【音楽理論】3つのマイナースケールをマスターしよう【ナチュラル・メロディック・ハーモニックマイナー】

【音楽理論】3つのマイナースケールをマスターしよう【ナチュラル・メロディック・ハーモニックマイナー】
メジャースケールは1種類しかないのに、マイナースケールは色々な種類がある…これは何で?
どうやって使い分ければいいの?

今回はこのような疑問にお答えする内容です。

YouTubeで音楽理論解説動画をアップしているMusicTheoryAdvancedが解説した「マイナーハーモニー・マイナースケールについて」をまとめました。

冒頭でも触れた通り、メジャースケールは1種類しかありませんが、マイナースケールには3種類あります。

・ナチュラルマイナースケール
・メロディックマイナースケール
・ハーモニックマイナースケール

メジャースケールには、このような特殊な名前がついたスケールはありません。

マイナーの場合、これらはどうして分けられているのでしょうか?

今回は、それぞれの特徴や使い方について解説していきます!

The Jazz Piano Course: Minor harmony and minor scales (Lesson 4)

スポンサードサーチ

マイナースケールには3種類ある

まずは、3種類のマイナースケールの特徴を見てみましょう。

スケールの音使いは、このようになっています。


画像:動画より

スケールを楽譜で表すと、このようになります。

https://www.basicmusictheory.com/img/c-minor-scale-on-treble-clef.png
https://www.basicmusictheory.com/img/c-melodic-minor-scale-on-treble-clef.png
https://www.basicmusictheory.com/img/c-harmonic-minor-scale-on-treble-clef.png

そしてダイトニックコードは、このようになります。


画像:動画より

それではここからは、マイナースケールにはどうして3種類も存在するのか、その理由を解説していきます。

マイナースケールの種類は「解決感」がキーポイント

まず、メジャースケールにおける「ドミナントモーション」について解説します。

ドミナントモーションとは、強い進行感・解決感を感じるコード進行のことです。

V – I

音楽用語で言うと、Vはドミナントで、Iはトニックです。

ドミナントからトニックに行くと、とてもすっきりと終わった感・解決感があるので、この進行はとても有名です。

Cメジャースケールなら、「G – C」という進行になります。

スポンサードサーチ

ナチュラルマイナースケールで「V- I」を演奏するとどうなる?

それでは次に、ナチュラルマイナースケールで「V – I」を弾いた場合を考えてみましょう。

Cナチュラルマイナースケールの場合

たとえば、Cナチュラルマイナースケールでこのドミナントモーションを弾いた場合。

Cナチュラルマイナースケールのダイアトニックコードはこちら↓(3:17~3:34)

The Jazz Piano Course: Minor harmony and minor scales (Lesson 4)

そして、ドミナントモーションの時のコードはそれぞれこうなります↓

I:Cm(C Eb G)
V:Gm(G Bb D)

実際にドミナントモーションを弾いてみると…↓(4:15~4:20)

The Jazz Piano Course: Minor harmony and minor scales (Lesson 4)

それでは、メジャースケールの時の「V – I」と、ナチュラルマイナースケールのときの「V – I」を弾き比べてみましょう。

最初がナチュラルマイナースケールの場合、次がメジャースケールの場合です↓

4:32~4:49

The Jazz Piano Course: Minor harmony and minor scales (Lesson 4)

ナチュラルマイナースケールの時よりも、メジャースケールの時の方が「強い解決感」があるのがお分かり頂けたでしょうか?

ナチュラルマイナースケールの欠点

ナチュラルマイナースケールは、ダイアトニックコードに強い解決感を出してくれるドミナントコードが存在しません。

スケール上で使う音が違うので、それに合わせてダイアトニックコードの役割も変わってしまうのです。

そのため、Vはマイナーコードになり、トニックであるIに行ってもそこまで解決感を得られなくなります。

これが理由で、ジャズではナチュラルマイナースケールはあまり用いられません。
(ジャズではよくII – V – Iというコード進行を使うため、ドミナントモーションの解決感が足りないのは致命的です)

メロディックマイナースケールとは?

メロディックマイナースケールとは、メロディーを歌いやすく・流れを自然にすることを重視したスケールであり、またドミナントモーションに強い解決感を得られるようにしたスケールです。

つまり、ナチュラルマイナースケールとハーモニックマイナースケールにある問題点を解決できるスケールです。


画像:動画より

https://www.basicmusictheory.com/img/c-harmonic-minor-scale-on-treble-clef.png

ダイアトニックコードはこちら↓(5:47~)

The Jazz Piano Course: Minor harmony and minor scales (Lesson 4)

後述するハーモニックマイナースケールはVIとVIIの音の距離が増2度になるので、これらの音をつなげて弾いてしまうと音程が取りづらく、歌い難かったり、違和感のある流れになってしまいます。

しかし、メロディックマイナーであればVIとVIIの音の距離が長2度なので、自然な流れでメロディーを演奏することができます。

さらに、メロディックマイナースケールならドミナントコード「V」がメジャーコードになるので、ドミナントモーションのときに強い解決感を得ることができます。

例えばCメロディックマイナースケールなら、「V – I」は「G – Cm」となります。

6:13~6:19

The Jazz Piano Course: Minor harmony and minor scales (Lesson 4)

スポンサードサーチ

ハーモニックマイナースケールとは?

ハーモニックマイナースケールは、ハーモニーを自然に聞かせ、ドミナントモーションに解決感を得るためのマイナースケールです。

ナチュラルマイナースケールのうちVIIの音だけをナチュラル(フラットなし)にした形なので、VIIがIへのリーディングトーンとなるほか、ドミナントコードがメジャーコードになるのでドミナントモーションに強い解決感を得られます。

https://www.basicmusictheory.com/img/c-harmonic-minor-scale-on-treble-clef.png

ハーモニックマイナースケールのダイアトニックコードはこちらです。

6:48~7:49

The Jazz Piano Course: Minor harmony and minor scales (Lesson 4)

ハーモニックマイナースケールの欠点はVIとVIIの距離

https://www.basicmusictheory.com/img/c-melodic-minor-scale-on-treble-clef.png

メロディックマイナースケールの場合、VIとVIIの距離は「長2度」になります。

例えばCメロディックマイナースケールの場合はAとBの音になります。

https://www.basicmusictheory.com/img/c-harmonic-minor-scale-on-treble-clef.png

対してハーモニックマイナースケールの場合は「増2度」です。

Cハーモニックマイナースケールの場合はAbとBの音になり、このAbとBを使ってメロディーを作った場合はその距離感に違和感が出てしまうのが難点です。

そのため、メロディーを演奏することを考えると、メロディックマイナースケールの方が自然に聞こえやすいでしょう。

ジャズのマイナースケールは「ハーモニックマイナー」が基本

ジャズにおいて、「マイナースケール」という時は基本的にハーモニックマイナースケール」を指します。
(少なくとも、コード進行を作る時はハーモニックマイナースケールをベースにします)

これは、ドミナントモーションで強い解決感を得られ、できるだけナチュラルマイナースケールに近いのがハーモニックマイナースケールだからです。

ジャズでは「II – V – I」のコード進行がよく使われるので、ドミナントモーションに強い解決感を得られるスケールは非常に使いやすいです。

とは言うものの、メロディックマイナースケールもジャズで使われます。

ジャズにおけるメロディックマイナースケールの活用方法

メロディックマイナースケールを使うと、ジャズでよく使われる「II – V – I」の進行を大いに活用できます。

ナチュラルマイナースケールやハーモニックマイナースケールの場合はIIが「IIdim」となりますが、メロディックマイナースケールなら「IIm」になりますので、より「II – V – I」を進行感あるものにできます。

ちなみにII – V – Iについては、こちらで解説しています↓

【ジャズの基礎基本】II-V-Iをマスターしよう! 【ジャズの基礎基本】II-V-Iをマスターしよう! 「II-V-I」「2-5-1」のコード進行って、どうやって使えばいいの? この数字は何を表しているの? 今回はこのような疑問にお答えする内容です。 ジャズピアニスト・作曲家のCharles Cornellが教える「2-5-1って何?どうやって使うの?」をまとめました。 ジャズでよく使われることで有名なこちらの進行ですが、実際に作曲で使う時にはどういったことに気をつければいいのでしょうか? 早速見て […]
絶対に覚えておきたい「ジャズの基本コード進行3選」【初心者】 絶対に覚えておきたい「ジャズの基本コード進行3選」【初心者】 今回は、ジャズのスペシャリスト・Kevin Castroが解説する「ジャズの基本コード進行3つ」をまとめました。 ここでご紹介する3つのコード進行をマスターすれば、ジャズの定番曲(ジャズスタンダード)もスラスラ弾けるようになるだけでなく、即興演奏にも大きく役立ちます。 ピアノやギターを使ってこれからジャズを始めたい方、コード進行のバリエーションを増やしたい方にはとてもおすすめの内容ですので、ぜひ最 […]
かっこいいコード進行「2-5-1」の作り方・使い方【ジャズ】 かっこいいコード進行「2-5-1」の作り方・使い方【ジャズ】 かっこいい・おしゃれなコード進行が知りたい! ジャズで「2-5-1」のパターンをよく聞くけど、このコード進行の使い方についてもう少し詳しく知りたいな 今回はこのような要望にお答えする内容です。 数々の音楽理論動画をアップしているPianoPigが解説「メジャー2-5-1を解説!」をまとめました。 ジャズでよく使われる「2-5-1」のコード進行は、一体どのようにして使えばい良いのでしょうか? 早速見 […]

スポンサードサーチ

3つのマイナースケールの使い分け方

今回のマイナースケールについてまとめると、このようになります。

ナチュラルマイナースケール
・通常のマイナースケール
ハーモニックマイナースケール
・Vをドミナントコードとしてしっかり機能させたい時に使える
(II – V – Iを使うときに、強い進行感を得られる)
・メロディックマイナースケールよりもナチュラルマイナースケールに近い
メロディックマイナースケール
・Vをドミナントコードとしてしっかり機能させたい時に使える
(II – V – Iを使うときに、強い進行感を得られる)
・メロディーにVIとVIIを使ったときも違和感がない

ご自身の作曲にぜひ活かしてみてください。

ちなみに、こちらの書籍では今回ご紹介したメロディック・マイナー・スケールを使ったジャズの即興を学べます。

ジャズっぽいかっこいい曲をサラっと作れるようになる大きな助けになりますので、ぜひチェックしてみてください!↓


その他、スケールやジャズのコード進行に関する知識はこちらにまとめていますので、ぜひご覧ください↓

「調性音楽」と「モード」とは?【調性音楽編】 「調性音楽」と「モード」とは?【調性音楽編】 調性音楽とかモードって何?ちょっと難しそうだけど… CメジャースケールとCアイオニアンモードって、どう違うの? 今回はこのような方のための内容です。 ジャズ・ブルースに関する数々の解説動画をアップしているWalk That Bassが解説する「調性音楽とモードの違い」についてまとめました。 今回はそのうち、調性音楽(Tonal)の特徴について解説した部分をまとめています。 Part2「モードとは? […]
【音楽理論】リディアンモードを使ったゲーム音楽を解説! Part1【映像音楽】 【音楽理論】リディアンモードを使ったゲーム音楽を解説! Part1【映像音楽】 今回は、8-bit Music Theoryが解説する「リディアンモードの使い方」をまとめました。 この記事では「Part1」として、リディアンモードの基礎、モードの使い方、リディアンモードを使ったゲーム音楽(初級編)を解説していきます。 Part1(当記事):リディアンモードの基礎、モードの主な使い方、ゲーム音楽(初級編) 解説するゲーム音楽:ソニック・ザ・ヘッジホッグ、ポケットモンスター金銀、 […]
【ジャズの基礎基本】II-V-Iをマスターしよう! 【ジャズの基礎基本】II-V-Iをマスターしよう! 「II-V-I」「2-5-1」のコード進行って、どうやって使えばいいの? この数字は何を表しているの? 今回はこのような疑問にお答えする内容です。 ジャズピアニスト・作曲家のCharles Cornellが教える「2-5-1って何?どうやって使うの?」をまとめました。 ジャズでよく使われることで有名なこちらの進行ですが、実際に作曲で使う時にはどういったことに気をつければいいのでしょうか? 早速見て […]
絶対に覚えておきたい「ジャズの基本コード進行3選」【初心者】 絶対に覚えておきたい「ジャズの基本コード進行3選」【初心者】 今回は、ジャズのスペシャリスト・Kevin Castroが解説する「ジャズの基本コード進行3つ」をまとめました。 ここでご紹介する3つのコード進行をマスターすれば、ジャズの定番曲(ジャズスタンダード)もスラスラ弾けるようになるだけでなく、即興演奏にも大きく役立ちます。 ピアノやギターを使ってこれからジャズを始めたい方、コード進行のバリエーションを増やしたい方にはとてもおすすめの内容ですので、ぜひ最 […]
かっこいいコード進行「2-5-1」の作り方・使い方【ジャズ】 かっこいいコード進行「2-5-1」の作り方・使い方【ジャズ】 かっこいい・おしゃれなコード進行が知りたい! ジャズで「2-5-1」のパターンをよく聞くけど、このコード進行の使い方についてもう少し詳しく知りたいな 今回はこのような要望にお答えする内容です。 数々の音楽理論動画をアップしているPianoPigが解説「メジャー2-5-1を解説!」をまとめました。 ジャズでよく使われる「2-5-1」のコード進行は、一体どのようにして使えばい良いのでしょうか? 早速見 […]