Wavesのリミッター&マキシマイザー「L1・L2・L3」の違いとそれぞれの使い方を解説【Ultra・Multi・LL・16の意味とは?】
- 2023.12.19
- 2024.09.07
- ソフト・プラグイン・機材
Waves社はDTMerなら誰もが知っているメーカーですが、特にリミッター(Limiter)やマキシマイザー(Maximizer)は数多くのDTMerに愛されています。
このリミッターのうち、頭に「L」がついた「L1」「L2」「L3」のリミッターは、それぞれどのような特徴があり、どのように使い分ければよいのでしょうか?
この記事では、この「Lシリーズ」のそれぞれの特徴と使い方について解説していきます。
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2 Waves社「Lシリーズ」のリミッター/マキシマイザー 一覧
2023年時点で、Waves社がLシリーズとしてリリースしているリミッター/マキシマイザーは以下の7製品です。
L2 Ultramaximizer
L3 Ultramaximizer
L3 Multimaximizer
L3-16 Multimaximizer
L3-LL Multimaximizer
L3-LL Ultramaximizer
この記事では、はじめにこれらを「L1」「L2」「L3」の3種類に分けて解説します。
語尾の「Ultramaximizer」「Multimaximizer」「16」「LL」などの意味については記事の後半で解説しますので、こちらの意味について知りたい方もご安心ください。
はじめに:リミッター(Limiter)とマキシマイザー(Maximizer)とは?
リミッター(Limiter)やマキシマイザー(Maximizer)は、かんたんに言うと音をより大きく聞かせるために使うプラグインです。
リミッターもマキシマイザーもコンプレッサーの一種ですが、コンプレッサーよりも調整できるパラメーターが少なく、より手軽に使えることが多いです。
コンプレッサーと同様、スレッショルド(Threshold)というパラメーターを決め、このスレッショルドを超えた音を潰し(Compress)、大きい音と小さい音の差を縮めます。
さまざまなメーカーからたくさんの種類のリミッターやマキシマイザーが販売されていますが、Waves社では特に「L1」「L2」「L3」が有名なリミッター&マキシマイザーとして愛用されています。
リミッター(Limiter)とマキシマイザー(Maximizer)の違いは?
リミッターとマキシマイザーは、どちらも「音をより大きく聞かせる」「ミックスやマスタリングの時に使うことが多い」という点が共通しています。
この2つの違いは、一言で言うと以下のようになります。
シンプルに大きすぎる音を抑える
大きすぎる音を抑えると同時に、クリッピング(音割れ)しないようにラウドネス(音圧)を限界まで引き上げる
言い換えると、リミッターは「限界値を決め、その限界値を超えた部分を抑える」のに対し、マキシマイザーは「限界値を決め、その限界値にできるだけ近づける」という機能があります。
「リミットする(限界を超えないように制限する)」「マキシマイズする(限界まで引き上げる)」と考えると、わかりやすいでしょう。
Waves社「L1・L2・L3」のデザイン比較
それでは、Waves社「L1・L2・L3」のデザインをまとめて比較してみましょう。
デザインを比較して見てみると、それぞれ使える機能が違うことがわかります。
L1
L2
L3 LL Maximizer
L3 Multimaximizer
※黒地でよりモダンなデザインになっている製品は、アップデートによってデザインが刷新された製品です
デザインだけでなく、調整できるパラメーターもそれぞれ大きく異なることがわかります。
それでは、ここからは各製品の特徴について詳しく解説していきます。
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Waves社「L1 Ultramaximizer」の特徴と使い方
Waves社「L1」シリーズは、Waves社が1980年代に開発したリミッターです。
Waves社が初めて開発したリミッターで、より速く、音の劣化を少なくリミッティングできる点が特徴です。
以前リリースされていた「L1 Limiter」は、マスタリングやバス(Bus)に使うというよりは、個別のトラックに対して使うシーンが多い製品と言えます。
対して、現在販売されている「L1 Ultramaximizer」は、ディザリング機能が使えることもあり、よりマスターバス(Master Bus, Stereo Out)などのマスタリングに適している製品でしょう。
L1のReleaseは他の製品に比べてあまり効果的に動かないと感じるユーザーもいますが、これはL2やL3と比較するとその理由がわかります(後述で詳しく解説)。
以前販売されていた「L1 Limiter」の時はOUTPUTとTHRESHOLDしか調整できませんでしたが、「L1 Ultramazimizer」ではDITHER(ディザリング)とDOMAIN(ドメイン)も変更可能になりました。
ちなみに以前は金色ベースのデザインでしたが、アップデートにより黒地にネオンの文字が光るデザインに変更されました。
Waves社「L2 Ultramaximizer」の特徴と使い方
Waves社「L2 Ultramaximizer」は、L1 Maximizerとは違い、Releaseに対して「ARCモード」が使えるようになったマキシマイザーです(ARCに関しては後述で解説)。
ARCもADRも使うことができるため、今もなおEDMプロデューサーをはじめとする多くのプロに愛されており、マスタリング(Stereo Out)などにもおすすめのプラグインです。
リミッター・マキシマイザーにおける「ARC」とは
リミッター・マキシマイザーにおける「ARC」とは、トランジェントの長さに応じてリリースタイムを調整できる機能のことです。
リミッターやマキシマイザーはラウドネス(音圧)をより高める効果がありますが、この「トランジェントの長さに応じてリリースタイムを調整」することにより、よりキレイに、自然にリミッティング・マキシマイジングすることが可能になります。
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Waves社「L3 シリーズ」の特徴と使い方
Waves社「L3」シリーズは、Waves社のリミッターの中でもより新しく、種類も豊富な製品です。
2023年時点で発売されているL3シリーズは、以下の5つあります。
L3 Multimaximizer
L3-16 Multimaximizer
L3-LL Multimaximizer
L3-LL Ultramaximizer
Waves社「L3 Ultramaximizer」の特徴と使い方
L3 Ultramaximizerでは、前述の「L2」と同様にThreshold、Out Ceiling、Releaseのほか、IDRの調整も可能です。
L1やL2と異なるのは、画面上部で「Profile」を設定できる点です。
このProfileを設定することで、「温かみのある音にしたい」「よりキツくタイトな音にしたい」など、音のキャラクターを細かく設定することができます。
L3 Ultramaximizerは、マスターバス(Master Bus)よりも個別のトラックに使うことが多いプラグインでしょう。
※個別のトラックに使う際は、主にマスタリング時に使われるIDRの設定をOFFにしておくことをおすすめします
Waves社「L3 Multimaximizer」の特徴と使い方
L3 Multimaximizerの特徴は、バンドを5つ利用できる点です。
「Multi」は「Multi Band(マルチバンド、個別に調整できるポイントが複数ある)」という意味があります。
前述のL1やL2はマルチバンドではありませんので、全ての周波数帯域に対して同様の処理が行われますが、L3 Multimaximizerなら周波数帯域ごとに5バンドに区切り、それぞれのGain、Priority、Releaseを調整することができます。
大切な周波数帯域だけを抑えすぎないようにするパラメーター「Priority」
「Priority」のパラメーターでは、どの周波数帯域を優先して聞かせたいかを設定することができます。
例えば、キックとベースを強調したい曲では低音が重要になりますので、これらの楽器の周波数帯域のバンドのPriorityを1.0以上に上げます。
すると、プラグインが「この周波数帯域には重要な要素が入っているんだ」と認識するため、Thresholdを超えた音を検知したとき、Priorityが高い帯域では他の帯域よりもゲインリダクションが小さくなります。
つまり、重要な要素を抑えすぎないように調整してくれるパラメーターです。
L3 Ultramaximizerと同様、「Profile」で音のキャラクターを調整することも可能です。
Waves社「L3 LL Ultramaxiizer」の特徴と使い方
Waves社「L3 LL Ultramaxizer」の名前に入っている「LL」は、「Low Latency」という意味です。
つまり、他のL3製品に比べてレイテンシー(遅延)が少ない製品となります。
例えば、ライブ演奏でリアルタイムにマキシマイザーをかけているときや、レコーディング中にヘッドホンで音を聞いているときはレイテンシーがあると困りますので、そのような時にL3 LLを使うとよいでしょう。
Waves社「L3 LL Multimaximizer」の特徴と使い方
Waves社「L3 LL Multimaximizer」は、前述の「L3 LL Ultramaxiizer」と同様にレイテンシーが少ない(Low Latency)点は共通で、マルチバンドであるところだけ異なります。
レイテンシーが少ないという点がポイントですので、L3 LL Ultramaximizerと同様、ライブやレコーディングでモニタリングするなど、レイテンシーを最小限に抑えたい時におすすめです。
Waves社「L3 16 Multimaximizer」の特徴と使い方
Waves社「L3 16 Multimaximizer」は、16バンド使えるタイプのマキシマイザーです。
前述のL2 MultimaximizerやL3 LL Multimaximizerは5バンドしか使えないため、非常に細かく設定をすることが可能です。
また、他にも「Release Character」でReleaseのテイストを細かく変更したり、「Separation」で各バンドの繋ぎ目をゆるやかにするか、タイトにするかを設定することができます。
より細かく調整したい場合は、この「L3 16 Multimaximizer」を使うのがよいでしょう。
Wavesのリミッター・マキシマイザーにある 「IDR」って何?
Wavesのリミッターやマキシマイザーには「IDR」と書かれているセクションがあります。
Waves社の製品における「IDR」は、ディザリングをするときに発生する音の歪みを最小限に抑え、より高音質でディザリングを行う技術のことを表しています。
「Increased Digital Resolution dither technology」の略で、Wavesがオーディオエンジニア・Michael Gerzonと共同で開発した画期的な技術です。
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Wavesのリミッター「L1・L2・L3」の違いとそれぞれの使い方まとめ
以上でWaves社のリミッター「L1・L2・L3」の違いと使い方の解説は終了です。
L2:IDRの設定もできる万能リミッター。個別トラックにもBusにもおすすめ。
L3:最も調整できるパラメーターや機能が多く、種類も豊富。個別トラックにもBusにもおすすめ。
Ultramaximizer:すべての周波数帯域をまとめて処理したいときにおすすめ。
Multimaximizer(マルチバンド系):周波数帯域ごとに細かく調整したい時におすすめ。
当サイトでは他にもリミッター・マキシマイザー、マスタリングなどに関する記事をまとめていますので、ぜひこちらもご覧ください↓
Waves社のL1、L2、L3シリーズのご購入はこちら↓
Waves製品は1つ1つ購入するよりも、バンドルで購入した方が圧倒的にお得ですので、ぜひ以下をチェックしてみてください
Waves Gold(L1 Ultramaximizerが入っています)
Waves Platinum(L1、L2、L3がすべて入っています)
Waves Platinum(L1、L2、L3シリーズがすべて入っています)
WAVES ( ウェーブス ) / Diamond ダイアモンド
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