【音楽理論】クロマティック・ミディアント(Chromatic Mediant)とは?【映画音楽】
今回は、イギリスの作曲家・Guy Michaelmoreが教える「クロマティック・ミディアント(Chromatic Mediant)とは?」をまとめました。
映画音楽界で活躍する本人が、映画音楽でよく使われるクロマティック・ミディアントについて解説します!
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クロマティック・ミディアント(Chromatic Mediant)とは?
一言で言うと、スケールのダイアトニックコードにはない「3度上下」したコードを使う手法です。
映画音楽でもよく使われるテクニックで、例えば「バットマン」や「ロードオブザリング」の楽曲でも使われています。
「バットマン(1989)」より「Are You a Kenzie or a Can’t-zie?」
0:48~
「ロードオブザリング」より「The Fellowship」
5:36~
映画音楽だけでなく、ビリーアイリッシュなどのポップアーティストの楽曲でも見られます。
Billie Eilish「Happier Than Ever」
0:11~歌詞が「Happier Than Ever」の部分
名前がとても難しそうに見えるので、このワードを聞いただけで頭を抱えてしまう人もいるでしょう…
しかし今回は1からじっくり解説しますので、ご安心ください。
そもそも「クロマティック(Chromatic)」の意味とは?
はじめに、「クロマティック」の意味を解説します。
クロマティックとは、一言で言うと「スケールに入っていない音」です。
例えばCメジャースケールでは、
C,D,E,F,G,A,B
の7音が使われます。
それでは次は、コードについて考えてみましょう。
上の画像は「Cメジャーコードで、「C,E,G」の3つの音が使われます。
このC,E,Gは、どれもCメジャースケールに入っている音ですね。
上の画像はEマイナーコードで、「E,G,B」の3つの音が使われます。
この3つの音も、Cメジャースケールに入っている音ですね。
それでは、こちらはどうでしょうか?
これはEメジャーコードで、「E,G#,B」の3つの音が使われています。
Cメジャースケールでは、ピアノの鍵盤で言う白鍵しか使われていないのに、Eメジャーコードでは黒鍵(G#)の音が入っています。
このように、楽曲でベースとしているスケールに入っていない音のことを「クロマティック」と言います。
そもそも「ミディアント(Mediant)」の意味とは?
次は「ミディアント(Mediant)」の意味を解説します。
例えばCメジャースケールでは、
C,D,E,F,G,A,B
の7音が使われます。
スタートの音(スケールの1番目の音)はCで、これは「トニック」とも呼ばれます。
スケールのスタート音以外にもそれぞれ名前がついており、以下のように呼ばれています。
2(D):スーパートニック
3(E):ミディアント
4(F):サブドミナント
5(G):ドミナント
6(A):サブミディアント
7(B):リーディングトーン
(カッコ内はCメジャースケールの場合の音)
3番目に「ミディアント」が、6番目に「サブミディアント」が入っていることにお気づきでしょうか?
そう、この2つ「3番目」と「6番目」がキーポイントになるのです。
ミディアントのポイントは「3度上下」
ミディアントのポイントは、「3度上下」であることです。
スケールの1番目の音(トニック)から数えて、上に3度=メジャー3rd(半音4つ上)にあたるのが「ミディアント」。
スケールの1番目の音(トニック)から数えて、下に3度=マイナー3rd(半音3つ下)にあたるのが「サブミディアント」です。
「クロマティック」と「ミディアント」の意味をまとめると?
つまり「クロマティック・ミディアント」とは、直訳で「スケール上にない音・3度上下」ということになります。
正直これだけではまだパッとしませんが、これは具体的にどのように使えばいいのでしょうか?
クロマティック・ミディアントは使える音が増える!
クロマティック・ミディアントは基本的に「コード」をベースにして考えられるため、使えるコードが増えるのが特徴です。
例えばCメジャースケールにおいて、トニックのコードはCメジャーコード(C,E,G)です。
そして、ミディアント(メジャー3rd、トニックから半音4つ上)はEマイナーコード(E,G,B)、サブミディアント(マイナー3rd、トニックから半音3つ下)はAマイナーコード(A,C,E)です。
ここで重要なのは、コードの場合、「メジャー3rd上(半音4つ上)」と「マイナー3rd分下(半音3つ下)」だけでなく「メジャー3rd下(半音4つ下)」と「マイナー3rd上(半音3つ上)」も使えるという点です!
例えば、ミディアントはCからメジャー3rd上(半音4つ上)のEだとお伝えしましたが、マイナー3rd上(半音3つ上)のEbも使えるということになります。
同様に、サブミディアントはCから半音3つ下のAだとお伝えしましたが、メジャー3rd下(半音4つ下)のAbも使えるということになります。
一覧にまとめると、クロマティック・ミディアントでは以下の4音をルート音としたコードが使えるようになります。
Cから数えてマイナー3rd上(半音3つ上):Eb
Cから数えてメジャー3rd下(半音4つ下):Ab
ここでポイントなのが、「この4音をルート音とするコードなら何でも使えるようになる」という点です。
コードの中に、先ほどの「3度上下」して出てきた4つの音「E,Bb,A,Ab」以外の音が入っていてもOK。
つまり、クロマテイック・ミディアントを使うと以下8つのコードが使えるようになります。
Eマイナーコード(E,G,B)※Cメジャーのダイアトニックコード
Ebメジャーコード(Eb,G,Bb)
Ebマイナーコード(Eb,Gb,Bb)
Aメジャーコード(A,Db,E)
Aマイナーコード(A,C,E)※Cメジャーのダイアトニックコード
Abメジャーコード(Ab,C,Eb)
Abマイナーコード(Ab,B,Eb)
最初からCメジャースケールのダイアトニックコードに入っている「Eマイナーコード」と「Aマイナーコード」は、「ダイアトニック・ミディアント」と「クロマティック・ミディアント」が被っています。
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クロマティック・ミディアントの使い方
それでは、実際の曲でクロマティック・ミディアントをどのように使っていけば良いのかを解説していきます。
使い方は非常にさまざまありますが、例えば…
C – Abm
(映画音楽界の巨匠・ダニーエルフマンの楽曲のような怪しげな雰囲気に)
「C – Ebm」をボイシングとオクターブを変えながら繰り返す
(ファンタジー映画のような不思議なサウンドに)
「次にどのコードに行けばいいのかわからなくて、行き詰まっている」
というときには、ぜひ一度このクロマティック・ミディアントをお試しください!
以上で解説は終了です!
当サイトでは、リディアンモードとクロマティック・ミディアントを組み合わせたゲーム音楽の例もご紹介していますので、ぜひこちらもご覧ください↓
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