Ear Candy(耳の飴)」とは「キャッチーな音やフレーズ」「耳に心地のよい音」という意味があります。

耳に残る要素を入れることで、楽曲のキャラクターが明確になり、その曲を象徴する「その曲らしさ」が出来上がり、リスナーを楽しませることができます。

例えば、「Muyè」や「Champion」には思わず耳を引くボーカルショットが登場します(9:45~10:03)

FIVE reasons why KEINEMUSIK became so HUGE

適当にボーカルのサンプルを散りばめているようにも思えますが、これらの曲はベースラインがウキウキしているようなグルーヴ感のため、このようにテンションが上がるようなボーカルが入ることで、さらに楽曲を楽しくさせています。

これらの「後ろにいる・遠くにいるボーカル」とは対照的に、「MORE LOVE」ではかなり目立つボーカルショットが登場します↓(10:21~10:30)

FIVE reasons why KEINEMUSIK became so HUGE

「IMPOSSIBLE」でも同様のボーカルショットが登場します↓(10:36~10:44)

FIVE reasons why KEINEMUSIK became so HUGE

「MORE LOVE」と「IMPOSSIBLE」に登場するボーカルショットはかなりデジタルな処理をしているので、非常に強烈な印象を残すインパクトのあるサウンドになっています。

アフロハウスの楽曲のため基本的にはオーガニックな生楽器のサウンドが目立ちますが、逆にこのようなデジタルを感じさせるサウンドを足すことにより、その「オーガニック」と「デジタル」のコントラストが魅力になります。

「Rapture Part III」でも、オーガニックなドラム&パーカッションとピアノサウンドに対し、EDMで使われるようなキツいシンセサイザーが入っています↓(10:57~11:05)

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このようにコントラストを作ることで、対照的な音が耳に入りやすいため、新しいグルーヴ・リズムを感じさせることができるほか、キャッチーなフックを作ることもできます。

同音連打でキャッチーなフレーズを補強する

耳に残る要素を作るのに効果的な手法として、「同音連打」があります。

その名前の通り、同じ音をずっと続けて鳴らす方法です。

例えば「What You Expected」を聞いてみましょう↓(11:20~11:28)

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ずっと伸ばしているのもよいのですが、この楽曲のように「パパパパパ」と連打するとリズミカルになり、耳にも残りやすくなります。

長くても飽きない&繰り返し感のない曲の作り方 -5つのコツ-

以上が「長くても飽きない&繰り返し感のない曲の作るための5つのコツ」でした。

1.グルーヴを最重要視する
「難しい」「複雑」「アグレッシブ」「ドラマティック」よりも「いいグルーヴ」が重要
「キープ」と「エンハンス」をバランスよく取り入れる

2.複雑な楽曲にしない
1つのループ(8小節)ごとに新しい要素を足すor引く
足すだけだと複雑になりやすい
それぞれの要素を異なる組み合わせで使い分けるだけでも効果大

4.ベースでグルーヴの強度をコントロールする
音色(サウンドデザイン)・リズム・音程のバランス

5.いいフック(Hook)を作る
メインとなるフレーズやグルーヴをさらに強める要素を取り入れる

6.複数の「耳に残る要素」を作る
思わず耳を傾けてしまう要素を取り入れる
「オーガニックとデジタル」などのコントラストも◉

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