プロが教えるメタルのボーカルミックス術【バンド系サウンド】
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今回は、Kellen McGregorによるメタルコアのボーカルミックス術をまとめました。
アメリカのメタルコアバンド「Memphis My Fire」の楽曲「Blood & Water」のボーカルミックスを、このバンドメンバーであり実際にエンジニアを担当した本人が解説します。
原曲はこちら↓
※記事内の画像は全て動画内から引用しています
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はじめに
今回は「ダブリング」「ハモリ」「パラレルコンプ」「ディレイ系」「リバーブ系」など、ボーカルに関わるさまざまなパートやエフェクトを解説しています。
たくさん紹介していますので、気になる項目だけピックアップして読みたい方はぜひ目次からご覧ください。
ダブリングのテクニック
僕(Kellen)は個人的にフェイクダブラーを結構な音量で足すのが好きなのですが、ボーカリストのMatty Mullinsはエアー感のある音が好きなので、Fabfilter社「Saturn」を使って高音域を強化したボーカルを、「AIR」という名前のトラックを作って重ねています。
※動画内で紹介はありませんでしたが、このSaturnの後にWaves社「L1 Limiter」も使っています
AIRのトラックはこのような音がします。
(動画の後半で聞かせてくれたのでそちらを掲載します。AIRトラックについては後ほど再度解説があります。)
このAIRのトラックとはまた別に普通のダブラーもあり、このトラックではSoundtoys社「Micro Shift」を使って音を広げ、Pro-Q3fで不要な音域を削っています。
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モノラルディレイ
僕はあまりモノラルディレイを使わないのですが、この曲のAメロの叫んでいる部分には後ろで跳ね返るような音が欲しいと思ったので、Soundtoys社「EchoBoy」を1/8dに設定して使っています。
ディレイにはEQもかけて、ハイカット・ローカットもしています。
メインディレイ
先ほどはモノラルディレイでしたが、その他には「MAINVOCAL DELAY」という名前で別のディレイも使っています。
まずはValhalla Delayで、ピンポンディレイを作っています。
少しだけダッキングをしてボーカルの実際の音とかぶらないようにしつつ、ピンポンディレイの感じはしっかり出るようにしています。
この後にはEQもかけています。
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ロングディレイ
ちなみに、これとは別に「LONG DELAY」という名前のディレイも作っています。
こちらも同じプラグインを使っていますが、こちらの方が長く、強くダッキングするようにしています。
こうすると、ボーカルが歌い終わったときにディレイの音がバーンと広がる感じになります。
この後には、Valhalla Shimmerでリバーブをかけています。
このロングディレイも、最後にEQをかけています。
リバーブ
特にバックグラウンドボーカルをビッグに聞かせたいときのリバーブとして、このようなホールリバーブを使うことが多いです。
この曲ではSlate Digital社「VerbSuite Classics」を使っています。
ボーカルをまとめるためのリバーブもある
特にバックグラウンドボーカルの場合、多くのトラックを使っている時はそれらをしっかりまとめるためにリバーブを使うこともあります。
場合によっては、20%ぐらいの量で少しだけリバーブを使うことで十分まとまりを出すこともできます。
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パラレルコンプ
「PARAVOX」というトラックには、パラレルコンプのためのプラグインを挿しています。
まずはEQで不要な帯域を使いつつ、少しだけ高音域をブーストして整えています。
このEQの後にコンプを使います。使っているのはKlanghelm社「MJUC」です。
いつもこれを使っているというわけではありませんが、このプラグインの音が好きで、速いアタック+速いリリースに設定しています。
サイドチェインなどは使わなくてもとても明るいサウンドになり、音の抜けもよくなります。
よりスムーズかつパンチのあるボーカルが欲しい時は76系のコンプなどを使うと良いと思いますが、今回の場合はこのプラグインで十分パンチが出ています。
このパラレルコンプをバイパスした時と比較して聞いてみましょう。
ほんの少しの違いですが、パラレルコンプがあった方がダイナミックで、サビで音がたくさん入ってきてもしっかり、真ん中にいるように聞こえます。
ダブルのトラック
ダブルのトラックはこのような音になっています。
スラップディレイが聞こえると思いますが、それ以外は先ほどのメインボーカルと同じ設定です。
ハモリパート
ハモリパートはこのようなサウンドです。
コンプ Part1
コンプはWaves社「PuigTec EQs」で、ローエンドは必要ないのでブーストせず、4khz付近の高音域は少しブーストしています。
最初にご紹介したAIRと一緒に聞くと、このようになります。
先ほど流した部分に「my fault(マイフォルト)」という歌詞があるのですが、僕はこの「fault」の時の音が気に入っています。
映画で登場人物がとても怒っていて、唾を吐くように「fault」と言っているときのような、とても強烈なサウンドになっているからです。
soothe2やEQなどで既に出過ぎた音域などは整えているのですが、それでもなお力強さがあり、とても気に入っています。
「PuigTec EQs」はWaves社のこちらのバンドルに収録されています↓
WAVES / Platinumを購入する(サウンドハウス)
EQ Part1
EQではこのように削っています。
特に中低音域はギターとかぶらないように、ダッキング(ダイナミックEQ)で抑えています。
言葉の抜けがよくなるように、高音域の一部はほんの少しだけブーストしていますが、明るくなりすぎないように削って処理もしています。
コンプ Part2
次はWaves社「CLA-76」を「速めのアタック・遅めのリリース」に設定してコンプレッサーをかけています。
Waves社「CLA-76」はWaves社のバンドル「CLA Classic Compressors」に収録されています↓
EQ Part2
コンプをかけた分、すべての音が持ち上がってきているので、再度EQで調整します。
リミッター
次はWaves社「L1 Limiter」でリミッティングします。
Waves社「L1 Limiter」はWaves社のこちらのバンドルに収録されています↓
soothe2(ディエッサー)
最後にsoothe2で高音域を整えます。
今回はdepthをMaxまで上げていますが、これはsharpnessをあまり強くせず、ゆるやかなカーブのまま音を整えたかったので、その分depthを強くしているためです。
普段はここまでdepthを強くしません。
Sendエフェクトまとめ
Sendは上から「スラップディレイ」「ロングリバーブ」「ロングディレイ」「ボーカルディレイ(ボーカル全体用)」「ダブラー(Micro Shift)」を使っています。
フェイク
フェイクパートはこのようになっています。
これはSoundtoys社「Little AlterBoy」でオクターブを下げ、フォルマントも下げている音です。
コンプレッサーを少しかけ、EQで750hz以上をカットしています。
以上で解説は終了です!
このサイトでは他にもボーカルミックスに関するテクニックをまとめていますので、ぜひ合わせてご覧ください↓
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