「出力インピーダンス」と「入力インピーダンス」の違いとは?【アンプ・ヘッドホン】
- 2024.11.27
- 2024.11.24
- オーディオ
今回は、Julian Krauseが解説する「なぜオーディオ機器においてインピーダンスは重要なのか?」をまとめました。
アンプやヘッドホンなどのオーディオ機器のスペック欄を見ると「インピーダンス(Impedance)」や「Ω」の数字が記載されています。
この記事では、この「インピーダンス(Ω)」はなぜオーディオ機器にとって重要なのかについて解説していきます。
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インピーダンス(Ω)とは?
インピーダンスとは「流れる電流に対しての抵抗」のことで、単位はΩ(オーム)で表されます。
低インピーダンス:電流が流れやすい
例えば、道路にあまり人がいなければ歩きやすいですが、人混みの中はとても歩きづらいでしょう。
これと同じで、抵抗が大きい(道にいる人が多い)と電流は流れにくくなります(歩きにくくなります)。
インピーダンスをより噛み砕いた説明はこちらの記事でまとめています↓
インピーダンスには「出力インピーダンス」と「入力インピーダンス」の2種類ある
オーディオ機器のスペック欄を見てみると、「出力インピーダンス」と「入力インピーダンス」の2種類のインピーダンスが記載されていることがあります。
次に接続している機械に電力を送るときにかかる抵抗
抵抗が大きいと少ない電力しか送ることができない
前に接続している機械から電力を受け取るときにかかる抵抗
抵抗が大きいと少ない電力しか受け取ることができない
ヘッドホンアンプにおける「出力インピーダンス」とは?
ヘッドホンアンプは、ヘッドホンを接続することでそのヘッドホンから聞ける音の音量を上げ下げすることができる機械です。
例えばヘッドホンアンプのスペックを見てみると「出力インピーダンス(アウトプットインピーダンス)」という項目があります。
これは「ヘッドホンアンプに流れてきたパワー(電力)のうち、どれぐらいの電力を出力できるか(ヘッドホンに流せるか)」を表します。
ヘッドホンアンプの出力インピーダンスが低いと、より多くの電力をヘッドホンに届けることができます。
ヘッドホンアンプの出力インピーダンスが高いと、より少ない電力しかヘッドホンに届けることができません。
ヘッドホンアンプの場合は、0.1Ω~数百Ωまで、製品によってインピーダンスはさまざまです。
ヘッドホンにおける「入力インピーダンス」とは?
ヘッドホンのスペック欄を見てみると「入力インピーダンス(インプットインピーダンス )」という項目があります。
これは「ヘッドホンに流れてきた電力のうち、どれぐらいの電力を受け取ることができるか」を表します。
ヘッドホンの入力インピーダンスが低いと、より多くの電力を使って音を出すことができます。
(より多くの電力を受け取る準備ができています)
ヘッドホンの入力インピーダンスが高いと、より少ない電力しか使えない状態で音を出さなければなりません。
(逆に、十分な電力を受け取ることさえできれば、大きな音を出すことができます)
ヘッドホンの場合は、16Ω~600Ω程度であることが多いです。
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出力インピーダンスと入力インピーダンスの組み合わせが重要
これらの内容をまとめると、以下のように表すことができます。
「入力インピーダンスの低いヘッドホンを使えば、よりたくさんの電力を使って音を出すことができる」
逆に、このように表すこともできます。
「入力インピーダンスの高いヘッドホンを使えば、音を出すために使える電力が少なくなる」
(そのため、より多くの電力が必要になる)
ヘッドホンの場合、抵抗が少なければより多くの電力を受け取る準備ができていることになるので、アンプから送られてくる電力が小さいと非常に音量が小さくなったり、聞こえる周波数帯域(音域)にバラつきが出るようになります。
出力インピーダンスと入力インピーダンスの組み合わせによっては、音を出すために使える電力が大きく変わってしまうのです。
【実験】ヘッドホンとアンプのインピーダンスを変えると聞こえる音量はどう変わるのか?
それでは、実際に機械を使って電力の大きさを計測してみましょう。
出力インピーダンスが低いアンプ+入力インピーダンスが高いヘッドホンだとどうなる?
まず出力インピーダンスが低いアンプを用意し、「Dummy Load」という名前のついた抵抗の大きさを自由に変更できる機械をヘッドホンの代わりに使います。
※アンプの出力インピーダンスが低い=電力を送るときの電気抵抗が少ないので、より多くの電力をヘッドホンに送ることができる状態です。
少し色が薄くて見えづらいですが、右下のグラフでは0.00dBの音量で=MAXの音量でサイン波の音(ビープ音のような音)が絶えず鳴っていることを表しています。
はじめに、Dummy Loadのインピーダンスを変えるとサイン波の音量がどれぐらい変わるのかをチェックしていきます。
まずは、Dummy Loadの抵抗を600Ωまで引き上げるとどうなるでしょうか?
下にある緑のメーターは、0.00dBのままです。
つまり、ヘッドホンの抵抗を上げても聞こえる音量に全く変わりがないことを表しています。
Dummy Loadは600Ωで抵抗が大きい=たくさん電力を受け取ることができれば100%の音量を出すことができるので、出力インピーダンスが低いアンプを接続すると100%の力を発揮できる=音量が下がらないということになります。
それでは、Dummy Loadの抵抗を16Ωに下げてみるとどうなるでしょうか?
下にある緑のメーターは-0.19dBまで下がりました。
つまり、「出力インピーダンスが低いアンプ+入力インピーダンスが高いヘッドホン」だと音量に変化はありませんが、両方ともインピーダンスが低いとほんの少しだけ聞こえる音量が小さくなります。
ただしわずか0.19dBの差なので、ほとんど差はないと言ってもよいでしょう。
出力インピーダンスが高いアンプ+入力インピーダンスが高いヘッドホンだとどうなる?
それでは、次は出力インピーダンスが高いアンプを使って実験してみましょう。
出力インピーダンスが高いアンプ=電気抵抗が大きいので、先ほどよりもヘッドホンに送ることができる電力が少ない状態です。
まずは、Dummy Loadの抵抗を600Ωまで上げてみましょう。
下にある緑のメーターは-1.22dBまで下がり、少しだけ音量が小さくなりました。
先ほどの「両方ともインピーダンスが低い状態」のときは-0.19dBしか減らなかったので、今回の方がより大きく音量が下がっていることがわかります。
しかし、それでもまだ1.22dBの差ですので、そこまで大きな変化ではありません。
それでは、Dummy Loadの抵抗を16Ωまで上げてみましょう。
音量が-16.49dBまで大幅に下がりました。
これは、Dummy Loadは16Ωしかない=抵抗が少ない=より多くの電力を受け取る準備ができているのに、出力インピーダンスが高い=ヘッドホンに届けられる電力が小さいため、Dummy Loadの許容範囲に対して非常に少ない電力しか送られていないからです。
言い換えると、Dummy Load(ヘッドホン)が求めている電力が、アンプにとっては大きすぎる電力になっている状態です。
入力インピーダンスが低いヘッドホンではより多くの電力を受け取る・使うことができますが、出力インピーダンスが低いアンプにとっては供給するのが大変な電力の量です。
そのため、Dummy Loadが十分な量の電力を受け取れず、音量がかなり小さくなってしまいます。
入出力インピーダンスの組み合わせ実験まとめ
ここまでの実験結果をまとめると、このようになります。
変化なし(0.00dB)
低出力インピーダンスのアンプ+低入力インピーダンスのヘッドホン
ほぼ変化なし(-0.19dB)
高出力インピーダンスのアンプ+高入力インピーダンスのヘッドホン
ほぼ変化なし(-1.22dB)
高出力インピーダンスのアンプ+低入力インピーダンスのヘッドホン
音量が大幅に下がる(-16.49 dB)
これらの理由から、インピーダンスについて考えるときは「どちらかのインピーダンスの数値が高ければいい/低ければいい」という問題ではなく、それぞれの組み合わせによって音の聞こえ方が大きく変わることを理解することが大切です。
ただし、実験結果からもわかる通り「高出力インピーダンスのアンプ+低入力インピーダンスのヘッドホン」の組み合わせはおすすめできません。
※日本語だと「ハイ出しロー受け」と呼ばれることが多いです
一般的にベストだとされているのは「低出力インピーダンスのアンプ+高入力インピーダンスのヘッドホン」の組み合わせです。
※日本語だと「ロー出しハイ受け」と呼ばれることが多いです
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インピーダンスによって聞こえやすい周波数帯域が変わる
多くのヘッドホンでは、ヘッドホンとアンプそれぞれのインピーダンスによって周波数帯域ごとに聞こえ方が変わります。
例えば、こちらのグラフをご覧ください。
多くのヘッドホンは、インピーダンスがゼロのとき(0Ω)だとこのような音の聞こえ方になります。
100Hz程度の低い音だけが大きく聞こえ、1000Hz以上の高音域になるに従って聞こえやすくなる状態です。
上の画像は、ヘッドホンなどを接続していないアンプだけの状態でどの音域が聞こえやすくなっているかを示しているグラフです。
高インピーダンスのアンプのグラフですが、ほぼ一直線ですべての音域が偏りなく音が鳴ります。
ただし、アンプだけでは音が出ないのでこれにヘッドホンやスピーカーなどを接続する必要があります。
それでは、ヘッドホンやスピーカーを接続するとこのグラフはどう変わるのでしょうか?
上の画像は、低インピーダンスのヘッドホンを高インピーダンスのアンプに接続したときのグラフです。
先ほどの一直線のグラフとは大きく異なり、聞こえやすい音域と聞こえにくい音域に大きな違いが出ています。
この場合は95Hz付近が他の周波数帯域に比べて1.3dBほど大きく聞こえてしまいますので、フラットな状態で音を聞くことができません。
※例えばDTMなどの音楽制作の場合は「自分が作っている曲はちゃんと低音域が鳴っている!」と勘違いしてしまうでしょう
先ほどは高インピーダンスのアンプの例でしたが、次は低インピーダンスのアンプの例を見てみましょう。
上の画像は、低インピーダンスのアンプに何も接続していない状態のグラフです。
これに低インピーダンスのヘッドホンを繋ぐと、聞こえる音に偏りは出てくるでしょうか?
なんと、ほぼ一直線のグラフになりました。
つまり、低インピーダンス同士を接続した場合は、聞こえる音のバランスがよくなります。
アンプとヘッドホンのインピーダンス実験結果まとめ
はじめにご紹介したDummy Loadを使った実験では、以下のような結果になりました。
変化なし(0.00dB)
低出力インピーダンスのアンプ+低入力インピーダンスのヘッドホン
ほぼ変化なし(-0.19dB)
高出力インピーダンスのアンプ+高入力インピーダンスのヘッドホン
ほぼ変化なし(-1.22dB)
高出力インピーダンスのアンプ+低入力インピーダンスのヘッドホン
音量が大幅に下がる(-16.49 dB)
そして、先ほどご紹介した「インピーダンスの違いによる周波数帯域の聞こえ方の違い」は、このような結果になりました。
聞こえる周波数帯域に大きなバラつきがある
(95Hz付近と1200Hz付近だけ大きく聞こえる)
聞こえる周波数帯域に大きなバラつきはない
これらの理由から、以下のことが導き出せます。
ヘッドホンが低インピーダンスだと聞こえる音量や周波数帯域にバラつきが出やすい
・高インピーダンスのアンプを使うときは、高インピーダンスのヘッドホンを使った方がベター
・低インピーダンスのアンプを使うときは、ヘッドホンのインピーダンスはそこまで大きく影響しない
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インピーダンスを考慮したヘッドホンとアンプの選び方
ここまでの解説で、ヘッドホンとアンプの両者のインピーダンスが実際の音の聞こえ方に大きく影響することがわかりました。
それでは、インピーダンスを考慮して自分に合ったヘッドホンやアンプを選ぶにはどうしたらよいのでしょうか?
わかりやすい1つの基準としては、「ヘッドホンのインピーダンスが、アンプの出力インピーダンスの8倍以上あること」が挙げられます。
逆に言えば「アンプの出力インピーダンスが、ヘッドホンのインピーダンスの1/8以下であること」となります。
アンプの出力インピーダンス:10Ω
ヘッドホンのインピーダンス:80Ω以上
ちなみにスマートフォンやパソコンなど出力のパワーが限られている(比較的小さい)機械にヘッドホンを直接接続するときは、より少ない電力でも音量を出せる低インピーダンスのヘッドホン(50Ω以下)がおすすめです。
以上で解説は終了です。
当サイトでは他にもインピーダンスやオーディオ機器の仕組み・選び方についてまとめています。
解説のテーマが同じでも、解説者によって異なる例を挙げていてとても理解が深まりやすくなっていますので、ぜひこちらもご覧ください↓
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